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転がりぼっちゃん〜もふもふと『転がり』ですべて解決する!〜  作者: 葉月クロル


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第44話 出撃の時

 翌朝、僕たちはギルドで出欠をとってもらうと、街の入り口を出て草原に向かった。ギルドで班分けの結果を教えてもらったので、指定通りに青い旗の所に向かう。


青ワシ(ブルーイーグル)班はこちらになります」


 青い旗を持ったギルド職員が、腕に青いリボンを結んだ冒険者を集めている。


「きょーん」


 首輪に小さな青いリボンを結んでもらったきょんたが、誇らしげに鳴いたのを見て、みんなでにっこりした。

 きょんたはみんなのアイドルだもんね。


「おっ、転がりじゃねえか」


「ダイヤモンド一家、よろしくな」


「水ぎわの大木、こちらこそよろしく」


 お互いに挨拶を交わす。遠くの方に見え隠れしているブヨブヨの白い頭が気になるけれど、僕たちは魔物が担当なのであまり緊張感がない。

 ちなみに、足スケは相変わらずその場にとどまって、たまに変な声で鳴いている。


「なんで青ワシ(ブルーイーグル)なんだろうね。かっこいいから?」


「きっとそうよ。こういう時には士気を高めるために、男子が好きそうな名前を付けることになっているみたいよ」


 命名したのはイシューヴァさんらしい。モヒカンエルフは冒険者の心理をよくご存知のようだ。


 ちなみに他には赤タカ(レッドホーク)金のイナズマ(ゴールデンサンダー)白オオカミ(ホワイトウルフ)なんて感じ。

 後方支援の班は茶色いキツネ(ブラウンフォックス)なんだけど……これ、絶対にきょんたを意識してるよね。


「女子はどんな名前が好きなの?」


「うーん、採用されないだろうけれど、虹の妖精(レインボーフェアリー)なんてよくない?」


「いいね。採用!」


 アグネスさんはコロコロ笑った。

 笑顔だけ見ると、十五歳の可愛い女の子なのに、これから命がけの戦いに行くんだよね……。


「アグネスさんは、こういう感じの戦いに出たことがあるの?」


「何度もあるわよ。でも、ルアンは本当に恵まれているわ。強い冒険者が多いし街の守りは堅牢よ。他ではこうはいかないわ。小さな村や町はね、簡単に魔物に飲まれてしまうの……たくさんの場所が全滅しているわ。今もどこかの地で……」


 アグネスさんは、遠くを見て無言になる。

 その姿が儚げで、まるで誰かの弔いをしているように透明な姿だったので、アグネスさんにはなにか、とても恐ろしい経験があるのかもしれないと僕は思った。


 ナラクは恐ろしい世界。

 天界の人たちは口を揃えて言っていた。

 ここは命が簡単に失われる世界なんだ。


「どうしたの?」


「なんでもないよ」


「緊張してるのかしらね。初めての集団討伐だから、後ろの方で様子を見ながらついていきましょうか。兄さんに話してくるわね」


 僕はちょっと変な顔をしていたみたいで、アグネスさんに心配をかけてしまった。テオドールさんも「我々はあまり前に出ないつもりだからな。くれぐれも無理はしないでいけ」と言ってくれた。


「おまえは俺の後ろにいろよ。怖けりゃ防御魔法をかけてやるから」


 ミケランジェロくんがそう言ってくれた。


「えっ、でも僕、ちゃんと転がるよ」


「少し雰囲気に慣れてからにしとけって。今日はベテランの胸を借りるつもりで行けよ」


 僕たちの会話を耳にした他の冒険者からも「新人は無理に突っ込まんでいいぞ」「坊主のペースで行け。何匹か倒せればいいくらいのつもりでな」「慣れてないと雰囲気に呑まれて、思わぬ怪我をしちまう。とにかく落ち着いて、冷静さを保てるようになってから攻撃に加われ」などという声がかかった。


「なんなら、端っこでウサギでも狩ってろよ」


「ええっ、それはあまりにもかっこ悪くない?」


 僕が口を尖らせると笑いが起きた。

 みんな、僕の緊張をほぐそうとしてくれている。


 僕は左手でぶるぶる震えている腕輪を撫でた。


「ロボ、大丈夫? アルマジローンが必要な大物が現れたら呼ぶよ?」


 腕輪はかしょんかしょんいいながら人型に変身して、ロボが僕の肩に乗った。そして『ビビってすみません。自分はここにいて、必要な時に素早く変身できるようにします』とジェスチャーで伝えた。


「無理することはないよ。ロボも新人だもん。怖かったら、腕輪でいていいんだよ」


 するとロボは『自分が一番怖いのは、コロンさんが死ぬことです。怪我をするのも嫌です。それを逃れるためにはなんでもしますよ』と言って、強そうなロボットポーズをとってみせた。

 でも、やっぱり脚が震えていた。


 ありがとう。その気持ちが嬉しいよ。


「各隊、出発だ! 一匹でも多くの魔物を倒し、無事に戻って来い!」


 ギルマスの合図で、僕たちは草原の奥へと走り出した。





 それなりに経験を積んだ冒険者なら、身体強化魔法を使うことができるので、進軍は早いスピードで行われた。

 今回はEランク以上の冒険者及びパーティが参加しているんだけど、なぜかFランクの僕も混ざっている。これはダイヤモンド一家という中堅のパーティのメンバーだし、転がりという特殊なスキルで今まで怪我をすることなく、しかも急激にパーティ全体の戦闘力を上げているということで、参加できる実力があるとみなされたのだ。


「そろそろ接敵しそうだね」


 残念ながら身体強化ができない僕は、肩にロボ、頭にきょんたを乗せた状態で転がって目的地へと向かっている。僕に触れていれば転がりの恩恵を受けられるし、自分から飛び出そうとしなければ僕と一緒に、どこまでも調子良く転がり続けることができるのだ。

 転がりの効果で上空から見下ろした風景が見えるので、森の中から魔物の群れが移動してくるのがわかる。


「かなり強そうだよ。クマがいろいろ、サルがいろいろ、トラがいろいろ! トラは初めて見るよ、黄色と黒のしましまと、水色と緑のしましまと、ええっ、ピンクとオレンジのしましま? あんな派手なトラがいるんだね。魔物のカラーリングのセンスっておかしいな」


「魔物にセンスを求めんなよ」


 並走しながらミケランジェロくんが言った。そして、声を張って叫んだ。


「転がりのコロンからの情報! クマ各種、他にサル、トラ各種! トラのピンク種を確認した、要注意!」


「うっわ、ミジカイヘビと、ナガイヘビも出てくるよ」


「ヘビ各種、毒あり! 繰り返す、ヘビ、毒あり!」


 ナガイヘビには毒があるから、解毒の魔法が使えるか、解毒剤を用意するかしないと危険なんだ。


「ミケ、助かった」


「転がり、よくやった」


 敵の情報を得ることはとても大切なので、僕たちは青ワシ班の冒険者から褒められた。へへっ。

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