第43話 僕らの合体技?
「なになに、どういうこと?」
「俺はなあ、悪魔に対抗できる信仰心があるとは思うけど、完全ではない。でもまあ、守りたいものが多いからここは男の見せ所だと思うんだよな」
ミケランジェロくんは、王都の孤児院で育ってそのまま神殿に入り、神官になったという。魔法の才能があったからだそうだ。
「神の敬虔なる下僕としてこの世界の人々を守らなきゃならねえし、王都や孤児院や、その他の場所で懸命に生きているガキどもも守りたい。だからさ、悪魔になんか負けてられねえのよ」
ミケランジェロくんは「だからよォ、いざとなったら俺を抱えて、悪魔の前まで転がってくれねえかな? 俺を下ろしたらおまえは転がり抜けて逃げてくれればいいからさ。な?」と、僕に協力を求めた。
「そんな危ないこと、僕が引き受けると思ってるの? 神殿のサーザワンさんや聖騎士さんや、他のすごい神聖魔法を使う神官さんが出撃してくれるんでしょ? 僕らみたいな若輩者が出る幕じゃないと思うよ」
ミケランジェロくんを悪魔の前にポイするなんて、ほとんど殺人行為じゃんか! 絶対にやだからね!
「わかってる、わかってるんだ。でもな、万一聖下ですら止められなかったらさ……世界が終わるぞ?」
ミケランジェロくんは「俺にはわかるんだ。あの悪魔はおかしい。たぶん呼び出したアグラダーのせいだと思うんだけどな」と目を細めた。
「あのクソ坊主は、クソみたいな性格だけど魔力だけはピカイチの天才神聖魔法使いだったんだぜ。膨大な魔力を持つ魂が悪魔に利用されているんじゃねえかな。あいつは本当にバカだ、妙な気にならなければ普通に出世できただろうに、変に動き回って、挙げ句の果てに悪魔を呼び出しちまった。バカすぎて嫌んなるぜ」
「頭が悪かったの?」
「そんなことはない。どちらかというと知略を巡らせるタイプの切れ者だった」
僕は嫌な気分になった。変なことを思いついたからだ。
「もしかすると、アグラダーは悪魔に唆されておかしくなった……ってことはない? 悪魔界から脳内に語りかけて、洗脳してたりして。なーんてまさかね!」
けれど、ミケランジェロくんの顔色が変わった。
「そんなまさか……確かに悪魔は悪魔界的なところに存在する。力の強い悪魔なら、もしかすると……」
ミケランジェロくんは「おまえは頭がいいな!」と真剣な顔で言った。
「でも、そうだとすると長い時間をかけて準備をしてきて、悪魔がやってきたわけだ。本に載ってるチンピラ悪魔とは格が違うのかもしれねえぞ」
「僕たちはマジピンチってこと?」
「そうだ」
足スケルトンは定期的にヒョロロロオオオオオオという不気味な叫び声をあげ、偵察隊は遠くの方から足スケルトンを観察した。
そして、スケルトンの肩の辺りまでブヨブヨの悪魔が肉体を手に入れたという報告が入った。
「周りの魔物を食って、身体を作っているらしいぞ」
「ええっ、それって強くなってるってことじゃない? 早く倒さなくちゃ大変なことになるよ」
僕がそう言うと、テオドールさんは「倒せるものなら倒したいが、神殿の特別攻撃部隊でないと無理だろうな。到着を待つしかない」と渋い顔をした。
ミケランジェロくんはこっちをチラチラ見ながら『行っちゃう? 突撃しちゃう?』と無言の圧をかけてくるけれど、負ける未来しか見えないから嫌だよ。
「ミケ、妙なことを考えてるんじゃないわよね?」
勘のいいアグネスさんに「迷惑だから絶対にやめなさいよ」と釘を刺されている。
足スケは今のところその場を移動していないが、魔物の群れはこちらに向かっている。
「明日の早朝に、冒険者は出撃だ。今夜はしっかりと飯を食って寝ておけよ。戦い慣れた魔物だが、足スケの影響で普段とは違う挙動が見られる可能性が高い。心しておくように」
ギルマスから解散の指示が出たので、多くの冒険者は外に出た。僕たちはギルドの図書室で調べた魔物を大きな紙にまとめて貼り出す仕事に取り掛かる。アグネスさんがきちんと依頼扱いにしてもらってきたので、報酬がもらえる。その分、手を抜けない。
「コロンは絵を描くのは得意?」
「うん、描けると思うけど……見たことのないのはどうかなあ」
「教えるから描いてみてよ」
まとめのレベルを上げたいというので、ギルドの文房具を借りて(借り賃を払おうとしたら、ギルマスが「経費で落とすからいい」と無料にしてくれた)意外にも絵の具もあったので、カラフルでわかりやすい魔物の一覧表ができた。
「コロンは絵の才能があるわね。とてもよく描けているわ。生き生きしていて、絵画として飾ってもいいくらいのレベルよ」
「さすがは落とし子、いろんな才能を持ってやがるぜ!」
ミケランジェロくんに背中を叩かれた。僕は「うん、本当はね、僕は平和な世界に生まれて芸術家になるはずだったんだよ」と言った。
「予定が狂ってここに来ちゃったけどさ、今後生活に余裕ができたら、絵を描いたり土で作品を作ったりしようと思っているんだよ。そのために土魔法をもらえたんだ」
きょんたが気にしてきょんきょん鳴いたので、僕は「きょんたの絵も描いてあげるね。可愛いから高値で売れちゃうかもよ」と子狐の頭を撫でた。
「すげえじゃないか! そうしたら、神像を作るのもいいんじゃねえか? たくさんの人に見てもらえるしよォ、やってみろよ」
芸術は宗教と共に広がっていくんだよね。
「創造神イザカルマンっておじいさんだよね」
「いや、そうとも限らねえんだ。神のお姿はな、人の心の数だけあると言われているからさ。包容力がある爺さんの姿が人気だけど、コロンが思うなら若いおねーちゃんにしてもいいんだぜ」
若いおねーちゃんの創造神イザカルマンか……ピンとこないかも。
本物にあってから決めようかな、うん、そうしよう。
この戦いが終わったら、神殿に行って天界のお兄さんに神さまに紹介してくれるように頼むんだ……って、ダメだよ!
死亡フラグなんて立てたらダメ、絶対!




