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転がりぼっちゃん〜もふもふと『転がり』ですべて解決する!〜  作者: 葉月クロル


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第37話 聖なる鎧

 かっこいい見た目なのに、とても奥ゆかしくて怖がりさんのロボが、珍しく僕にお願いをして来たので、僕はなんでも叶えてやりたい気持ちになって「教えて、なにが欲しいの?」と尋ねた。


 ロボはジェスチャーで『あの聖騎士が着ている鎧が欲しいのです』と伝えてから、じっと聖騎士を見た。


「あの鎧だね。そうか、欲しいのか」


 他人のものなので、さすがに『はいあげる』というわけにはいかない。そこで僕も鎧をじっと見た。


「あの鎧、欲しいんだ」


 落ち着いた銀色のかっこいい鎧だね。ロボが着るには大きすぎるけど、きっとどうにかするのだろう。


『欲しいです、自分にはあの鎧が必要なのです』


「そうかー、鎧、欲しいね」


『欲しいですね』


 聖騎士が「な、なんだ、こっちを見るな」とよろめいた。僕たちの視線の圧がとても強いようだ。


 ミケランジェロくんが「クックック」と笑った。


「サーザワンさんよォ、『神の落とし子』さんがご所望だぜェ? 神殿は『神の落とし子』の役に立ちたいんだよなァ、ここはひとつ誠意を見せてもいいんじゃないかなァ」


 ミケランジェロくんがカツアゲしてるよ。


「そら、さっさとよこせや。脱げ、今すぐ脱げ」


 聖騎士(態度が悪くて、さっきサーザワン氏に殴られた人ね)は顔を引き攣らせながら「聖下、しかし……」とすがるような視線になった。


「そう簡単に渡せるものではない。聖騎士の鎧は聖銀という特別な金属でできていて、聖騎士でなければ身につけられない鎧なのだ」


「ああン? だからなんだよ、こいつが欲しいって言ってるんだからグズグズしてんじゃねえよ、ああン?」


「ミケランジェロ、おまえは……」


「あれあれェ、聖下さまよォ、『神の落とし子』を支えることが神殿の使命なんじゃなかったんですかァ? はァァ?」


 とがった切れ味のチンピラ味である。

 でも、言っていることは正しいようで、サーザワン氏は黙ってしまった。


 なるほど、聖銀かあ。

 特別な金属は特別なロボにふさわしいよね。

 欲しいよね。


「で、くれるの? サーザワンさん?」


『欲しいんです、必要なんです』


「うちのロボが、欲しいって言ってるんだけどなあ……欲しいって、言ってるん、だけどなあ……」


「オラオラオラオラさっさと脱げやゴラァ」


 アグネスさんが「いやだわ、本当にガラが悪いんだから」と言うと、聖騎士は期待のこもった目でちらっと彼女を見た。

 でもそのあとに「お願いするならもっと可愛くしてみたら? そうしたらくれるわよ。神殿はコロンによくしたいって言ってたんだから、ちゃんと態度で示してもらいましょうよ。偉い人ほど自分の言動に対する責任が増すと思うの」と続けたので、がっくりと肩を落とした。


「えっとー、鎧をくださいな? お願い?」


 語尾を上げてちょっと可愛く言ってみた。ついでににっこりしてみた。ロボもジェスチャーで『くださいな』と言って、キュンとした可愛いポーズをとった。


「…………………………ロルフ、脱げ」


 今日何度目かのため息をつきながら、サーザワン氏が言った。


「…………………………はい」


 聖下の言葉は絶対らしい。

 聖騎士のロルフさんは、落ち込んだ表情でマントを外すと、隣の聖騎士に手伝ってもらいながら鎧を脱いで、領主さまが「ここに置いていいですよ」と勧められたテーブルの上に置いた。


「ありがとうございます。よかったね、ロボ」


 ロボは『やったー』と喜びのジェスチャーを見せると、鎧の上に登って変形した。かしょんかしょんいいながら大きな金属の板になると、鎧を包み込む。そして、ぎゅっと圧縮してからソフトポールくらいの黒い球をテーブルの上に出した。


「あれ……ロボ、これはいらないの?」


 ロボは『いりません。必要なものはここにあります。それは混ざりものなので使いません』と胸を叩いた。

 下着(と言ってもパンイチじゃないよ。鎧の下に着る厚手の布地だからね)の上にマントを着た聖騎士のロルフさんは、その球を持って「これは、そんなまさか」と呟いた。


「聖下、聖騎士の鎧は聖銀のみで作られたものです。それなのにこれは、聖銀ではない金属です」


 ショックが大きかったみたいで、聖騎士の声が震えている。


「あ、ロボがその球のことを混ざりものだって言ってますよ」


 サーザワン氏は「それはありえん。あってはならんことだ」と顔を歪めた。


「どうしてですか? 柔らかな金属に混ぜ物をして硬くするのは、よくある話ですよね」


「聖銀の場合は違う、純粋なもので作るからこその聖騎士の鎧なのだ。アグラダーめ、どれだけ悪事を働いていたのだ、まさかここまで神を冒涜していたとは」


 サーザワン氏が激おこだよ。


「奴は聖銀の純度を下げて、聖銀を売り払って金にしていたのだろう。聖職者にあるまじき男だ。さすがは悪魔と取り引きをした下衆だな、己の欲のためならなんでもしていたのか」


 でもね、そんな人をトップ付近に持ってきていた神殿の人たちも、同罪だと思うんだよね。

 と、ロボがまた僕に訴えている。


「うんうん、なるほど。うちの子がこれでは足りないのでもうひとつ鎧が欲しいって言ってるんだけど……くださいな?」


 残りの四人の聖騎士が、鎧をガチャリと言わせた。




 無事にもうひとつもらえたよ。

 やっぱり混ざり物がしてあったので、黒い球をお返ししておきました。


 もう用事は終わったので、伯爵家の馬車で冒険者ギルドに送ってもらったよ。騎士のトライザーさんは、領主さまとお話があるとのことで置いてきたよ。


「なんか大変なことになってるね。悪魔って本当にいるんだ」


 馬車の中で僕がそういうと、ミケランジェロくんは「呼び出して取り引きをしようと考える者がいなけりゃ出てこないもんだ。悪しき誘惑に負けず、神に祈って正しく生きることを皆に訴える神官が、悪魔と取り引きをしたなんて、とてもじゃねえけど口にできやしないぜ。契約魔法で口止めされてなくても、言えやしないわ」


 やさぐれ神官だけど、その心は信仰心に満ちているミケランジェロくんにとって、仮にも聖下を名乗った神殿のトップの裏切りはかなりのショックだったらしい。動揺を隠せないようだ。


「きょん」


 きょんたがミケランジェロくんの肩に乗って、モフモフした頬を彼の頬にそっとつけた。慰めようとしているね、優しいね。


「落ち込んでいる場合じゃないわ。このところの異変はアグラダーって人のやらかしから起きている可能性が高そうじゃない。悪魔は脚を持って行って、なにをしようとしているのかしらね。ミケ、脚の使い方、なにか知ってる? 神殿で習った?」


 アグネスさんは、あいかわらずクールだね。ミケランジェロくんに喝を入れてるよ。


「んなもん習わねーよ。けど、アグラダーの奴が神殿にある禁書を読んで実行したってことは推測できる。悪魔についての情報なんて、他では手に入らないからな」


「そうよね、魔物の図鑑にも悪魔との取り引きについては書いてないわ。広めてはならない話だからよね」


「だが。悪魔についての一般的なことは書かれている」


 テオドールさんが「ついでだから、悪魔についての話をギルドの図書室で確認していこう」と言った。そして、僕を見た。


「コロンは『神の落とし子』だし、転がりという珍しくて強力なスキルを持っているのだから悪魔に目をつけられかねない。ロボが突然、鎧なんてものを欲しがったのも、コロンを守るための行動なんじゃないか?」


 手首の腕輪がかしょんかしょんと変形すると、ジェスチャーで『そう、その通りなんですよ!』とテオドールさんの言葉を肯定した。


 えっ、もしかして、僕って微妙に危ない立ち位置にいるのかな?


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― 新着の感想 ―
地位を笠に着て断れなくして取り上げましたね!カツアゲだー! でもそのおかげで前聖下の他の悪事が発覚したのでヨシ!
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