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転がりぼっちゃん〜もふもふと『転がり』ですべて解決する!〜  作者: 葉月クロル


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第35話 神殿の改革

 聖下っていう偉い立場の聖職者であるサーザワン氏が、ミケランジェロくんに言った。


「おまえが破門されてから三年が経った。時間がかかったが、神殿の事情は以前とかなり変わったのだ」


「そりゃあそうだろうさ、権力争いに鼻もひっかけなかったあんたが、トップでございなんつー顔して、ちゃっかり聖下におさまっちまってるんだからな。なにがどうしてこうなった?」


 ミケランジェロくんは、チンピラっぽい言動はなくなったけれど、サーザワン氏のことをまったく信用していない様子だ。


「一言で言えば、かなり無理を通して膿を取り除いた。ざっくりやり過ぎて神殿の存在が危うくなったのだが、まあ、なんとかなった。おまえをハメたアグラダーとその取り巻きは粛清……ではなくて、これまでの功績と神への献身を誉めたたえて、丁重に表舞台から退出してもらい、しばしお休みしてもらってる」


「もっと一言で言えよ」


「脚を切り落として閉じ込めてもう出さない」


 うきゃー、怖いこと言ってる! この人、神の使徒じゃないの?


「そりゃまた思い切ったな。で、どこから? 膝から?」


 ミケランジェロくんももっと驚いてよ!


「不幸な事故による膝上からの切断だ」


「はああ、そりゃあ不幸だなあ。でも、人にやったことが自分返って来たってことだからな。よくよく反省してもらわなくちゃなんねえなあ」


「敬虔なアグラダーはこれも神のおぼし召しと考えて、この状況を粛々と受け入れておられるのだ」


「へへー、立派なもんだなー、さすがは元聖下だなー」


 ミケランジェロくんがにやにやしている。これは『ザマアミロ』な感じなのかな。

 脚がどうとか、かなり不穏なことを言っているように思えるけれど、このくらいはナラクでは当たり前なのかもしれないよね。


「うわ、神殿えっぐ……」


 アグネスさんが顔を引き攣らせている。

 当たり前じゃなさそうだったよ!


「コロン、わかる? 神聖魔法で回復できるはずなのにそのまま放置しているってことなのよ。かなり穏やかな話じゃないわよね、よほど恨まれていたとしか考えられないわ」


「ミケランジェロくんの嫌いっぷりからして、かなり嫌なやつだったんだろうね。でも、脚を切り落として牢獄に入れてあるんでしょ? 怖いねえ、すごい刑罰だねえ」


「まだ子どもの神官を変態貴族に売り飛ばそうっていうくらいだから、心底腐った人物なのは確かだけど、そこまでやるなんてね」


 僕とアグネスさんがこそこそ話していると、サーザワン氏に「いや、『神の落とし子』コロン、お嬢さん、それは違う。アグラダーは静かな場所で、残りの人生をすべてを、神への祈りに捧げて暮らしているのだ。敬虔な神の使徒にふさわしい生き方をしているだけなのだよ」といかめしい顔で言われてしまった。


 僕とアグネスさんは「いや、無理があるでしょ」と声を揃えてしまったよ。


「そんなこんなで、ここまで風通しをよくするのに三年かかった。しかも、成り行きで俺が今の地位に据えられちまったんだ、おまえ、なんとかしてくれ」


 最後の方は、聖下の仮面を脱ぎ捨てた単なる筋肉おっさんになってるよ。


 ミケランジェロくんに「やだよ、なんで俺に頼るんだよ、冗談じゃねえわ! 俺は破門されたはぐれ神官だからな、お偉いさんの面倒なゴタゴタには関わりたくねーのよ、はいご苦労さん」と断られてしまった。

 残念でしたね、筋肉おじさん。


「……まあ、そう来るだろうな」


 サーザワン氏とミケランジェロくんが、気安い口調で話している様子を見て、さっきのそこそこ偉い神官と聖下に顔をぶっ飛ばされた聖騎士はなんともいえない表情をしている。


「なにもかもが変わった訳ではない。根深い神殿至上主義や、わけのわからん権威の振りかざし行為に走る者など、アホみたいな思想に脳内がやられている者はまだ多いし、それらをすべて取り除くのは不可能だ」


「こいつみたいなやつだな」


 ミケランジェロくんのご指名を受けて、そこそこ神官は「ぶ、無礼な!」とプンスカ怒っている。

 でも、怒り方にさっきみたいな力がない。




「あのー、なんだか部外者が耳にしてはならないことを、先ほどから話されているようなのですが……」


 割って入ったスタインデール伯爵が、サーザワン氏に「結局、なにがしたいのかをはっきり伝えてもらって、この場は解散でよろしいですよね。うちわの情報は忘れることにしますので、あとは他所よそでやってください」とキリッとした顔で言った。

 この領主さまは、ビビリなのか肝が据わっているのか、どっちかわからないよ。


「そうだな。それでは『神の落とし子』コロンよ。神殿預かりになり、この世界の平和のために力を貸してもらえないだろうか?」


「お断りします」


 サクッと一言で終了だよ。


「ミケランジェロはどうだ? 状況が変わり、我々はおまえに神殿に戻って来てもらいたいものだと考えている。破門の事実は取り消すことができないのだが……」


「断る」


 こっちもサクッといったね。


「そうか」


 わあ、サーザワン氏もサクッと引っ込んだよ。


「だが、神殿はコロンにもミケランジェロにも敵対しない。それだけは言わせてくれ」


「当てにできねえな。あんたが脚を切り落とされてどこかに閉じ込められたら、次の聖下がまた罪なき神の子を自分の利益のために踏みつけにする様な真似をするんだろうよ。まあ、あんたがそんなことを許すタマとは思えねえがよォ」


「……ミケランジェロ。それでも俺は約束する」


「信頼して欲しければ、態度で示せ。俺は神と共に見ているぞ」


 お、おかしいな?

 ミケランジェロくんがとても大きく見えるよ。


 僕は思わず目をこすった。


 たぶん、見た目が美少年で過ぎたワイルドっぷりで時々チンピラなはぐれ神官だけど、ミケランジェロくんはまっすぐに神様を信仰して、揺るぎない気持ちで神官として生きているからなんだろうな。

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