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天才ハッカーによる日本独立物語  作者: ロキ
第2章

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第29話 帝都死守(後編)

「伏せろ、ミコ!」

イヤホンからロキの絶叫が響く。

ミコは弾幕が放たれるコンマ数秒前、壁の反発力を利用して跳躍し、通路の天井を這う太い配管の裏へと身を隠していた。

コンクリートの壁が削られ、火花と粉塵が視界を埋め尽くす。

「ハァッ……ハァッ……! やったか!」

リーダーの男が銃口から煙を上げながら、暗闇を睨みつける。

しかし、その背後から音もなく降ってきたのは、無傷のミコだった。

「どこを撃っているの?」

「なっ――!?」

男が振り向こうとした瞬間、ミコの小太刀が閃き、男の銃の機関部を正確に破壊した。弾倉が弾け飛び、ただの鉄の塊となった武器を男の手から蹴り落とす。

「これで、おしま――」

ミコが最後の一撃を放とうとした瞬間、倒れていたはずの護衛の一人が、血だらけの手で懐から何かを取り出し、床に叩きつけた。

シューッという音と共に、猛烈な白煙が通路に充満し始める。

「ロキ! 毒ガス!?」

ミコが咄嗟に口を布で覆いながら後退する。

『違う、ただのスモークだ! 奴ら、逃げる気だ!』

白煙に紛れ、リーダー格の男が通路の奥にあるダストシュートの扉をこじ開け、そこへ飛び込んでいくのが見えた。

「逃がさない!」

ミコが後を追おうとするが、残された男たちが自らの体に巻き付けた爆薬を見せつけながら立ち塞がった。

「偉大なる神のために!!」

『ミコ、離れろ!! 自爆する気だ!』

ミコは舌打ちをし、全力で後方へ跳躍した。直後、凄まじい爆発が通路を揺るがし、熱風と瓦礫がミコを吹き飛ばす。

防刃スーツのおかげで致命傷は免れたものの、壁に激突した衝撃で肺の空気が押し出され、激しい咳き込みがミコを襲った。

「……ゲホッ、ロキ……リーダーの男が、ダストシュートから下層へ逃げたわ……」

『わかっている。奴の生体反応を追跡中だ。……クソッ!』

地下要塞のロキが、キーボードを叩きながら悪態をついた。

「どうしたの!?」

『奴が逃げ込んだ先は、スタジアムの地下駐車場だ。……そこに、プロメテウス財団が手配していた「逃走用の足」がある。偽装した救急車だ』

ロキのモニターに、地下駐車場を急発進する一台の救急車の映像が映し出された。

サイレンを鳴らし、スタジアムの地下から白昼の公道へと飛び出していく。

『奴ら、計画の失敗を悟って、次の標的へ向かう気だ』

「次の標的……!?」

『ああ。奴らが向かっている先は……霞が関だ。国会議事堂と、各省庁が立ち並ぶ日本の政治の中枢。あそこに爆薬を積んだ車で突っ込むつもりだ!』

ロキの推測は最悪のシナリオを描き出していた。

天皇陛下暗殺という最大の目的が防がれた今、彼らは「日本の国家機能への自爆テロ」という次善の策に切り替えたのだ。

「そんなこと、絶対にさせない……!」

ミコは瓦礫の中から立ち上がり、痛む体を鞭打って走り出した。

「ロキ、私のバイクのロックを外して。奴を追うわ」

『無茶だ! あの救急車には、数百キロの軍用爆薬が積まれている可能性が高い。追いついたところで、どうやって止める気だ!?』

「止めるんじゃない。……斬るのよ」

ミコの声には、一歩も引かない修羅の決意が込められていた。

スタジアムの裏口に隠してあった漆黒の大型バイクに飛び乗ると、彼女はヘルメットも被らず、アクセルを全開にひねった。

キュルルルルッ!!

凄まじいスキール音と共に、黒い弾丸が白昼の帝都へと飛び出していく。

『……わかった。交通管制システムをハックして、お前のルート上の信号をすべて「青」にする。奴の救急車の周囲は「赤」だ。絶対に追いつけ、ミコ!』

「任せて」

秋の冷たい風を切り裂きながら、ミコは排気音を轟かせて首都高へと突入した。

目指すは、狂気の自爆テロリストが走る霞が関。

天皇の影と、見えざる侵略者の尖兵による、帝都のド真ん中を舞台にした壮絶なチェイスが始まった。

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