礼には礼を
度々起こる巨大災害による天変地異のせいで、今がどの季節なのか麻痺してしまっていた。
ただ、一つだけ確信をもって言えることがある。それは雲の上から望む空はひたすら蒼いということだ。
今、凛音はその空の美しさを目の当たりにしていた。
凛音は、壮覇の使い魔である巨鳥の紅鸞に乗って、大空を飛空していた。
若い幻妖師が言うには、礼には礼で返すと言うことだった。
昨晩、二人は無事に廃墟の村に着いた。
幸運なことに、その村は大陸に蔓延する疫病の被害を受けていなかった。
二人は廃墟の家の中でもある程度形状が残った一軒家で一晩を明かすことにした。
凛音には一つだけ気がかりなことがあった。夜ご飯についてだ。
自分には神丹もあるし、先ほど四天王の一人と戦った村で食料も貰うことができた。問題は壮覇だ。
初めて会ったときから食料を携帯しているようには見えなかった。
今までどうやって食い繋いできたかは不明だが、お腹が空いて困っているのではないか、と危惧された凛音は、壮覇の休んでいる場所に向かうことにした。
案の定、この男は今晩の食料を確保するために出かけるところだった。
この能天気な男に呆れるとともに持て余していた握り飯を渡してやった。
壮覇は「いや、悪いね」と飛び跳ねる子供のように喜んでいた。
世界が一変してからというもの、行き着く村々はほとんど廃墟と化していた。長旅をする者からすれば、その日の食料を手にするのは中々に至難の業だった。
昔のままの状態で現存する皇都大蓮を除けば、お金を払って食料を買う時代ではなくなっていたのだ。
凛音も人間に化けてから久しぶりに食べる肉の味に舌鼓を打った。
翌朝、壮覇からある申し出をしてきた。それが使い魔に乗って皇都大蓮に向かうというものだった。これで行けば、三日もかからずに皇都大蓮に行けるという話だ。
「どうだい、大空を飛ぶ気分は? 天狼と言っても、この爽快さは味わったことがないんじゃないかな」
「そうだな! こんなに心がワクワクするのは久しぶりだ!」
本音だった。千年も生きていれば、大したことでは心も躍動しなくなっていたことに改めて気付かされた瞬間だった。




