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四天王の死

「じゃあ、名前を教えてくれ」

「そうだね。僕の名前は陽咲(あきざき)壮覇(そうは)。見てのとおり、幻妖師だ。名うてのね」

「壮覇(そうは)か。良い名前だ。わたしの名前は――」


「天狼の化身、天喰(あまじき)凛音(りんね)。それくらいとっくに調査済みさ。凛音(りんね)、君が成そうとしてることを僕に見せてくれ!」

 壮覇(そうは)はどう見ても悪い男には見えない。だが、信用するにはまだ早いと思った。


「で、そろそろ寝床を探す時間だと思うけど、当てはあるのかい?」

「ここから少し先に行った場所に廃墟と化した村を見つけた。今夜はそこで宿を取ろう」

 凛音(りんね)は人差し指で差しながら説明した。


 人間の視界では見つけられなかったが、嘘を言うとは思えなかった。


「じゃあ、行こうか!」

 壮覇(そうは)に促されて、二人は再び歩き始めた。


 廃墟の村と言ってもどういう状況なのか見てみないことには安心はできない。


 疫病を患(わずら)って死んだ遺体があれば、人間の壮覇(そうは)はそこでは寝られないし、周辺に狂禍獣がいないとも限らない。


 とりあえず、何の問題もないことを願って行くしかなかった。


☆☆☆


 きっちりと区画整理され、とても綺麗な街並みが形成されている皇都大蓮(だいれん)。


 一度に何十人もの人々が往来できるほどの巨大な門は東、西、南の三カ所にあり、都全体も広大で、大きな都が余裕で三つほど入っても余りあるほどだ。


 皇都の奥深くには執政を行う政庁――永世院(えいせいいん)がある。


 明朝から凡愚の神帝――翔皇(かけがみ)輝炎(き えん)を交えての政(まつりごと)に関する話し合いがなされていた。


 豪奢な椅子に座る袞衣(こんえ)を身に着けた神帝に対して、一様に決められた礼服を着ている臣下の者たちは立ったままだ。


 その中に四天王の姿と輝炎(き えん)が寵愛する幻妖師――赤蠅(あかばえ)無土(むど)の姿もあった。


 政庁内では昨日の夕刻に四天王の一人だった宇郷(う ざと)鬼岩(き がん)が天狼の化身と称する少女に殺されたという一報に大きく揺れていた。


「四天王でありながら、何と役立たず者なのじゃ! すぐに将軍の誰かを次なる四天王に昇進させよ!」

 二十歳になる凡愚の神帝は激昂していた。その逆鱗に触れでもしたら、八つ裂きにされるに違いなかった。


「恐れながら、その必要はないかと――」

 四天王の筆頭を任された夙夜(しゅくや)屍酔(し すい)が進言した。


「あの者は恩賞に目が眩(くら)み、安易に先走った結果、天狼に殺されたとのこと。元々四天王たる器ではなかったのです。今の時点で新たな四天王の選出に関しては事を急く必要はないと存じます。我ら残りの三人で神帝をお支えして参りましょう」

 頭が切れる上に美貌を兼ねた顔立ちの屍酔(し すい)は深々と頭を下げた。


「ならば、早くお前たちの誰かが行き、一日も早く天狼を始末せよ!」

 神帝にしてみれば、天狼は目の上のたん瘤でしかない。現状のままでは枕を高くして眠れるとは言い難かった。


「ははっ!」

 四天王の残り三人は平伏して、儀礼を行った。

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