第1話 同窓会
0話の散文だけを見せるのはさすがにカスなのでもう一話投稿します。
続きで見てもらえると助かります。いや助かりません。
2020年11月14日
「……飲みすぎた」
つまらない飲み会、話題やノリについていけない飲み会などで、ついつい飲みすぎてしまうという経験はあるだろうか。
飲み会の話題がつまらないとき、スマホをいじることもできない状況で、暇つぶしに飲食に集中してしまうのだ。そもそもお酒は誰かとわいわい飲むものだからつまらないと飲めないという人には理解し難いだろうが、わかる人にはわかるはずだ。
……今日ほどつまらない飲み会はない。
トイレで無理やり吐いて胃に張り付いた気持ち悪さを取り除き、もともと居たテーブルに戻った。
「祐介、大丈夫か?」
着席すると、隣に座っていた高校時代の友人である、五十嵐誠也という男が、俺にお冷を差し出しながら言った。
「このお冷、お前が頼んでくれたのか? ありがとう」
「いいって。同窓会だし、羽目外して飲んじまうのも仕方ねえよ」
お冷を一気に飲み干した。別に羽目を外して飲みすぎたわけではないのだが……。
辺りを見渡す。20名ほどの男女が酒を交わし、楽しそうにしている。
今日の集まりは高校の同窓会。今となりにいる誠也に誘われて参加したのだが、「来なきゃよかった」と後悔している。三年の月日が経ったからか、クラスメイトと当時どう接していたのかを忘れてしまい、居心地の悪さを感じていた。なんなら顔も忘れてしまっている。
身なりはいかにも大学生で、中には煙草を吸うやつもいた。高校時代から三年が経ったので当たり前なのだが、酒や煙草を嗜む彼らに違和感を覚えた。たぶん最後に会ったときは未成年で、その頃の印象が強いが故の違和感だろう。
「落ち着いたか?」
誠也は誠也で、髪を伸ばし、髭を生やしていた。二十歳を超えたからか、浮かべる表情には大人っぽさがまとわりついていた。
「髪、伸ばしたんだな。似合ってるぞ」
俺が誠也を褒める。
「サンキュー。ほら俺、高校生の頃は野球部だったろ? あの頃はなんかある度に坊主頭にさせられていたからな。反動ってやつ?」
誠也は続ける。
「あの頃は最悪だったな。何かあるとすぐに坊主頭だ。今の時代、良くないんじゃねえのかな……」
運動部はよく連帯責任を取らされる。どこの高校でも、多少なりともあるだろう。試合に喝を入れるためにとか、問題を起こした部員がいたからみんなで坊主、とか。どうしてこんな文化が今もなお続いているのか、不思議だ。
「一番酷かったのが、高校2年の頃だな。1年坊主が煙草吸ってたせいで、野球部全員自宅謹慎。地区大会出場辞退。あの夏は短かったなぁ……」
「さ、災難だったな……それは流石にキレていい」
「だよな!? 俺何も悪くねえよな!? もうやめないか、連帯責任! 一番嫌いな言葉だ!」
連帯責任も、ここまで来ると教師の嫌がらせにしか思えない。考え方が凝り固まっているのだろう。
「暗い話はやめよう」と誠也が切り出した。
「祐介さ、大学ではどうよ? 彼女でもできたか?」
「いや、いない。講義やバイトで忙しい」
「つまんねーやつだなぁ。もっと遊ぼうぜ」
そういうと、誠也はスマホを取り出して俺に見せてきた。そこには誠也と、茶髪のロングの女とのツーショットが写っていた。
「どうよ! これ、俺の彼女。もう1年半くらい経つんだわ」
嬉しそうに自慢する誠也。この歳になると、人のリア充自慢を聞いてもあまり苦に感じない。他を妬むなどをしても、現状が変わらないことを知っているからだ。コンプレックスは、とうの昔に置いてきた気がする。
「おお、結構きれいな人だな。おめでとう」
と、俺は言った。
「だろ! こいつ可愛くてよぉ……」
そういうと誠也は惚気話を始めた。こいつ、きっと大学に入ってから調子乗り始めたな。高校の反動は凄まじいようだ。サークルの飲み会で意気投合してそのまま付き合い始めたそうだ。大学生の恋愛に酒が絡む確率の高さは異常。きっとこの同窓会でもそういうことが起こる。断言してもいい。君たちは三年で汚れてしまったね、ぼかぁ悲しいよ。
「……それにしても、これだけ大学が充実していると、ほんとに高校なんてろくな思い出がなかったなー、なんて思うわ。卒業してからは、記憶に蓋をしすぎていろいろ忘れちまったなあ。悪い記憶ならともかく、そこそこ楽しかった思い出も若干忘れかけてる」
と、誠也がため息交じりに言った。
「確かにな。俺も全然覚えていない。ぼんやり高校のことが、朝もやみたいに頭の中に浮かんで、そして消えていく感じで、何も思い出せない……えっと、失礼ですがあなたは誰?」
「おい! 重症じゃねえか! 俺の比じゃないくらい記憶なくしてるぞ! 誠也だ、誠也! 一応三年間同じクラスで、たまの休日は一緒にゲームしたりした仲だろ!?」
「うーん、言われてみれば……」
そんなコントをしているうちに、幹事の一声で同窓会は締めることになった。
「えー、これにて第一回同窓会はお開きにします! あ、二次会やるんで、よかったらきてください! お疲れさまでした!」
その一言を聞き、誠也が話しかけてきた。
「祐介、二次会行くか? 俺は行くぞ~っ」
「いや、俺はパス。今日は誘ってくれてありがとうな。また遊ぼうぜ」
幹事は確か、元クラス委員長のサッカー部だった奴。肌は若干焼けていて、いかにもスポーツマンといった感じ。アルコールが入っているからか、同窓会開始当初よりもご機嫌になっているようだ。
「それでは一本締めで締めたいと思います。お手を拝借!」
約20名の一本締めが居酒屋に響き、ほとんど誠也としか話さなかった同窓会は幕を下ろした。
*
会場の居酒屋を出て、家に向かう。11月の夜は肌寒く、俺は顔をコートにうずめながら歩いていた。
「まだ若干気持ち悪いな……」
先ほど吐いたから、幾分かはマシなのだが、いまだに胃には不快感が残っていた。
途中で自販機を見つけ、水を買った。手がかじかんで硬貨を入れるのに苦労した。ガコン、という無機質な音を立てて、取り出し口にペットボトルが落ちる。それを手に取り、付近のベンチに座り、一気に飲み干す。
少し休憩することにした。夜空を見上げた。秋の星座ではなく冬の星座がそこに居座っているのを見て、秋の終わりを感じた。
もうすぐ、今よりさらに寒い冬がやってくる。
秋から冬に移り変わるこの切ない感じが俺は好きだ。なんで好きなのかはよくわからない。気が付いたら好きになっていた。季節の好みはその人のフィーリングによるもんだしな。
「高校時代、か」
虚空につぶやいた。
……誠也は嫌な記憶だったらしい。記憶に蓋をして、今を謳歌している。良い生き方だ。野球の反動で髪を伸ばし、髭を生やし、さぞ大学を謳歌しているのだろう。大学では一転して軽音サークルに入っているそうだ。野球とは打って変わって文化系だ。この話をしていたとき、彼は「お前には結構感謝しているんだぜ」と言っていた。感謝されることなどしていない気がするが。
それにしても、彼はバンドマンか。バンドマンといえば、かなり輝いている存在だよな。あの界隈だけ男優位というか。ステージに立てば誰だってスターだ。それで女の子の注目の的になれる。充実した毎日は確実だ。
しばらく夜空をぼーっと眺める。胃の中の不快感は、だんだんとおさまっていった。頭が冴えていく。盛況な夏が過ぎ、秋が訪れ、冬になっていくように、思考回路が澄んでいく。それと同時に、アルコールで抑え込んでいたある疑問が浮かび上がってくる。
「―――あいつ、一体誰だ」
この作品を書いているときに聴いてた曲でも連ねておきます。作品に入り込みやすくなるんじゃないっすかね。ふふ。
Low way/base ball bear




