お題 「髪の毛・ラムネ・コップ」 2
綿菓子の雲の上で、私は王子様の到着をお待ちしています。
テーブルにはお星様の金平糖と、ラムネ色のコップにお花のメロディーシロップを注いだ夢色ウォーター。
それに二本のストローを刺して、デートの準備は満タン♪
あぁ、愛しい人。早くお会いしたい…
東京・池袋。
飲食店街の片隅、居酒屋「生臭坊主」から、死にかけた蛙の様な呻き声がお座敷席から響いていた。
「先ぱ〜い、大丈夫ですかぁ?」
仕事の後輩が甘ったるい声で私の背中を摩る。
「さ、摩るな、出る…」
胃から込み上げてくる、、ビールと焼酎と味玉、キムチ、その他諸々の内容物の発射カウントダウンが始まり、おちょぼ口で女子トイレへ駆け込んだ。
暫くの間マーライオンと化した私は、多少スッキリして後輩が待つ座敷に千鳥足で戻った。
「なんか凄い夢見た気がする…。
空の上でメルヘンな食べものこさえて、王子様の到着待ってたわ」
「女子が見る夢みたいじゃないですかぁ」
「いや女子だよ」
…そう、実際の私はメルヘンにも恋する胸きゅんにも程遠い、女子力の低い女なのだ。
残業残業で、夢の花金にこうして後輩と華のない酒場で飲んだくれる日々。
メイクは適当髪はボサボサ。
服は部屋で乾いた物を適当にコーデ無視で着ている。
ワイン片手にアボカドを食う女子会なんて程遠いのだ。
酔いも少し覚め、そのまま彼氏の家に泊まるという後輩に「裏切り者ー!!」と罵声を浴びせ、とぼとぼ一人で歩いていく。
私は日に日に女らしさがなくなり、そのうち髭でもコンニチハするのではないかと不安になっていた。
次の瞬間、足元ばかり見て歩いていたせいか、人にぶつかってしまった。
「ごめんなさい!」
咄嗟に謝り顔を上げると、スラッとした色白の、キメ細かい肌の女性と目が合った。
少し長めのショートヘアはよく手入れされていて、輝いていて眩しい。眉毛も綺麗に整っている。
シャツはアイロンがけされていて、体からはいい匂いがする。
彼女が「大丈夫?」
と声をかけてきた瞬間、私の最後の女子力は音を立てて崩れた。
彼は男だった。
私は家に着くと、少しは努力して女子力を取り戻すか、このまま時に身を任せ男と化すかーー。
酒を飲み直しながら、下らない脳内会議は朝まで続いた。




