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お題 「坂道・昼休み・ピクニック」 3

人生は坂道だ。一歩ずつ道を上り永遠の山頂を目指す。歩みを止めれば人は成長しない。

それは祖父がよく言っていた言葉だった。


仰々しく言ってはいるが、別に祖父は何か偉い社長だったわけでも何でもない。この文言も結局はおばあちゃんを口説き落とす時にかっこつけて使って以来家訓に収まっているのだ。家訓。家訓ってホント聞こえはいいんだけどねぇ。


そんな祖父が死んで半年。まるで祖母を追うように逝ってしまった。かっこつけの祖父を見守り続けた祖母は本当に仲の良い夫婦間だった。

と、短い昼休みの時間に私はサンドイッチを頬張りつつ、休みの前日の金曜日の今日、現実逃避をしている。


OLになってから、なぜだかとても恋愛が縁遠くなった。可笑しいんだよねー。

学生時代は恋愛なんかする暇あったら勉強しろという空気が流れ、社会人になったら何でまだ結婚してないの?とボヤかれる。


学生と社会人との隙間に何か別の次元でも広がっていて、またいだ瞬間に切り替わらなきゃいけないのだろうか。社会人になったはいいけど、勉強にも仕事にも打ち込みすぎた私は合コンに呼ばれるわけでもなく、切り開ける時間があるわけでもなく、忙殺され、明日二十五歳となる。


学生時代のライングループでは子供がいる過程も多く、書き込みなどはしなく専ら読むだけの私の心はどんどん焦っていく。おじいちゃん、一歩ずつ坂を登ろうにも、登山ルートが無いよ。山頂目指すどころか迷子で遭難信号救助待ちだよ。


無駄に手作りのポテトサラダを摘みつつ、残り少ない昼休みをいつも通り惰性で消費しかけた時、声がかかった。


「あれ?先輩お昼ご飯お弁当持参だったんですね?いつもお昼になるとふらりと居なくなるから、どこかご飯食べに行ってるんだなーと思ってました。しかも、めっちゃポテサラ美味しそうじゃないっすか。冷食っすか?」


今年入社したばかりの元気な子犬の様な後輩。全体的にアホな感じも相まって、私の中のあだ名は柴犬。本名は柴崎なのだけどまぁ心の中だけならいいよね?


「冷食じゃないよ。私の手作り。うちの味ってやつで、おばあちゃんがよく作ってくれたからあと少しがんばろーって時に食べる事にしてるの」


そう答えると意外そうに騒ぐ。無視して最後のサンドイッチを口にした時に、彼が私のポテトサラダをつまんで食べる。

「あ、ほんとだ惣菜とか冷凍食品とは違う味っすね!いやー、自分じゃ作りたくないから尊敬します」


あまりにも無防備に近くでつまみ食いする彼。意外と長いまつ毛と整った顔に自分でも心拍数が上がったのがわかる。

あれ?私ってこんなに異性に?ドキドキしたっけ?免疫ない?


「先輩!俺もなんか作るんで二人でピクニックデートしません?」


頭一つ分くらいの距離で元気にはしゃぐ柴犬ならぬ柴崎を見ていると、ぎこちなく返事を返すことしかできなかった。


おじいちゃん。私はこの恋は、坂道を登れずに、転がり落ちたかもしれません。

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