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毒樹の果実  作者: ヒゲ博士


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真壁の独白

 暇を持て余していた僕とムタは、スマホで遊べる配信アプリに熱を入れていた。

 好き勝手に話して、そのリアクションを配信者が取ってくれる。無料キャバクラのような使い方で、浮いて湧いた虚無を塗りつぶす。


 そんな事を繰り返していると、女の子の配信者と仲良くなった。


 名前はマヒル。リアクションも芸人並みで、ちょっと影がある今どきの子って感じだった。


 マヒルさんはムタによく相談を持ちかけてた。SNSを使い、2人だけのやり取りが増えていく。

 正直妬ましかった。笑顔が増えていくムタと、明るくなっていくマヒルさん。


 僕だって彼女と相談を良くしていた。ソシオパスという特異な部分があって、人間関係を、思いやりを、どうすればいいのかと相談していたんだ。


 仲良くなるにつれて、現実で会う約束をした。来てくれたのは想像通りの人で、配信通り、ムタと仲良くなっていった。

 その環の中に入ることはできなくても、見守るくらいの事はできると、一緒に遊ぶようになった。


 孤独な生活を送っていること。

 自傷癖があること。

 ODで内蔵にダメージを与えていること。


 その全てを包み込んだムタは、すぐにマヒルが付き合い始めた。そのずっと前から僕はマヒルさんを好きになっていたのに。優しいだけじゃなくて、心の闇を理解してくれる。受け止め包んでくれるような、そんな人だったからだ。



 だからどうしてもモノにしたかった。






 あの日の訓練で、いつも通りムタのスマホを預かった。

 その時、僕はスマホを持ってトラックの後ろに隠れた。それからメッセージアプリの設定をイジった。名前を真壁に変更して準備完了。


【お前との肉体関係は単なる暇つぶしだった】


 これを送るだけで全部が終わる。常に不安と戦う彼女ならきっと信じるだろう。指が震えることもなく、躊躇いなく、送信した。

 自分でも気づかないうちに火照っていた身体を、山を駆け抜ける夜風が冷ましてくれる。

 

 後は計画通りに事が運ぶ。


 僕のスマホにマヒルさんから相談が来て、「ムタさんはしつこいし、少しだけ姿を隠すべきだ。友人を紹介するから。」と送る。

 勿論彼女は食いついた、なにせ身寄りがいない。ここまでくれば、孤独となった所を僕が庇うだけ。その手はずだった。


 朝日が昇り、日を跨ぐと事態は変わってしまった。画面には友人と名乗る者からメッセージが来ていた。


「マヒルの友人です。マヒルは昨夜自殺しました。」


 完全にムタとマヒルを分かつための策だったが、段取りと違った。文面も。タイミングも違う。

 言葉も出ずに朝日を浴びながら立ち尽くす。打つ手がなかったからだ。

 黒木と連絡を取りマヒルの様子を聞いても、返信がなく、どうすればいいかと混乱した。


 八方ふさがりの状態で、訓練を終了する知らせが届く。


 どうしようもなくて、僕はそのまま、ムタにスマホを渡したんだ。



 当初の目的であるムタとマヒルの絶縁は叶ったが、彼女が僕の下に残ることもなかった。

 結局全てを失ってこんなことになってしまったんだ。


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