真壁と黒木の調書1
黒木:今度はおんらいんかいぎでもすんのか…いい加減にしろよ。公僕どもが。
真壁:初めまして、真壁と言います。
黒木:………話すことはもうない。全部話したんだ。いい加減仲間の元に返してくれ。
黒木(小刻みに身体を揺らしている)
真壁:仲間?家族の元には帰らないんですか?
黒木:……帰る家はない。俺は捨て子だ。みんなと違って親の顔は分からない。
真壁:…僕の友人もそうでした。
真壁:本名は差し控えさせてもらいますが、生きていたら君くらいの年齢の女の子です。
黒木:知らねぇよ…そんなこと。
真壁:その人は僕の先輩と付き合ったんです。年の差です。年の差カップルで、見た目も釣り合ってなくて。美女と野獣でした。
黒木:……。
黒木(震えが止まる)
黒木:どれくらい離れてんだ?
真壁:10歳
黒木:なんだパパ活じゃねぇか。とんだロリコンが警察に居たもんだな。
真壁(ペンで机を叩く音)
真壁:……ほんっとにそうですよね。僕も最初は辞めておいた方がいいって言ったんですよ。そんなよくわからないスマホアプリの配信者に会わない方がいいとね。
真壁:でも彼らは会った。そして付き合ったんです。
黒木:前言撤回。ばかにしてわるかった。なんかすげぇ…夢というかなんというか。
真壁:…君はいい人間みたいですね。でも僕は疑っていました。美人局の詐欺狙いとか、一緒に死ねる人を探してるメンヘラとか。
黒木:確かに…。
真壁:覚えがあるんですか?
黒木(黙秘)
真壁:…まぁそれでも彼らは付き合い始めた。僕なんかも、新居にお呼ばれしちゃって。
真壁:気づいたら2年も経っていました。ムタさんは年甲斐なくはしゃいでたんですよ。結婚だーーー婚約してくれたーーーなんて。ハハ。
黒木:……あんた、楽しそうだな。
真壁:ええ。幸せでした。気持ちをお裾分けされてるような気分で。嬉しかったです。
黒木:…2年もって言ったけど。どういう意味だ?
真壁:自殺したんです。マヒルさ…
黒木:(沈黙)
真壁:どうしましたか?
黒木:なんで死んだんだよ。
真壁:原因は今でもわかりません。……正直な所、お付き合いが始まる前はリストカットやODしていたと、本人から聞いています。
真壁:積み重ねが彼女の心をへし折ったのかもしれませんね。
黒木:……そうか。なるほど、なるほど。
黒木(貧乏ゆすりの音)
真壁:……何か思うところがありそうですね。話してみませんか?
黒木:……俺達はヤクを流していた。そういったものが…人を苦しめている自覚ってのがなかったわけじゃない。けれど、目の前で聞いちまうと、まぁバツが悪くなるわな。
真壁:いいんです。過去より今、今より明日を。人間が良くしていけるものなんてそれくらいです。
黒木:そうだな。確かにそうだ。
黒木:あの倉庫に来たおっさんは、何しでかしたのかしらんけど、まるで……まるで墓掘りだ。自分の墓を探しに…。
真壁:そうですか。
真壁:それでは質問を変えます。そのおっさんは、倉庫で見る前に会ったことがありますか?
黒木:ある訳ねぇ。あんなよくわからん爆弾を扱って、怪力なら地元じゃ顔が割れてるはずだ。
真壁:怪力?確かに誰よりも力は強かったのは記憶してますが…。
黒木:力が強いなんてもんじゃない。殴って人を吹き飛ばすなんて漫画みたいだったぞ。
真壁:なる…ほど。
黒木:なぁ真壁さん。俺は仲間におっさんのことを話したがよ。どうにか止めてやってくれねぇか。仲間を守る為にも。あんなのに勝てっこねぇよ!!!
真壁(スマホの着信音)
黒木:なんだ。何の連絡が入ったんだ。
真壁:……手遅れだったかもしれません。




