いざ、出動!
俺は暴力団事務所に向かいながらガタガタ震えてる。だって、俺の捜査知識なんて『名探偵コ●ン』と『東京リ●ンジャーズ』の抗争シーンだけ。
周りの同僚や後輩たちは、タケさんに鼓舞されてめちゃくちゃ気合が入ってるし、きっとビビってるのは俺だけ。
「ムロ、準備できとるか? 久々のでかいヤ●ザの事務所や。ほら、チェーンソー持て!」
「チェーンソー!? 『バ●オハザード』のゾンビ退治みたいな装備使うんすか!?」
「何言うてるねん。こんなん当たり前やろ。まあ、脅しやから、ホンマに人には向けへんし、様式美っちゅーやつや」
俺にチェーンソーを預けたタケさんは、腕まくりをしてニヤッと笑う。嫌な予感しかしない。元の俺の世界に帰りたい。キ●ンキュンのご尊顔を見ながらきゅんきゅんしたい。
* * * * *
薄暗いビルの前。ヤ●ザの事務所を前に、俺とタケさんを含めた捜査員20人がスタンバイ。見た目は何の変哲もないビルだが、こういう所でヤ●ザは潜んでいる。暴対法なんかもあって、昔よりは大っぴらに活動できなくなった彼らは、こうして街中に潜んで活動しているわけだ。
「タケさん、俺、元は引きこもりのアニオタなんすよ…こんなん無理っす!」
「お前、まだ寝ぼけてるんか?変なこと言うて…。ガサ入れはノリや! ノリで突っ走れ!」
「いや、これ、完全に『鬼●の刃』の最終決戦レベルやん!?」
「ごちゃごちゃ言うな! ほら、ピンポンや!」
タケさんの号令で、俺はインターホンを高速連打。高橋名人の16連打を参考にさせてもらう。唸れ、俺の指!これが必殺・インターホン高速連打だ!!
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!
その隣では他の捜査員が 同時にドアノブをガチャガチャ!ドアを乱暴にドンドンドン! まるで『●ョジョ』の「オラオラオラ!」状態!ピンポンとドアの音が刻むビートが辺りを包む。
「開けんかい! ゴルァ!」
タケさんが吠える。俺も負けじと叫ぶ。
「ガサ入れや!早よ出迎えんかいコラァ!」
うわ、俺、めっちゃハマってる!こんなに大きい声出せたんだ!すげえ。室田すげえ。『呪●廻戦』の領域展開した気分。
その時、ビルの窓から組員がほんの少し顔を覗かせてこちらに怒鳴りつけた。
「うるさいわ! 誰じゃお前ら!」
「「「O阪や!!!」」」
卒業式の呼びかけのように、一斉に野太い声がハモった。すげえ。何この連帯感。動画で見たあれだ。まさか、実在してたなんて。その瞬間にタケさんがニヤリ。
「おい、チェーンソーや!威嚇したれ!」
「マジすか!?」
俺、ビビりながらチェーンソーを起動。
ブブブ…ブオオオーン!
心の中では「エ●ァの初号機の暴走かよ!」とか叫んでたけど、今はそんな暇ない!俺は必死でチェーンソーを鳴らす。その間にも何だかいろんな音声が聞こえてくる。
「さっさと開けろや!」
「令状あるんじゃ!早よ中入れぇや!ボケ!」
ピンポンピンポンピンポン!!ドンドンドン!ガチャガチャガチャ!!
「ゴルァ!舐めとったらアカンぞ!チンタラすんなや!」
うわ、怖い。誰か、警察呼んで!俺らも警察だけど、これは怖い。治安を守ってるどころか、俺らマル暴が居ること自体が治安悪化させてる説まであるだろ、こんなの…。
10分後、ついに組員が観念してビルの中からドアを開けた。なだれ込む捜査員たち。俺はチェーンソーを止めて突入した。




