正義のために俺は|征く
ガサ入れ終了後、証拠品を押収して事務所を後にした俺は、第四課で書類作成をしていた。
「あー、やっと出来た。肩こるわ、ホンマに」
俺はグッと伸びをして、デスク上のスマホに手を伸ばす。メッセージアプリの通知が目に留まり、指紋認証で画面を開くとそこには室田妻からのメッセージが。アイコンを見ると、そこにはこんなゴリラみたいなガラの悪い室田には相応しくない美人が映っている。
…美女と野獣って、こういうことを言うんだな。ってことは、室田、こんな美人と毎日一緒に寝起きしてるのか?んで、子どもも居る、と。は?マジ?童貞舐めんなよ、クソが!!
『美紀からスタンプを受信しました』
そこには可愛いウサギのキャラクターがハートを散りばめて笑っていて、「おつかれさまです」の文字が見える。可愛い。今までの俺(章夫)には、こんなリア充なメッセージなんて一回も届いたことがない。室田、こいつマジでうらやまけしからん…。
『今日は早く帰って来れる?佑馬がパパとお風呂入るって言ってるよ☆』
『美紀から動画を受信しました』
スマホの画面には、3歳の息子の笑顔がドアップで映っていた。
「パパ!お風呂一緒に入ろう!水鉄砲しよう!待ってるで!」
…何これ可愛い。声も可愛い。笑顔も可愛い。三次元にもこんな可愛いのが存在してたんだな。後ろでキャンキャン吠えているポメラニアンも可愛い。クソ、リア充め。
『わかった。早めに仕事終わらせるから、待っててくれ』
俺は素早くメッセージを送信し、既読がついたのを確認してからそっとスマホの画面を閉じた。あのガサ入れの後だからか、家族の温かさが染みるなあ。そんな気持ちに浸っているところに背後から声がした。
「おう、邪魔するで~」
「邪魔するんやったら帰って~」
「あいよ~…ってアホ!」
反射的に俺は新●劇のノリで返していた。室田、顔怖いのにきっちり関西人なんだな。怖っ。関西人怖い。テレビで言ってた「関西人はボケたら必ずツッコむ」は本当だったのか。実証されててビビった。
振り向いた瞬間にタケさんが缶コーヒーを投げてきたので、俺は慌ててキャッチ。
「ムロ、お疲れさん。書類任せてすまんかったな。これ終わったら早よ帰れよ」
「うっす」
夕陽が街を照らす。俺は慌ただしい今日の出来事を思い返しながら、コーヒーを開ける。カフェインを体に取り込み、一息ついた時に脳裏に過ったのは、荒っぽい正義も存在しているということ。転生前の俺では想像できなかった正義によって、世の中は守られているということ。正義のために俺は征くんだ。
「あー。よぉ頑張ったわ、俺。っしゃ、明日からもボチボチいこか~」
転生してマル暴捜査員になったけど…このドタバタ人生、なんかハマってきたかも。
…まあ、どう考えても転生先は間違ってるんだけどな!!
【完】




