『旅客営業規則』とは何か。
六月になると、『高校総体』によって乗客の荷物が増える。中には滅多に見かけないものまで。
松任駅始発の521-56の運転担当になったとき、ふと車内を振り返った。そこでは、天井に届きそうなほど長い『弓』を持ち運んでいる弓道部の高校生たちがいた(服装で分かった)。赤色や緑色のカバーに被せているけど…それにしても長いなあ。521って確か床から天井までの高さは2メートルくらいはあったはずなんだけど。
『旅客営業規則』というものがそれぞれの鉄道会社で定められている。うちもしっかりと定められているし、ネットにPDFとして公開されている。いや、PDFになってるのはJRとかも同じだけどさ。
さて、車内に持ち込める手荷物は下のように定められている。
・最大の長さ: 2メートル以内であること。
・全体の大きさ: 縦・横・高さの3辺の合計が250センチ以内であること。
・重量: 30キロ以内。
・個数: 2個まで(傘、つえ、ハンドバッグなどの身の回り品は個数に含まれない)
後で調べてみると、弓道用の弓の長さは約221センチが基準となっているらしい。それだと規則に違反していないか、となるけれど、これにはまだ続きがある。
・運動用具・娯楽用具・楽器類: 長さが制限を超えていても、専用のケース等に収納され、車内で立てて携帯できる程度の長さであれば持ち込むことが可能。
・車イス: 長さ・高さが120センチ、幅が70センチ程度のものは持ち込み可能(電動車イスは4輪に限る)。
つまり、今僕が見ている弓にはカバーが被せてあるので問題はない。けれど、長さが2メートル以上で、そういったカバーやケースなどに収納されていない場合は原則として車内には持ち込めない。そこだけは注意してほしい。
その高校生たちが途中下車しようとした時、つり革を支えているポールに引っ掛かった。仕方なく斜めにして下車していった。
521のドアって1.8メートルほどだったはず。弓道部って移動が大変だね。
「弓道、ですか」
「そう、今日の乗客にいてね」
「マスターは部活経験はないのですか?」
「中学にテニスを少々…ガチでやってたわけじゃないから。で、高校の時は即帰宅してた」
「最近、運動不足では?デスクワークばかりしているでしょう?」
「運転士ってデスクワークとは言わないでしょ。発車時に確認の為に運転室内を歩き回るんだから」
「それでも、運転室の移動は2メートルくらいしかないですよね?」
「…そだね。え~、運動したくな~い。これから夏じゃん」
「そんなことを言っていると、老後が大変ですよ」
「……」
老後、ねぇ……。




