表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/97

EF81・発車

 EF81はゆっくりと線路を進み出した。背後にディーゼルエンジンを積んでいるわけでもないのに轟音がする。おそらくはモーターや抵抗器を冷やすための『ブロワー』が動いているからだろうけど。

「マスター、信号などは見えませんか?」

「信号?……そういえば今まで見かけなかったよね」

「はい。一つくらいは置かれていそうですが」

 というか信号がないと安全な運行ができない。事故につながるし、国から行政指導が入る。

 すると、トンネルの壁が前照灯に照らされなくても見えるようになってきた。

「外が近いのでしょうか?」

「あ!ミズハ、ストップ!」

 僕の言葉に反応して、ミズハはブレーキをかけた。

「よく気が付きましたね、壁に信号が埋め込まれていることに」

 その信号機はLED式ではなくハロゲン式だった。今にも切れそうで、赤色の光が点滅していた。

「赤信号が消えない限り、ここからは出られそうにはないね」

「それにしても、ここはどこなんでしょうか?」

 スマホを出してマップを開いてみても、電波が弱いからかいくら待っても現在地が表示されなかった。

「ダメ、電波が弱い」

「私も測定できませんでした」

「参ったね……」

 その時、ゴトンゴトンと列車の走行音が聞こえてきた。ジョイントの通過するスピードからして……およそ時速90キロってところだと感じる。

「まさか……この先は本線なのかも?」

 そう言った瞬間だった。

 目の前をAKの521が通過していった。

「……」

「……」

 ということは、ここは石動駅-津幡駅の間にあるトンネルなのかもしれない。EF81を走らせていた時間はそんなに長くなかったからあまり移動はしていないはずだ。

 その521が目の前を通過してから三分後、信号が青になった。

「行きましょう」

「……うん」

 信号とすれ違った時、少し見えてしまった。

 信号の灯りが一つも灯っていなかった。青も、黄も、赤も。

「......お疲れ様」


 EF81がいた場所は予想通りで、しばらく走っていたら倶利伽羅駅に辿り着いた。いつも通り誰もいない。今は赤信号で停車している。

「倶利伽羅駅って津幡駅とか森本駅とは違ってポツンとあるから、こういう国鉄時代の車両が似合ってるというか……」

「古い駅×古い車両はよくあるロケーションですね」

ピンポン、ピンポン、

 急に連絡用の無線が鳴りだした。

『こちら指令所、え~と……倶利伽羅駅で正体不明の車両、応答願います』

 急に出てきちゃったから、そう言われるのも無理はない。

「はい、俱利伽羅駅で停車中の車両です。運転士はミズハ、翫です」

『は、え、ミズハさん!?』

「現在、EF81を運転しています」

『い、EF……はい?』

 事情を説明すると、司令員から指示が飛んできた。

『え~、それでは……どうすっかな……あなたの車は津幡駅まで走行し、二番線に入ってください』

「そ、それって大丈夫なんですか?」

 思わず口を挟んだ。今の時間は14時50分。この後津幡駅の二番線には15時07分発金沢行きの列車が入線するはずだ。

『大丈夫です。一番線に入線させますから』

「……分かりました」

 無線を切ると、ミズハがカバンの中を探り始めた。

「何してるの?」

「確かこの辺りに……ありました。被ってください」

 ミズハが取り出したのは運転士の帽子だった。カバンの中に折りたたんで入れていたようだ。なんと準備がいい……。

「それでは指示通り、津幡駅まで向かいましょうか」

「りょ~かい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ