さつまいもを植える
五月中旬。
「お~い、かなで。さつまいも植えに行かねえか?」
「そんな『おいパイ食わねえか』のノリで……」
家でGTをしていると、おじいちゃんがそう誘ってきた。
「ちなみにどこでやるの?」
「公民館。ほら、すぐ近くに廃校があったろ?」
「ああ、あそこねぇ」
「どうだ、行くか?」
ちょうどGTでやることは終わったし、たまにはいいかもしれない。
「じゃあ行こうかな」
「マスター、どこか行かれるのですか?」
その時、ミズハがベランダから戻ってきた。
「今からさつまいもを植えに行くんだ」
「私もついて行ってもいいですか?」
「いいぞ!人数が多い方が作業が捗るからな!」
おじいちゃんが代わりに答えた。
「じゃあちょっと準備してくる」
「私はいつでも行けます」
「軍手と長靴、帽子は持っておけよ~」
「ワカタヨ~」
家の近くに、元々は小学校だった公民館がある。子供の頃はよくその辺りで遊んでいた。椎茸を育てたり、山に登ったり...思えば、キノコ類は食べられないのになんで椎茸を育ててたんだ?
「お〜い、ヨシさん。孫も一緒か」
「そうだ。大きくなったろ?」
公民館に着くと、近所に住んでいる仲原さんが話しかけてきた。
「かなでとしらさぎか〜。久しぶりだな。こうやって会うのはいつ振りだろうな?」
「あ、こっちは姉じゃないです」
「え、じゃあ妹か?」
「妹はいません」
「...はぁ?」
そういえば、仲原さんにはまだミズハのことを伝えていなかった。
紹介し終えると、最初は驚いていたものの、すぐに慣れたのか普通に会話していた。飲み込みが早い。
「今日は小学三年生も手伝ってくれるから、仲良くしてくれよ?」
「分かりました」
「子供の扱いは慣れていますので」
僕らは準備をして、早速さつまいもを植える畑へ向かった。
「これがさつまいもの苗だ。植える時はこうやって深く穴を掘り、横に寝かせながら植える。立たせちゃあいけない。植えたら土を軽く被せる」
仲原さんも含めた近所のおじさんたちが、僕らに植え方を教えてくれた。今回のさつまいもは『五朗島金時』という品種らしい。
植えること自体は簡単で、すぐに手持ちの苗がなくなった。
「...ミズハの苗さ、お手本そっくりすぎない?」
苗がまるで仲原さんのデモンストレーションを再放送しているような見た目だった。
「覚えてしまえばあっという間です」
「それができればねぇ...」
「かなで、ちょっと手伝ってくれ」
「は〜い」
少し離れた場所にいるおじいちゃんに呼ばれた。
「私も行きましょうか?」
「じゃあお願い」
おじいちゃんの手には黒いビニールシートがあった。
「何それ?」
「ここの土の山に被せる。雑草とか生やさないようにするシートだな」
「今から敷くの?」
「ああ、だから手伝ってほしいんだ」
「じゃあミズハはあっち側持ってくれる?」
「了解です」
真ん中の目印として文字が書かれているので、それが山の中心に来るように敷いていく。シートの芯に指を入れて引っ張ると、めちゃくちゃやりやすかった。
「そこのカッターで切ってくれ〜」
「は〜い」
近くのカバンからカッターを取り出し、シートを切ろうと......き、切れない。
「刃がダメになっているのかもしれませんね。もっと刃を出して...」
ミズハはあっさりとシートを切った。結構力を入れてたはずなんだけどなぁ...。
その後に、シートの裾に土を被せていき、風で捲れないようにした。
「よし、そろそろ昼飯の時間だな」
「みなさ~ん、昼ご飯の準備ができましたよ~」
「ほらな?」
いや、さっき十一時半の音が鳴ってたけど……。
昼ご飯に『朴葉巻き』というのが出てきた。
「何この葉っぱ。紫蘇?香りがそれっぽいんだけど」
「これは『朴葉』です。モクレン科の落葉高木で、抗菌、殺菌作用があります」
「へえ~。で、その中にきな粉をまぶした米が入ってると。初めて食べるなぁ」
「あちらにおかわりもありますよ」
「いや、流石にそこまで食べられないし」
そのとき、調理担当の女性が声をかけた。
「おかずも味噌汁もありますよ〜」
「...味噌汁は別腹だけどね」
「まるでスイーツを食べるような言い分ですね」
味噌汁って美味しいんですよ()




