03系に会いに行く・1
五月初旬。僕は休みを取った。
「小銭はある、袋も持った」
「かなで、準備できたか?」
「出来たよ。いつでも行ける」
カバンを持っておじいちゃんのムーヴの助手席に乗り込んだ。
今日は内灘で『あさでんまつり』が行われる。それに向かうために休みを取った。
浅野川線が主体のイベントだけれど、実はうちの会社もキーホルダーなどの販売をしている。だから内灘駅へ行ったら同僚にバッタリ会えるかもしれない。
「そんなカバンで大丈夫か?」
「廃材を買うわけじゃないから大丈夫だよ」
浅野川線は使わなくなった廃材を販売している。初めて向かうから何があるのかは知らないけど。
8号線を走って内灘へ向かっていると、おじいちゃんが聞いてきた。
「お目当ては何かあるのか?」
「やっぱり03系だよ。まだ見たことがないからね」
「それは新しい車両なのか?」
「ちょっと前に浅野川線に入ってきたけど、製造されてから三十年は軽〜く超えてるよ」
「へぇ、時代は変わったんだな」
まあ……お下がりだし。
内灘駅まで送ってもらうと、ホームに03系が停まっていた。
「これが……こうやって見るのは初めてだなぁ」
03系はそのまま内灘駅を発車していった。
……会場はどこにあるの?そう思って駅員さんに尋ねてみた。
「ああ、あさでんまつりならそのオレンジ色の幟に沿って歩いていけば着きますよ」
「ありがとうございます」
駅員さんに言われた通り、オレンジ色の幟に沿って歩いた。横には車庫があったけど、僕はそれよりも別の場所に興味が向いていた。
「これ、線路だ」
車庫と道を分けるように設置されていた柵が線路でできていた。支柱の形がまんまそうだった。茶色く錆びていても分かる。
「有効活用……しっかりしてるね」
「廃材購入の整理券配布はこちらで~す」
少し離れたところで、駅員の女性が整理券を配っていた。
「よろしければ」
「あ、いえ、僕は廃材は買わないつもりなんで」
そう言って僕は中に入れる時間になるまで待機した。おじいちゃんにも言ったけど、廃材は買わない。絶対。重要なことなので二回言いました。
それにしても……。目の前には行列ができていた。これ、全員が廃材目当てなんだろうか。
「そりゃマニアックなファンもいるよね……」
「お待たせしました。今から『あさでんまつり』を開催します」
「来た……!」
僕は速足で会場に入り、展示されている03系を見つめた。左上の番号は『03130』と書かれていた。
「写真撮って!」
その03系の前で、男の子がピースサインをしていた。僕も昔はあんな感じだったよ。
「おお……」
車内に入る前に、僕はスマホのカメラで台車を撮影した。ところどころの形状は521と似ていた。
ネームプレートには『住友金属』の名前が刻まれていた。そこだけは分かったけど、それ以外の部分は剥がれ落ちていて分からなかった。
「仕方ないよね、古いし」
ステップを登って03系の車内に入ると、古さを感じさせないほどの白さだった。いや、近くで見れば塗装の剥げや汚れが見えるけれど、これは状態が良さそうだ。
あとしっかり涼しい。ここ重要。
130の反対側は830で、そこではシミュレーターが体験できるようだった。でも僕は130側で行われる運転士のなりきり体験に向かうことにした。
え、『本物の運転士じゃないか』って?……浅野川線の運転士じゃないですよ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
浅野川線の運転士(らしき人)から帽子を渡された。サイズはピッタリだった。
運転室は521とは違って緑色だった。青色の座席に座ると、左上にいろいろなスイッチ類があった。
・制御
・戸閉連動 連↔非
・回生開放
・限流値増 通常切
・列車無線
・耐雪ブレーキ
・デフロスタ
・ブレーキ遠隔開放
・制御開放
・起動試験
『デフロスタ』って何だろう?と思って調べてみたら『デフロスタ―』のことだった。『ー』が入りきらなかったのかな…?
でも『モーター』が『モータ』になってたり、『ドライバー』が『ドライバ』になってたりもするから、それと同じなんだろうなぁ。
速度計のスケールは120 km/h。521よりもスケールが小さい。でも浅野川線でそんなスピードは出せないからこれくらいでいいんだろう。
後ろの装備を見たくて振り返ると、子供たちが列を作っていた。それを見てすぐに運転席から立ち上がった。
「どうもありがとうございました~」
帽子を次の子供に渡し、03系から降りた。
「さて、次は……あの中に行ってみよう」
内灘駅の横にある車庫。そこもあさでんまつりでは解放されていた。
そろそろテストなんで投稿頻度下げましょうかねぇ……。




