帰宅ラッシュ時間帯に二両編成は……。
夜の八時前、金沢駅にて。
今日も今日とて七尾線を金沢駅まで運転してきた。七尾から福井方面に帰る人もいるので車内はいっぱいだった。
「ミズハ、車庫に戻すの任せてもいい?」
「三番線に向かうんですね?」
そう、この五分後には今度は富山からの521が入線してくる。それも大勢の乗客が降りてくるだろう。
「分かりました。気をつけてくださいね」
「もちろん」
僕は早歩きで三番線に向かった。この時点で既に車内には隙間がない。
この時間帯に二両で走らせるって無理がありすぎる。津幡で停まってる回送電車とか98も活用したらいいのに。
そうは言っても、決定権は区長たちにある。僕が言ったってねぇ……。
「今日は55か……大変だろうけど頑張れよ」
ファンッ!!
そのとき、五番線に富山の521がミュージックホーンを鳴らしながら入線してきた。今日の担当は31と1004だった。
車内には『まあまあ多い』というくらい乗客が乗っていた。
「すみませんがもう一歩中へお入りください!」
奥にも聞こえるように、僕は声を張り上げた。
521の定員は二両合わせて252人となっているのに、今はそれ以上の人が乗っている。いくら車内に詰めてもスペースがない。
富山からの乗客を乗せると、いよいよ人が入れなくなってきた。
「すみません!これから小松・福井方面に向かう方は20時05分に二番線を発車する電車にご乗車ください!」
さすがにこれ以上は無理だ。ドアが閉められない。
僕は一番後ろのドアへ向かい、一つずつ閉めていった。カバンのキーホルダーが挟まるなんてこともなく、順調に閉めた。
「OKです」
「すまんな、手伝わせて」
「いえいえ」
運転室にいる見上さんに準備完了であることを伝えた。
こんなに人が乗車していても、55は普通に走り出した。683系のお下がり(?)だからこれぐらいがちょうどいいのかもしれない。普段が過剰すぎるってだけで。
「あ、行っちゃった……」
一人の高校生が発車していった55を見て呟いていた。
「次は二番線から発車するので……」
「ど、どうも」
その高校生は階段を下りていった。まあ、間に合ったとしても人が多すぎて乗れなかっただろうけど。
「あ、ミズハのところに行かないと」
大丈夫だとは思うけど、念のために見ておかないと。
「マスター」
「どうしたの?」
「やっぱり足りてませんよね、さっきの55だけでは」
「そう思うよね……なんで四両編成にしないのかな」
「事情は上のみぞ知る…ですね」
もしかして次の電車に乗ってもらうことを前提としているのかな?




