表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/97

38話 1次車

 521系1次車に会いに行くために、98を停めた車庫へ向かった。昨日のうちに話はつけてある。

「早速業務があるので、じっくりとは見られないとは思うのですが……」

「見られるだけで十分です!あとは実費で乗車すればいいので!」

「そ、そうですか……」

 98から一つ空けた右隣に521-2が停まっていた。

 2007年の頃は転落防止幌が設置されていなかったので、少しだけ印象が変わる。キハ127系に似てるなぁ……と感じたりした。

 けれど今は幌が設置されているので、2次車と大差がない。違いが分かる場所といえば、『クモハ521-2』と書かれたネームプレートやつり革の大きさなどだろう。

 そういえば、2次車派がいることは言ったけれど、それには1次車は含まれてるのかな?顔つきは同じだから含まれてはいるだろうけど。でもこの感じ……好きになるのはなんとなく分かる気がする。僕だって、尾灯が灯っているときの表情が好きだ。

「すみません、そろそろ……」

 どうやらここでお別れのようだ。521-2はそのまま敦賀駅へと向かっていった。

 ……こうしちゃいられない。僕もそろそろホテルに

ピシャンッ!

「ひょえぇ……」

 いきなり雷の音が響き、車庫の中が暗くなった。

 そして一気に大雨となった。窓ガラスにすさまじい勢いで当たり、大きな音を響かせていた。

「えぇ、急に天気変わりすぎだって……」

 スマホで確認してみると、近くに落ちて辺りが停電しているらしい。ということは、今発車していった521-2も立ち往生しているわけだ。……僕がもう少し粘っていたら。いや、それだと普通に業務妨害じゃないか。

 と、ここであることに気が付いた。

「あ……傘持ってきてない」

 カバンにも折り畳み式すら入っていない。こんなに急に大雨になるとは思っていなかった。It’s 判断力足らんかった()

 BPM137でリズム刻んだろか畜生めぇ!と心の中で叫んでも意味はない。

「これからどうしよっかねぇ……」

 僕は98の排障器に背中を預けた。なぜかちょっとだけ温もりが感じられた。


「何してるんですかマスター」

「……んぇ?」

 目を開けると、傘を二本持ったミズハがいた。僕はいつの間に寝ていたんだろう。

「膝を抱えて寝るなんて……体が痛くなりますよ」

「そ、そうだね。よっと……ごめんミズハ」

「どうしました?」

「足が……痺れた……」

「はぁ……」

 ミズハに支えられながらなんとか立ち上がり、足の痺れは一分くらいで収まった。

 何回か足が痺れた状態で立ってコケた経験があるから、若干トラウマになっている。

「すまんね」

 体を支えてくれたことと、傘を持ってきてくれたことについてだ。

 今は雨脚は弱まっていて、二人で並んで歩いていた。

「礼には及びませんよ」

「それで、停電は?」

「三十分ほど前に解消されました。遅れはありますけど」

 復旧できたのなら良かった。その間呑気に僕は眠っていた……。

「マスターの方はどうでしたか?1次車は見られましたか?」

「うん、521-2を見てきた。ほんの十分くらいだったけど」

「所感は?」

「あんまり変わらなかった」

 結局、じっくり見てもコレである。

 現実でのこと。


 デゴイチを見ていると、二人の親子がいた。

 すると子供の方がデゴイチの煙室扉(熱い水蒸気などを閉じ込める扉)の前まで登ろうとした。デゴイチに取り付けられた手すりやステップを使って。

 親の方は止めようともしない。それどころか、運転室に侵入する方法を探していた。教えはどうなってるんだ。

「こっち入れなかった」

「こっちも無理」

「え~入りたかったのに」

 この親子、常識を知らない。と感じた。

 まるで『普通なら入れる』と言っているようにも感じ取れた。いやいや、『普通は』入れないものなのだ。ちゃんと保管会社だっているんだし。

 僕がいたからか、その親子は炭水車の方向に向かっていった。その後はどうだったかは知らない。変なことをしてなければいいけど。

 ……なんでこんなに常識を知らない・知っていても破る人が増えてきたんだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ