32話 再始動
三月というのは僕にとって特別な月である。
「「「「「誕生日おめでと~!」」」」」
「ありがと~!」
目の前にはロウソクが乗せられたホールケーキが出されていた。ロウソクの形は『24』……もう24歳なのか。
「少し前まではこんなに小さかったと思ってたんだけどな~」
「時間の流れって早いわね~」
「おじいちゃんもおばあちゃんも、毎年ありがとう」
「孫孝行ってやつだよ」
「それで、お姉ちゃんがいるのは分かるけどさ……なんで加賀谷までいるの?」
当たり前と言わんばかりに、僕に向けてスマホのカメラを向けていた。
「え~、だって特別な日ですよ?(パシャ)」
「普通に写真撮るなよ……」
「いいじゃないですかマスター」
「そうそう、こういう行事は人数が多い方が楽しいよ」
「……それはそうだけど」
お姉ちゃんからしたら、加賀谷は可愛い妹なんだろうな。……性格はかわいく
「翫さん???」
「なんでもないですよ」
僕の誕生日会から一週間が経った頃、僕と加賀谷、ミズハは区長に呼ばれて521-98の中にいた。
「実は一か月後、また空を駆けてもらうことになった」
「何かあるんですか?」
すると、区長は一枚のプリントを渡してきた。
「8時40分に金沢駅を発車する『つるぎ』なんだが……先頭車両を突然貸し切りたいと連絡があったらしいんだ。外国の来賓と日本の大臣が外に漏らしたくない話をするんだとさ」
「え、じゃあその席を予約していた人たちはどうするんですか?」
「そこで君たちの出番なんだ」
加賀谷の質問に答えた区長が立ち上がった。
「人数はそこまで多くなくて、521系のシートで収まるくらいなんだ」
ということはざっと80人くらいなんだろう。
「停車駅はどうなるのですか?」
「福井と敦賀の二つだけだ」
それだとほぼ快速列車みたいなものだ。いや新快速か……?
「その後ってどうなります?」
「おそらくはこっちに戻ってきてもらう。ただ、何があるか分からんから何とも言えない」
「そうですか……」
「もちろん、断ることだってでき——」
「やります!」
「もちろん、お任せを」
加賀谷とミズハは即答した。後は僕だけか。
「……だそうだ。翫くんは?」
「二人がやると言っているので……やりますよ」
「そう言ってくれると思ってたよ!」
というわけで、4月上旬にまた『空走列車』は走り出すことになった。
このペースだと、年に一回は走ることになりそうだな……それでも構わないけど。
「あ、そうだ。全員に配る予定だったけど先に渡しておくか」
区長に手招きされてとある一室に入った。そこには大きめの段ボールが二つあった。
「出張のお土産だな」
「えっ、これは…」
「……チョイスが」
渡されたのは饅頭ときしめんだった。なんできしめえええええええん!!??
「ほら、米の値段は今高いだろ?」
「前よりも若干は値上がりしてますよね」
「だからきしめんなんだよ」
そんな理由で……。保存はどうしておこうかな。
「翫さん、この饅頭……中身がつぶあんです」
加賀谷が饅頭を一口かじった時にそんなことを言ってきた。
「僕のはこしあんだったけど……もしかしてこしあん派?」
「……はい」
「……今だけ我慢してよ。さすがに食べかけを渡すわけにもいかないしさ」
「……」
あ、これ若干不機嫌かも。あまり刺激しないでおこう。




