収録後、記憶が吹っ飛んだらしい
「今日も女子会とは……最近の加賀谷は熱心だなぁ」
撮影を終え、家までの帰り道で僕はそう呟いた。ミズハを着せ替え人形にでもしているんだろうか?
冬は視界が悪くなるし、窓ガラスは結露するし、スリップして踏切で立ち往生されるし、ろくなことがありゃしない。
「ん…?」
家の前に着くと、見慣れない車が一台停まっていた。
カローラスポー……間違えた。GRカローラはお姉ちゃんのだとわかる。ただ、その後ろに止まっているGRヤリスは誰のものなんだ?
お客さんが来ているのだと思い、僕は玄関の扉を開けた。
「ただいま~……え、なんで真っ暗?」
いつもなら照明がついているはずなのに、今日は真っ暗なままだった。うっかり忘れているのかな?
ここで違和感に気付いた。いつもなら台所から何かしら音がするのに、何も聞こえない。
「……おばあちゃん?」
台所には誰もいなかった。なにこれホラー?僕そういう耐性は皆無なんだけど。
「居間はさすがに誰かいるはず……」
そう思って居間に繋がるドアを開けた。
「おかえり、翫さん」
赤色の照明の下に、コートを着た女性が立っていた。照明のせいで何かは分からないが、手や顔に液体が付着していた。
「これで、ずっと一緒にいられるね」
女性が僕に向かってほほ笑んだ。
可愛いと思うよりも先に、恐怖がでてきた。ホラー映画どころでは収まらない恐怖体験に、僕は叫んだ。
「オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
16分17打 ( ˘ω˘ ) スヤァ…
目が覚めたら、僕の部屋の天井が見えた。
昨日の夜何があったんだけ。お姉ちゃんが帰ってきていたことは覚えてる。誰か客人が来ていたことも覚えてる。
「……その後何があったんだっけ?」
いつもの長袖シャツとズボンを着て一階へ。台所ではおじいちゃんとおばあちゃんが皿を洗っていた。
「かなでくん、今日はぐっすり眠っていたわね。もう八時よ」
「え、もうそんな時間なの!?」
「でも今日は仕事ないんだろ?」
「……そうだった。じゃあいいか~」
すると、居間から談笑する声が聞こえてきた。
「お~、かなで起きたね」
「ずっと目が覚めなかったらどうしようかと……」
「悪ふざけし過ぎましたよね、私たち」
居間に白鷺お姉ちゃんと豊沢さん、北海さん…?もいた。
「え、いつから?」
「昨日からだよ。覚えてない?」
「IDK」
「刺激が強すぎて記憶が抜け落ちたのかも」
「刺激が、強い……?」
何をされたんだ僕はっ!!
「あっち系じゃないから安心して」
「……?」
「朝ごはんできたわよ~」
結局、僕が何をされたのかは分からないままだった。
朝食後、僕らはカローラスポーツに乗ってちょっと遠出した。後ろは北海さん、お姉ちゃん、豊沢さんが並んで座っていて狭そうだったけど。
「仕事のせいでゲームセンターは最近行けてなかったなあ」
「豊沢さんってそんなに忙しいの?」
「もう来週から仕事が始まるんですよ」
北海さんからスケジュールを聞くと、めちゃくちゃギッシリだった。人気女優は大変だなあ……。
「なので、今日はとことん遊びつくしますよ!」
「うん、ケガしない程度にね?」
そこはゲームセンターというよりも、複合施設のほうが合っている気がする。カラオケにボウリング、EVカート……ここだけで丸一日は遊べる。
僕はエスカレーターで上に登ってリズムゲームのコーナーへ。
「…見たことない機種だ」
「ダンスゲーム、でしょうか?」
大きな画面の手前にエリアがあり、そこに立って行うゲームらしい。
ミズハに百円玉の投入や各種設定をしてもらった。コントロールするボタンがエリア外にあるからだ。
「どの曲をしますか?」
「じゃあ、まずは右腕を振り上げて……」
そんな調子で二曲プレイした。チュウニズムとかよりもプレイできる曲の数が少ないのは体を動かすからだろう。
高校の時にダンスしておいて正解だった。
圧倒的、運動不足...!




