小休止:高校の下校タイミングが被るとどうなるか
高校では既に入学式を終えた季節。まだ新一年生は慣れていないだろうなぁ。
この季節になるとホームでの事故が起きやすい。より一層注意して運転しないといけない。
そう思いながら、ミズハと共に七尾線が入線してくる一番線へ向かった。
...階段で学生たちの列ができていた。
「へ?」
「これは...」
隙間を通り抜けて、先頭車両が停車する位置に行っても人だらけだった。
な、なんでこんなに多いのぉ!?
「マスター、この人数はマズいかもしれません」
「だよね、今から来るのは521-107だけ。二両編成だから乗り切らないかもしれない」
それに、ドアに挟まれてしまう可能性だってある。
「ミズハ、後ろのクモハに乗ってくれない?この人数は車掌がいないと」
「分かりました」
「おそらく全学年の帰宅時間が重なったのかと」
107を運転してきた七尾線の運転士が言った。
「驚きましたよ。階段から列を作ってるなんて」
なんとか全員が二両に乗り切ったようで、今はミズハが最終確認を行っている。
「本当、気をつけてくださいね」
「もちろんです。プロですから」
そうして、多くの学生を乗せた107は津幡駅を発車した。
森本駅は降りていく人の方が多かった。それによって車内に少し余裕が生まれた。ただ、それでも混んでいることに変わりはない。
森本駅を発車し、高架を進んで東金沢駅へ。
「...はぁ???」
東金沢駅のホームも学生でいっぱいだった。
一目見て分かる。こ れ は ひ ど い 。
『マスター、どうしますか!』
予想外すぎてミズハも焦っているようだった。
「まず先に降りる人から降ろそう!」
ドアのロックを解除し、僕は駅と車内にアナウンスした。
『降りられる方が優先です。そして乗客の皆様、できるだけ中まで詰めてください』
みるみるうちに乗客は107に吸い込まれていき、全員が乗車した。掃除機かな?
ちなみに107は重さを感じさせない加速をした。余力たっぷりだもんなぁ。
金沢駅に着くと、まるで弾けるように出口から降りていく。
最後の一人が降りたのを確認して、僕は運転室から客室へ移った。
「こういう時は大抵落とし物があるんだよね」
網棚の上に紙袋があったり、隙間に切符が落ちてたり...今までに様々な落とし物を回収した。
そして案の定...。
「うわ、定期券落としてるじゃん」
シートの下に通学定期券が落ちていた。ひとまず回収。
「ええ...」
窓横の肘掛けにはジュースの空き缶が置かれていた。持って降りてくださいよぉ。
クハの車内に残されていたのはその二つだけだった。
「ミズハ、落とし物あった?」
連結部を通ってクモハへ移った。
「輪島塗の茶碗が一つ...」
ミズハが紙袋を提げていた。中身は茶碗で、さらにその下に二人分の箸まで入っていた。
レシートに書かれていた値段は...26,000円。輪島塗だから...。
「て、丁寧に持っていこうか」
「はい」
駅の窓口に、加賀谷と話している男子高校生と、輪嶋くんと話している老夫婦がいた。
ミズハには輪嶋くんのところに向かってもらい、僕は加賀谷の方へ向かった。
「お疲れ様。何の話かな?」
「あ、翫さん。通学定期券を落としてしまったらしくて」
あの定期券はこの高校生のものだったんだ。
「これかな?」
「あ、それですそれです!」
高校生は目印としてキーホルダーをつけていた。それによって見分けているのだとか。
キーホルダーって大事だね。
「見つけてくださり、ありがとうございます!」
「気をつけてね」
高校生はお礼を言って東口へ去っていった。
さて、ミズハは...。
「問題なく終わりましたよ」
「ほんと、ミズハさんのおかげです」
無事に渡せたようだった。
その後、加賀谷は次の業務に、輪嶋くんは事務室へ向かった。加賀谷は忙しい中対応してくれたんだ...。
「ふぅ、今日はいつもより疲れたなぁ...」
事務室で椅子に座った瞬間、ドッと肩が重くなった気がした。
「すごい人数でしたからね」
あ〜、家に帰ったらカワイイに包まれたい。
「よし、カワイイ・フューチャーベースでも聴こう!」




