キハ……キハ!?
十一月下旬。ついこの間までは暑かったのに、今となっては上着が必須になってきた。秋はどこ行ったの???
こういう季節にはやっぱり『Alice in 冷凍庫』や『Uz』が一番だ。え、夏に聴くものなんじゃないかって?……遠い夏を『感じる』ためなんですヨ——。
521の車内は弱めに暖房がかかっている。そのおかげで少し暖かいのが救いかな。
「お疲れ様です」
今日も今日とて金沢駅から津幡駅まで521-118を運転した。四番線には既に、七尾駅まで担当する運転士が立っていた。ちなみに、七尾線はほとんどワンマン運転なので車掌はいない。僕は今まで『ワンマン普通』以外の表示を見たことがないんだ……。
「それじゃあ、今日も無事故で運んでくださいね」
「えっと……乗客をですか?」
「それは最重要だけど、521にも気を遣ってあげてね」
「は、はぁ……」
やっぱり、521にも気を遣っているのは僕だけなんだな……。
そんな話をした後、発車時刻になった521-118は走り去っていった。
「さあて、次の業務は……ん?」
ガタン、ガタンガタン。
富山方面から車両が走ってくる音が聞こえてきた。
この音の軽さ……二両編成じゃないな。線路のつなぎ目を乗り越える音が少ない。でも一両で走ってくる車両なんて点検車両くらいだ。
「お、来た来たっ」
目をこらしてその車両を見つめた。一体何なんだ?
パンタグラフなし、オレンジに赤の帯、少し斜めになっているフロントガラス……。
「キハ……え、キハッ!?」
一瞬だけ見えたが、あれは恐らく『キハ120形』だ。あの全長の短さと帯の色は間違いない。でも何でここを走っていって……?
そう考える僕なんかそっちのけで、キハ120形はどんどん遠ざかっていった。
「うわ~、本当に停まってるよ~」
521-102を車両所に送り届ける作業をしていると、洗車機の奥にポツンとキハ120形が置かれていた。
隣には『能登かがり火』用の683系が停まっていて、小ささが目立っていた。てか、このツーショットはなかなかお目にかかれない。よ~く目に焼き付けておかないと。
それにしても、このカラーリングは大糸線……本来なら糸魚川を走っているはず。そんなことを区長に言うと……。
「実はあれ、うちで点検するんだよ」
「でも僕、今まで見たことないですよ。『キハ』なんて花嫁のれんの『キハ48形』」
「富山支所にもいろいろ事情があるんだとさ」
あ、この感じは触れちゃいけないのかも。
それにしても……本当に短いなあ。両隣を521で挟んだら埋もれるって。大型トラックの間に軽自動車がいるようなものだ。
そういえば、生産期間は1992年-1996年だったはず。この車両も681系と同い年なのかも。
「だいぶ頑張ってるんだなあ……」
また来年も見られたらいいな。
輪嶋くんは『ATS大丈夫なの?』と心配していた。
……ここに走って来られたんだから問題はないんじゃないかな?
Orangestarさん本当にありがとうございます。もう少し生きてみます。




