ハロウィン(同窓会)・3
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「これが、僕?」
目の前の鏡には、可愛いゴスロリ服を着た少女が映っていた。数時間のメイクと衣装でこんなに変わるなんて……。てか、僕って何で女装がこんなに似合うんだ?前世は少女だったのか?
「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!私史上最高傑作だっ!」
メイク道具を持った加賀谷が叫んでいた。い、息遣いが荒い。
「ミズハちゃ~ん!そっちは……お、いいじゃん!」
「どうかな?」
加賀谷に連れられて部屋に入ってきたのは……灰色のパーカーを着た僕だった。
いや、僕の姿をしたミズハだった。
「このクオリティ、本当にマス……僕だね」
もう僕を演じ始めているのか、いつもの話し方とは全然違った。
「と、というかミズハ」
「何かな?」
「そ、その………πはどうしたの?」
「ああ、あれ実はパッドなんだ」
それを外すだけで、あっという間に男性の姿へ……なんてモノを開発したんだ区長たちは!
「さあ、友人たちが待ってる。行こうか……かなでちゃん」
「は、はい」
僕ってこんなふうに話してるんだ……無意識だから自覚がない。
「あ、もう始まってる?」
集合場所の居酒屋に入り、部屋へ案内された。そこには既に桑本さん、宝田さん、中条さん、小村さん、豊沢さん、藤原さんがいた。なぜか味噌汁をすすっている……。
「い、翫……後のは」
桑本さんはゴスロリ服の僕を見て驚いていた。
「え、ああ気にしないで。彼女、話しかけられるのは苦手だから」
ミズハが平然と答えた。実は加賀谷に忠告されていることがある。
『声を出したら絶対にバレますよ!だからお口にチャックで!』
というわけで、僕は話せない。確かに僕に女声は出せないしなぁ……ちょっと時間があれば練習でもしてみようかな。
「ほら、僕って母方の実家暮らしでさ。祖父母の世話は僕だけじゃ回らなくなってきちゃって……で、雇った」
「雇ったって、おま……簡単に言って」
「お~、めちゃくちゃ可愛いじゃんこの子」
「………っ!?」
後ろから福住さんに声をかけられた。危うく悲鳴をあげるところだった。危ない危ない。
「いいねえ、インスピレーションを得られそうだよ」
「……」
福住さんの目つきが怖い……!
「福住さん、この子が怖がってるから」
「ああ、ごめんごめん」
ミズハが上手く福住さんを僕から離れさせた。ナイスアシスト……。
その後は喜久田さんと池戸さんがやってきて、同窓会は始まった。
僕の姿をしたミズハは料理を全て僕に渡してきた。ミズハは食事の必要がない、というか食べられないからだ。
「おやぁ?翫くん食べないのかい?」
その様子を見た宝田さんがミズハに話しかけてきた。
「ちょっと食欲がなくて……。最近仕事ばっかりしてるからかな」
「しっかりしてくださいよ翫くん。この中では数少ないまともな人物なのでね!」
「だぁれがまともじゃないってぇ!?」
「だ、誰も言ってませんよそんなこと!?」
宝田さんの発言を聞き間違えた小村さんが声を荒げた。まあ、いつものことだ。
俺(桑本)「小村、もうビール三杯目だろ。飲み過ぎは体に悪いぞ」
小村「こぉでもしないとやってけないんですよぉ!……かぁ~、おかわりもういっちょ!」
翫「オノマトペ……WACCA……うっ」
そんなところまで再現してくるんだ……。
豊沢「だ、大丈夫?」
翫「だ、大丈夫。ちょっと思い出してただけ」
ここでソースで手を汚してしまい、お手洗いに行きたくなった。
少女「………」
翫「お手洗い?いってらっしゃい。すぐそこにあるから」
ミズハから許可をもらったので、僕は立ち上がった。
豊沢「じゃあ私も……」
マ、マズい。豊沢さんとバッタリは本当にマズい。最悪、気付かれかねない。
僕は早歩きで多目的トイレに駆け込んだ。
「あれ、いない……」
ドア越しに豊沢さんの声がした。あの反応……もしかして若干気付いてる?
ひとまず手を洗って多目的トイレから出た。
「あ、いた……!」
「………!」
女子トイレから出てきた豊沢さんにバッタリ遭遇してしまった。これがポケトレの心情ですか……ここで感じるとは。
「ねえ、あなた……」
「………」
どうしようどうしよう。ここで走り出したら余計に怪しまれる。
「翫さんに雇われたのは嘘だよね?」
終わった。
「本当は……妹さんなんでしょ?」
……僕に姉はいるけど、妹はいない。良い方向に勘違いしてくれているようだ。
「大変だね、あんなこと言われて。あとでちゃんと言っておくから安心して」
「………」
そうして二人で部屋に戻ってきた。この時間がかなり辛かった。
「そういえばぁ、翫と池戸ちゃんだったらどっちが長距離走ってるのぉ?」
小村さんが不意にそんな質問をしてきた。
「圧倒的に池戸さんでしょ」
「そうね、敦賀から東京まで走ってるわ」
僕だってそれくらい遠距離の運転をしたいよ……いや、一回だけしたなぁ。
「逆に僕は富山、福井、石川の北陸三県だけ。それにE7系/W7系と521系じゃ速度が違うよ」
「それもそっかぁ!」
あれ、僕って521『系』まで言ってたっけ……。
「でもそれなら、豊沢さんは日本全国を周ってるんじゃない?」
ミズハ、僕よりも話の振り方が上手いんじゃないかな?
「た、確かに。ついこの前は沖縄でロケの話があって……」
「真夏に沖縄かあ。仕事さえなければ……!」
中条さんが悔しそうにしていた。夏休み期間中も先生たちは忙しいらしいからねぇ……。
「でも、別のロケがあったので断ったんです」
「え~、もったいない」
福住さんの言う通り、もったいなさ過ぎる。
「その時点では断れなかったんですよ」
なら仕方ない……。
「走行距離なら、又くんもすごいですよ!」
「え、そうなの?」
「又くんは自動車のWebライターなんですよ!ね?」
「……そうだよ。この前は22B-STIの取材と試乗をした」
僕は初めて桑本さんの職業を聞いた。それにしても22B-STIって……。
「それ、限定車じゃなかった?」
藤原さんが身を乗り出して尋ねた。
「そう、400台限定。意外と日本にあるんだな」
「ところで……記事に毎回コメントを寄せてくるユーザーがいませんでしたか?」
宝田さんがイタズラをする時のような顔で桑本さんに尋ねた。
「え……ああ、『r k t』ってユーザーが熱心に……おい何でそれを知ってる」
「そのユーザー、実は僕なんですよ。初回から熱心に追っていますからねぇ!!」
初回から……。
「じゃ、じゃあ、初期の頃に書いてたポエムも」
「もちろん、覚えてますとも!ここで朗読もできますよ!」
「言うなっ!」
桑本さん、ポエム書いてたんだ……。
続きます。




