ハロウィン(同窓会)・1
来週から投稿頻度が下がります。ご了承ください。
十月末、もうすぐハロウィン。31日はちょうど休みを取った。
実は少し前にずっと通知が鳴りやまない高校時代のグループラインで、同窓会の話が出てきた。
『服装:自由』
これには別の意味が込められている。
『何か面白い格好で来るように』
高校の頃にそう言われると、いつの間にか大喜利大会みたいになっていた。文化祭の時だってそうだったから。
面白い格好ねえ……仮装すべきだけど、ピッタリなキャラクターなんていないわけで。
運転士の制服で行ったとしてもただの『本人』だからなぁ……仮装じゃないよ。
「仮装、どうしようかな……」
僕は一人きりの事務室で呟いた。
「お困りですか?」
一人きり、じゃなかった。僕がそう思い込んでいるだけだった。
背後に加賀谷が立っていたのだ。
「か、加賀谷ぃ!?」
「ようやく……ようやくこの日が!」
「ま、待って!何するのさ!?」
「私が……いえ、私たちが翫さんを可愛くしてみせます!」
こうなった加賀谷は僕でも止められない。もうどうにでもなれ。
—Viewpoint switching—
午後六時、時計台駐車場。
桑元 又吉こと俺はコペンから降りた。今日は同窓会があるからここにやってきたのだ。
服装は何も思い浮かばなかったから青いジャージを着てきた。アハッ☆
「いやそんなの言ってる場合じゃねえって」
「おや、又くんではありませんか」
「......面倒なのが来た」
「ひどい言いようですね。僕はただ、友人を見つけて歩み寄っているだけなのに」
クラスメイトの宝田 稔が黒髪を揺らしながら俺のもとにやってきた。彼の服装はまさかの白いタキシードだった。
こいつは一目惚れしがちだからよく俺がストッパーとして隣にいた。そうしているうちに、ペアとして認知されたという苦い思い出がある。
「お前、まさか二股とかしてねえよな?」
「まさか。そんな最低なことするわけないでしょう」
「だといいんだがな」
「それで、今日は何人が参加予定でしたっけ?」
「えっと、確か……」
俺はスマホのメモ帳を開いた。
・俺 ・宝田 ・中条 ・小村 ・豊沢 ・藤原
・翫 ・福住 ・喜久田 ・池戸
「俺ら含めて十人だな」
「都合が合う人はそれだけでしたか……悲しいですね」
「多くても困るからこれぐらいでいいんだよ」
駐車場を出て、俺らは金沢駅の中にある居酒屋へ向かった。
その間、ずっと宝田はここ最近の勤務内容を語っていた。そういえばコイツ、大手アパレルショップで働いてるんだったな。
「なあ、最初は誰が来るか分かるか?」
「僕には分かります!一番最初はhu」
「こんばんは~」
現れたのは中条だった。彼は高校の男性教師だ。そんな人物がダークブルーのような髪色はどうかと思うが。
服装は……これ部屋着か?なんか動きやすそうな服を着ていた。
「ん、あれ?どうしたの宝田くん」
「いや、なんでもない。ただ恥ずかしさが……」
「……自信満々に言うからだろうが」
宝田は俺の隣で床に崩れ落ちていた。
「ちわぁぁぁぁっす!小村です!」
「うるさ」
「ち、ちょっと小村さん、声量抑えて。ここスタジオじゃないから」
「あ、すいません。つい仕事のノリで」
次にやってきたのはラジオのMCをしている小村だった。てか、スタジオでもこんな調子でやってるのかよ。
彼女は桜を基調とした浴衣を着ていた。手持ちか、レンタルか……。
「……ラジオって今も続いているんだな」
「あ!桑本言ったね!ラジオはさ、災害時に聴ける情報源なんだから!」
「分かったから耳元で叫ぶのはやめてくれ」
「こ、こんばんは~」
今度は女優の豊沢が入ってきた。普通にセンスの良い服装で、カーディガンにフリフリのついたスカートを着ていた。
が、小村の声のせいで俺以外に気付かれなかった。
「こっ、こんばんは~!!」
豊沢は声を張り上げた。女優だからこの一瞬で演技力を感じさせられた。
「お!沢ちゃん!」
「ようこそ、人気女優様」
「お久しぶりだね」
宝田だけやっぱ浮いてるな。性格も、服装も。
(……まだ来てないのかな)
「ん、どうした豊沢」
「う、ううん何でもない!」
「どうもどうも、これウチで作ったフリーズドライ味噌汁」
豊沢が入ってきた十分後、今度は藤原が入ってきた。彼は醤油や味噌を製造する会社に勤めている。だからこうやって会うたびに何かを渡されることが多い。
ちなみに、彼は仕事着でやってきた。マジかよ。
「いいのか?毎回毎回……」
「いいのいいの。ただ評価を聞きたいって言われてて」
「なら、今すぐにでも伝えてあげましょう!店員さん!お湯ありますか!」
宝田は店員を呼び止めてお湯をポッドごともらった。
味は想像を超えていて、めちゃくちゃ美味だった。
「あ、もう始まってる?」
味噌汁を飲み終わった頃、灰色のパーカーを着た翫が入ってきた。至ってフツー。
そのせいで、後ろに控えてる『少女』がめちゃくちゃ目立っていた。
「い、翫……後のは」
「え、ああ気にしないで。彼女、話しかけられるのは苦手だから」
いや気になるよ。なんで黒のゴスロリ服を着た少女がいるんだよ。
「ほら、僕って母方の実家暮らしでさ。祖父母の世話は僕だけじゃ回らなくなってきちゃって……で、雇った」
「雇ったって、おま……簡単に言って」
「お~、めちゃくちゃ可愛いじゃんこの子」
いつの間にか、少女の後ろに福住が立っていた。それに驚いたようで、少女は肩を震わせた。
福住はイラストレーターの女性だ。最近、大仕事を終わらせて高評価を受けていた。そんな彼女はへそをチラ見せする服を着ていた。この参加者の中だったら露出度が一番高い。
「いいねえ、インスピレーションを得られそうだよ」
「……」
「福住さん、この子が怖がってるから」
「ああ、ごめんごめん」
少しずつ詰め寄っていた福住を翫が止めた。確かに、そうでもしないと連れ去ってしまいそうに見えた。
「お、喜久田くん!」
中条が駆け寄った先には喜久田が立っていた。彼は小説家で、期待の新人と言われている。
「………」
「え、似合ってるよ」
「…………」
喜久田は声ではなく身振り手振りで感情を伝える。その感情に気付けるのは中条くらいだ。
ちなみに喜久田はホームズみたいな探偵の服装をしていた。
「……結局、私が最後みたいね」
「お、池戸も来たな。じゃあこれで全員揃ったな」
最後の参加者、池戸もやってきた。彼女は新幹線の運転士で、仕事終わりなのか制服姿だった。
「さあ又くん、乾杯の合図を!」
「俺かよ……じゃあ、今日は目一杯楽しむぞ。乾杯」
「「「「「「「「「 乾 杯 ! 」」」」」」」」」




