7-9
どのタイミングで戦いが始まるのか。セトとトーラは互いに相手の出方を伺っていた。周囲にいるリフィリア王国の兵士たちやギルドの者たちも、息を呑んでその場面を見守る。
本来ならば、仲間としてセトを助けるべきなのかもしれない。だが、この二人の間に割って入れる者などいない。自ずと、この戦いは一対一となった。
先に動いたのはセトだった。鋭い踏み込みで一気にトーラの懐へと迫る。
「甘いな」
トーラの斧が唸りを上げ、セトの剣を正確に受け止める。まるで時間が止まったかのような速さの攻撃だったにも関わらず、それをいとも簡単に防ぐトーラ。ギルドの頂点に立つだけの実力を、嫌というほど見せつけた。
さらに、トーラは斧に雷の魔力を付与する。稲妻が奔り、斧全体を覆うようにして光り輝く。鉄製の剣でこれを受けるのは危険だと悟ったセトは、間髪入れずに間合いを取る。
「ほう、なかなかの判断力だな」
「当然だ。あんたの戦い方くらい、分かりきっている」
二人は長年共に修行してきた戦友だ。互いの癖も手の内も熟知している。だからこそ、この戦いは決して容易には終わらない――誰もがそう確信していた。
攻防の最中、セトが問いかける。
「トーラ、どうしてだ?」
「あ?」
「どうして国を裏切った?」
「決まっている、更なる強さのためだ」
「強さのためだと?」
「そうだ。俺はこんなちっぽけな国での一番で満足するつもりはない」
トーラが強さを求め続けていることは、セトも知っていた。しかし、それが国を裏切る理由になるとは到底納得できない。
だが、トーラはセトに考える余裕すら与えない。
「考え込んでいる暇などないぞ!」
突如、トーラの斧から稲妻が放たれる。セトは即座に身を翻し、その雷撃を回避する。
「お前こそ、この国を守る騎士団で満足しているのか?」
「当然だ」
「ふん、即答かよ。昔からそういうところは変わらないな」
「分かっているなら、わざわざ聞くまでもない」
「そうだな……だが、確認してみたくなっただけだ。そして分かった。これで安心してお前を倒せる!」
トーラの雷撃が一段と激しさを増す。
「団長!」
部下たちは心配するが、セトは落ち着いて盾を構え、雷撃を防ぎ切った。
「やはり、このセトに盾を使わせる相手はお前しかいないらしいな」
「ほう……盾を壊すつもりだったが、やはり簡単にはいかないか」
セトは間髪入れずに反撃する。剣の一撃がトーラに迫るが、トーラもまた斧でそれを防ぐ。二人の激突はまるで嵐のようだった。
「これでどうだ!」
セトの蹴りがトーラの腕を捉えた。その衝撃でトーラは斧を手放してしまう。
「ちっ……」
その隙をセトは見逃さない。トーラの腕を正確に狙い、剣を突き刺す。
「ぐっ……!」
トーラは腕を押さえ、苦痛に顔を歪める。
「その腕では斧を持つことはできまい」
「セト……」
トーラは恨めしそうな目でセトを睨む。
「とどめを刺す前に教えろ。お前に裏切りを唆したのは誰だ?」
トーラは答えない。ただ、笑っていた。




