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光が消えると、ヒロは目の前の状況を疑った。舟堀の街の外に、見たこともない平原が広がっていた。
「え?何これ?」
自分もそうだが、周りにいる人々もこの状況が理解できていない様子だ。
「これはどういう状況なのかな?」
だが、その答えを知る者は誰もいない。ヒロはスマホを確認してみるが、画面には「圏外」の文字が表示されている。当然、誰かに連絡を取る手段もない。
(これって、ラノベでよくある“転生したら異世界”ってやつか?)
自分なりに考えた結論にヒロは内心苦笑した。いや、そもそも死んだわけじゃないから転生でもないか……。もしその設定に倣うなら、街ごと異世界に巻き込まれたって感じか?
「……でも、そんなことが本当に起こるか?」
少しばかり現実逃避をした後、ヒロは我に返る。
「って、現実逃避してる場合じゃないな……」
こんな異常事態に巻き込まれたら、現実逃避したくもなる。けれど、それだけでは状況は変わらない。とにかく情報収集が必要だ。
まず、街の人々から話を聞くべきかもしれないが、皆、目の前の異常な光景に戸惑っている。期待はできそうにない。
ふとヒロは西の方角に目を向けた。自分の知らない街が見える。あそこなら何か手がかりがあるかもしれない。そう考えたヒロは、舟堀の街からその西の街を目指すことにした。
橋を渡る途中、何かがこちらに向かってくるのが見えた。
それは見たこともない生き物と、その背に乗った少女だった。
彼女はヒロには目もくれず、そのまま舟堀の街の方に駆け抜けていく。
「危なっ!」
咄嗟に避けたヒロは、息を整えながら思う。
(あんな生き物を乗りこなすなんて……この世界の人間なのか?)
その姿は、ヒロの知る常識とは大きくかけ離れていた。どうやら、やはりここは自分の世界ではなさそうだ――異世界である可能性が高い。
橋を渡りきると、そこにはRPGゲームに出てきそうな街が広がっていた。
「ここが……」
ヒロは一瞬息を呑む。この状況にあまりにマッチした光景に、かえって現実感を失うような気分だった。
まずは情報を集めなければならないが、気になるのは言葉が通じるかどうかだ。とりあえず、目の前の店らしき建物の前に立っている男性に声をかけてみる。
「こ、こんにちは」
「おう、いらっしゃい!」
――通じた。驚きのあまり、ヒロは固まってしまう。
「……その反応を見るに、どうやらお前さんはこの世界の住人じゃなさそうだな?」
男性はヒロの様子を見て、すぐに見抜いたらしい。このおじさん、ただ者ではない。
「分かるんですか?」
「お前さん、さっき俺と言葉が通じたことに驚いてただろう。それは異界のことを知らない証拠だ。この世界にはな、別世界からやって来る者がいるんだよ」
ヒロは驚きを隠せなかった。この世界では、異世界間の交流が当たり前に存在しているというのか。
おじさんはさらに続ける。
「けど、俺たちの街もどうやらどこか別の世界に飛ばされたらしいんだ。ここがどこかは、まだ分かっちゃいない」
「そうなんですか……」
「ま、ここの場所くらいは教えてやれるさ。ここはリフィリア王国だ。そして、さっきお前さんがいた街――あれは、お前の世界の街なんだな?」
ヒロは頷く。
「そうみたいです。自分の街がそのままこの世界に飛ばされてきたようで……」
「ふむ、それなら騎士団やギルドの連中が調査隊を結成するかもしれんな。とにかく、困ったことがあるなら騎士団の本部に行くといい。何か手助けをしてくれるはずだ」
最後にヒロはおじさんに感謝を述べる。
「色々と教えていただき、ありがとうございます」
「いいってことよ。お前さんが向こうの街について何か知ってたら、また教えてくれな」
親切な態度に助けられたヒロは、教えてもらった情報を頼りに騎士団の本部を目指すことにした。




