1
雪林広宣は、みんなから『ヒロ』と呼ばれている。今、彼は人生の重要な決断を迫られていた。
「さて、どうしたものか・・・」
手元には「不合格」と記された通知書。大学受験に失敗し、浪人生となる未来がほぼ確定したヒロは、これからの進路をどうするか悩んでいた。
「やっぱり、漠然としすぎたかな・・・」
ヒロが通っていた東城高校は地元では一応「進学校」とされているものの、偏差値トップの名門校というわけではない。大学進学率が高めなだけの学校だ。2年生の文理選択では、将来を深く考えず「なんとなく理系」を選び、そのまま受験生活に突入。そして、今に至る。
「将来の目標がないのが一番の問題だよな・・・」
そう考えていると、ヒロのスマホが鳴る。
「もしもし?ああ、ケンさん。うん、わかった。え?今から?了解、行くよ」
電話の相手は部活時代の友人、宮ノ下 健二郎だ。一緒に通う予備校を相談したいと誘いがあった。ちょうど暇を持て余していたヒロは、ケンに会うため舟堀の街に向かうことにした。
「さっきからパトカーが多いな・・・」
舟堀に向かう途中、ヒロはふと気づく。いつもより明らかに多い警察車両。
「事件でもあったのか?まあ、今夜あたりニュースになるかもな」
だが、これがニュースで報じられることはなかった。数時間後に世界改変が起きるとは、ヒロには知る由もない。
舟堀に着き、駅前で待っていると、間もなくケンが現れた。
「よう、ヒロ。お互い大変だな」
「やあ、ケンさん。本当にな・・・」
ヒロが「ケンさん」と呼ぶ友人、宮ノ下健二郎は、部活仲間であり親しい友人の一人だ。ふたりとも4月から浪人生。そんな状況に、ヒロは自嘲気味に笑う。
「身近にこんなに浪人仲間がいると、うちの学校が本当に進学校なのか怪しいよな」
「はは・・・確かに」
「そういえば、今日学校で集まりがあるらしいけど、この後行く?」
「あれ?ヒロ、その話、今日だったっけ?まあ、後で顔出ししてみるか。ジュンにも電話しておくよ」
ケンがジュンに電話をかける。だが、「電波の届かない場所にいる」という自動応答が返ってきた。
「ん?あいつ、どこにいるんだ・・・」
「そういえば、ジュンの家の近くの工場のほうに向かって、パトカーがたくさん走ってたぞ。何か事件があったのかもな」
「例えば、テロとか?」
「まさか~」
冗談半分に笑うふたり。その後も雑談しながら数時間を過ごし、学校の集まりに向かうことにした。
「やべ、店に忘れ物したわ。先に行っててくれ。後で追いかけるから」
「わかった、じゃあ後でな!」
ケンと別れ、ヒロは忘れ物を取りに先ほどの店へ戻る。そして再び駅に向かおうとしたそのとき――
あの光が発生する。
そう、世界改変の光が。




