11-3話 世界を救うのは歌なんだって
はじめは何かわからなかったのですが、会場の上空に現れたのは、どう見てもヒトもしくはそれに類する知性体とは異なる発想にもとづく設計の、6色に輝く6機の飛行体でした。
その飛行体が近づくにつれて会場の客たちはどよめき、騒乱状態になり、一部の霊獣は戦闘モードの大入道に変身したのもいたようです。サーチライトが上下に激しく動く一瞬、貴賓席では、凛々しく空を見上げるプリンスと、手を取り合う木村恵子さんと鳴海和可子さん、きっと懐剣を持っていたら手にしただろう藤堂明音さん、それにきっと会津兼定を持っていたら抜いていただろう関谷久志が見えました。
司会・案内役の霊獣は、みんなを落ち着かせるのに必死です。
「みんな大丈夫、落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて! 会場を包んでいるシールドは、爆弾とか砲弾は通りぬけられないから。あっちが攻撃して来ても…え…何…みんな、今連絡があった、本部から連絡があった、あの編隊は、今日のライブを祝福するために、これも有史以来はじめて、はじめて、はじめて接触するシンギュラリティ越えの人工知性体が、銀河の彼方からわれわれに送ってきたサプライズだ、これはおれも知らなかったけど…とにかく落ち着いて、彼らを歓迎しよう!」
その飛行体はデルタ編隊の形をとって、ヘリコプターぐらいの速さでゆっくりと会場の上を飛びました。先頭の1機ははしばみ色、続く2機はすみれ色とビスク色、そのあとの3機はさくら色・緑色・赤色で、要するに物語部のメンバー6人、嘘レンジャーと同じ色です。
「信じられません、まったく信じられません、しかもその信じられない事件が、我々の眼前において展開されているのであります!」と、司会・案内役の霊獣はこのライブ・コンサートの中で一番興奮していて、どこかで聞いたようなことを言いました。
6機の飛行体は、空から機体と同じ色の、チャフのようなフレアのような、花火のようなものを会場に撒き散らし、発光した小さなそれは、ドーム状のシールドの上にふわりと落ちると、ゆっくり通り抜けて、観客の上に降り積もりました。それは6色の小さな、花の形を模したものだとわかりました。
「きれい…」と、ステージ上の樋浦清さんは言いました。
「そうだよ、わたし信じてた。ヒトも霊獣も宇宙人も、みんな、歌を通せばお互いの心が分かりあえるんだって!」と、相変わらずツッコミビリティが高い松川志展さんは恥ずかしいセリフを口にしました。これはそういう話じゃないんですけど。
そうこうしているうちに、ステージの上手、要するに客席から見て右側から、神であり物語部の顧問であるヤマダと、謎の知性体でありクマのぬいぐるでもあるワカクマ(仮)、それに霊獣図書館の館長が現れました。




