11-4話 超銀河カードと大火力戦と翌日
ステージでお辞儀をしたワカクマ(仮)は軽く話しはじめました。
「どうもみなさんこんにちは。霊獣図書館の利用カードのおかげでゲートが開かれ、あなたたちの世界と私たちがつながることができました。私たちはあなたたちを今まで「可能かもしれない世界?」のひとつに生きる知性体として、カギカッコと疑問符つきで扱っていましたが、今後はリアルな、もしくはリアルとして扱っても問題がない知性体とする、ということで、話がまとまりました。この宇宙の、この地球に住む各種霊獣の代表とも、夜明けまでには交渉が終わる予定です」
霊獣図書館の館長は、大きさも形も普通の図書館の利用カードと変わらない、でもなんか七色に輝くカードを会場の霊獣たちに見せました。
「今後希望者に配布される、この超銀河カードを使えば、超銀河的知性体によって認識され、公開されているすべての情報にアクセスできることになります。さらに、今までのわれわれの1万年に及ぶ歴史は、公的に偽史ではないことになります」
会場は盛り上がります。
「今まで「有史以来」って言ってたのは偽史だったんですか?」と、ぼくは近くに立っていた司会・案内役の霊獣に聞きました。
「いや、そんなことはないですよ? おれたちは嘘は作れないんじゃなかったかな」と、霊獣はいかにも嘘っぽいことを言いました。
上空に浮かんで停止していた6機の飛行体は6方向に分かれて飛び、その後にはドーム(シールド)の周囲から花火が一斉に、ものすごい勢いで打ち上がりました。火力戦です。
「さあ、さあ、さあ、夏の夜は短いぞ、これから最後の盛り上がりだ、改めて今日のゲストバンドに拍手を」
ということでぼくたちはステージを降りたのですが、千鳥紋先輩とヤマダがこう言ったのをぼくは聞き逃しませんでした。
「茶番だわ…この茶番劇の結末はみんなも知っていると思ってたけどな」
「まあまあ。いい映画は結末を知ってても、何度でも楽しめるもんだよ」
最後のバンドの演奏と観客たちは日の出とともにゆっくりとフェードアウトし、気がつくとぼくたちは、ただの見晴らしのいい、灯台の跡だった台がある岬の丘の上にいたのです。楽器と武器はすでに合宿所に戻されていて、ぼくたちの服もステージ衣装ではなく、昨日の夜、霊獣図書館に行ったときの服でした。
ぼくのズボンのポケットには、表面が真っ黒で、裏にぼくの署名がしてある謎のカードがありました。
「あー、このカード、昼間は使えないのか。超銀河カードなのに」と、立花備くんは文句を言いました。
「僕のは使えるよ、ほら」と、紺野陽さんはキラキラ光るカードを備くんに見せびらかしました。
紺野陽さんが霊獣の仲間(というか、早い話がきつね)であることをすでに何らかの方法で知っている物語部とそのサポートメンバーは、別にびっくりしないで普通にうらやましがりました。
この、ヒトに配られたカードが実は呪いのカードだったことは、あとで物語部員たちは知ることになるのです。
*
昨日の残りのカレーを朝食にしたあと(卵にこだわる藤堂明音さんは、いつもの卵焼きは無理なので、人数分のゆで卵を作ってくれました。ちょうどワンパックです)、軽く寝たみんなは二つのグループに分かれました。岬を回ってもう一度大きい海水浴場に行くグループと、だらだら合宿所の前のプライベート・ビーチ(じゃないけど、ほぼ似たようなもの)で遊ぶグループです。
男子はもう、あちらに行ってもいいことは何もないことがわかったので、男子3人と鳴海和可子さん、年野夜見さんが残り、樋浦姉妹・藤堂さん・紺野さん・千鳥先輩、それに松川志展さんが向こうに行きました。藤堂さんは水着で、志展さんは荷物をまとめて普通の服です。志展さんの合宿参加は1日だけで、もうこの日には秋アニメの収録のために、3時間かけて東京のスタジオまで行かなければいけないのです。
樋浦清さんの話では、どうやら昨日のうちに農作業用軽トラックで駅まで送ってもらう話をまとめていた志展さんは、話を聞いて集まった、昨日の5倍ぐらいの人の声援を受けて、その全員と握手したり写真を撮ったりしたそうです。このあたりでは志展さんが声をやる秋アニメは放映されない予定なんですが、いろいろ合法的な手段で、ネットで見ることができるそうです。
合宿所の周辺に残ったグループは、入浴したあと(またしてもぼくたちが遊んでいる間にヤマダが風呂周辺のあれこれをやって、一番最初に風呂に入っていました)、ヤマダが運転するマイクロバスで近くのショッピングモールのフードコートに行き昼食を取ったあと、花火を買いました。
午睡をして起きて、とてもきれいな夕景を見ながら、主に備くんが焼いてみんなが食べるバーベキュー・パーティーをして、花火を両手持ちしてはしゃぎ回ったぼくたちですが(いくらバカな男子でも、花火は人に向けたりはしないのです)、清さんと藤堂さんは線香花火に火をつけて、こんな会話をしてました。
「なんかこうしてると、もうわたしたちの夏休み、終わっちゃったみたいな気分になるね…」
「何言ってるんだよ、清、私たちの夏休みはこれからだろ。7月中に学校の課題全部片付けて、それから予備校の国立文系特別夏期コース、前期・後期とも申し込んだじゃないか」
なんで藤堂さんは美人で料理も得意なのに、こんなに勉強が好きなんでしょうか。中間テストも期末テストも学年1位だったのに、ぶっちぎりの1位じゃなかったのが不満だったのです。
なお清さんは、単に藤堂さんの家のプリンに釣られて、付き合うことになっただけです。




