11-5話 デューイ十進分類法? そういうのもあることはありますね
ぼくたちはまた夜中にヤマダに叩き起こされました。滅茶苦茶に不規則な睡眠時間で体調を崩しそうなんですが、霊獣図書館は夜にならないと開館しないので仕方ないのです。
今度は図書館利用カードも含む超銀河カードで、娯楽室というか卓球台が置いてある一階の部屋の片隅に、抜け穴を作って簡単に霊獣図書館に行くことができました。このパワーアップしたカードは、宇宙のどこへでも、どの時代へも理論上は行けるらしいんですが、セキュリティ上の問題でヒトや霊獣には制限がある、と、神であるヤマダは言いました。ヤマダは神なので、そのようなカードがなくてもどこにでもいける、との話です。
合宿がただの合宿でも音楽合宿でもなく、物語部の強化合宿だったというのは、その夜に改めて知りました。
「すでにお分かりの通り、この図書館を管理している霊獣には、リアルと物語の区別が、ヒトほどうまくはつかないんで、だいたいは利用者が利用しやすいように整理をしています」と、館長は物語部員の6人と顧問のヤマダに説明しました。サポートメンバーは好きなことしていい、って言われたので、図書館員の豆霊獣(というか豆だぬきなんですが)の案内で、好きなことしているはずです。
「要するに、ヒトの世界のスタンダードである国際十進分類法は、霊獣の世界では一般的ではないんです。それの元になったデューイ十進分類法、及びそれを日本的に使えるようにした日本十進分類法は、たとえば植物学・動物学が生物科学の下位部門なのに上位の数字が当ててあったり、情報科学系がごちゃごちゃになってたり、様々な問題があるはずです。そもそもあれ、十進ではなくて単に生物学で言えばリンネの生物分類表を図書に応用した、部門・区分的分類表で、たとえば数字の0から9ではなく、アルファベットや50音にしても問題なく使えます」
「まあ確かに、そういう考えもあるわね。たとえば井伊直虎の本みたいに、誰が書いたか、というより、誰について書かれた本なのか、で整理されていたほうが、置かれる棚としては納得するわ」と、学校で図書委員もやっている千鳥紋さんが言いました。
「そうなんです。司馬遼太郎や松本清張みたいな大作家を除くと、多くの図書館利用者はリアルと物語の区別をあまり考えないで、なんか関ヶ原の戦いの本読みたいなあ、みたいな感じになりますよね。それはヒトも霊獣も同じです。あと、バーチャル本が便利なのは、複本がたやすく作れることです。ちょっとやってみましょう」と、館長は皮のように見える手袋をつけました。
「この、霊獣の手袋を使って、たとえばサンプルとして『老人と海』を撫でるとですね、ひとつの本がふたつになります。で、この『老人と海』は、老人と海と釣りとヘミングウェイの棚に置けます。こう、重ねるとまたひとつの本になります。みなさんもちょっとやってみてください。各人にお渡しします」と、ぼくたちはどうも違和感のある手袋を受け取りました。
「これ…小指のところがむき出しなんですね」と、年野夜見さんは言いました。
「どうも霊獣、っていうかはっきり言ってたぬきなんですが、は、進化のある段階でさまざまな事情があったのか4本指なんですよねえ。古来より霊獣、というかまあきつねの楽器とされている三味線も、そもそもは4本指で扱えるようになっています」
「マジで!?」と、立花備くんは今どきの若者らしく言いました。
「われわれは、そんなわけでつい最近までは4進法を使ってました。日本のヒトが尺貫法を使っていたのと同じ理由ですね。たとえば素数は1、3、11、13、というふうになり、完全数は12、130、のようになります。数を数として扱う分には、何の問題もないわけです」
どうも納得いかないらしい樋浦遊久さんは首をひねっています。
「われわれの図書分類法は、ヒトの世界ではランガナタンが提唱したファセット分類法に近いものを採用してます。多面的に解釈できるものはなるべくそれに対応するわけですね。だから複本がやたら増え、場所がやたらといることにはなります。まず、われわれは大きく図書を天・地・人に分け、さらに下分類の属性として火・水・木・金・土・風、そしてその下に必要な場合は日・月という属性も添付して分類します」
館長の話はまだまだ続くのです。




