7-4話 物語部の人数調整と、千鳥紋のひとり&ふたり語り
「ところで、物語部っていつも3年生がひとり、2年生がふたり、1年生が3人なんですね。どうしてですか」と、立花備は前にも聞いたようなことを聞いた。
「それは、部員同士が殺し合う設定だからよ」
「というのは嘘で、転校したり生徒会からスカウトされたりするんだ」と、樋浦遊久は説明した。
「俺が1年生のときのメンバーのひとりが今の生徒会長、石川小百合で、彼女は2年のときに生徒会副会長だったんだ。もうひとりいた男子部員は、3年生になる前の春、趣味でイタリアに留学することにして、この高校からいなくなった」
「生徒会長ってまあ、名誉職みたいなもので、実際には副会長と会計と書記が実務をやってるのよね。で、今の副会長で、上半身脱ぐのが大好きな変態のオカモトが1年生のときには物語部員だったの。好きだったアニメは「スクライド」で、戦う物語を作るのがうまかったわ」と、私も説明した。
「58493の可能な未来と過去で、オカモトと備くんはだいたい戦わなければならない設定なのね」
「ちょっと待ってください。そ、その数字って何か意味あるんですか?」
私はスマホの電卓アプリでその数字を出し、29で割ってみせた。
「ほら、58493割る29は2017。人でありながらかつては太陽でもあった神の末裔による、一大島国の統治の年数と、神であり神の子でもあるものを起源にしている世界基準の年数が、どちらも素数であることに、世界の意味がないわけないじゃない」
ということで、この話は2017年のことなのだった。
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学校から歩いていける距離のところに、縄文時代には離れ小島であり、古墳文化時代には古墳であり、ヒトとヒトでないものとの関係が薄れてからは神社となった、森で囲まれた丘があった。神社は農作業車用の狭い道路に南面して建ち、私は境内にあがる石段の一番上のところに腰をかけて、監督の「何も考えないで空を見ていて」という指示にしたがって、ぼんやりとひとりで空を流れる、夏の雲よりは密度は薄いが、明らかに春の雲とは違う初夏の雲を眺めていた。
しかし何も考えないというのは難しいことなので、私(白)は、自分のキャラ設定についてもう少し考えてみることにした。分裂した私(黒)は、私(白)の左どなりにすわって、あたたかな憎悪に包まれていたが、それはもはや私(白)にとっては祝日の日章旗のようにありふれたものでしかなかった。私(白)は両手で胸の中央を押さえた。そこが私(白)の心臓のある場所で、私(黒)が仮のデータ保存にしている場所だった。
まず考えなければならないのは、私(白)が、備くんに対してどういう感情を持っているか、という設定だ。しかしこの物語は、別に備くんのハーレムアニメではないし(彼自身はそう勘違いしているようだが)、ジャンル「恋愛小説」に属する物語でもないので、愛とか恋とかではない。何となく、彼を応援しているという立ち位置ですかね。
「雲ふたつ合はむとしてはまた遠く、分れて消えぬ春の青空。若山牧水の句だな。まあこれは、桜の季節の句だが」と、私(黒)は言った。
私たち(白と黒)は何をしているかというと、紺野陽という、本体は妖狐でここでの姿は金髪ツインテールの女の子の帰りを待っていた。部室が消臭剤の、偽のバラの香りで満たされたのはゴールデンウィーク前のことで、彼女がやって来たのはその後のことだったが、やはりそういう人工の香りが嫌いなのか、ときどきは、というよりむしろしばしば、備くんに会うためと、さまざまな理由で物語部の部室にやって来るが、あまり長居はしないし、ふたりきりで話すこともできないのが困る。
今のところ、ハルちゃんはこの神社の社務所を一部改造して、そこを住処にしており、例によって超高速で移動するついでにコンビニで買ってきた稲荷巻きを口に加えていた彼女は、階段に腰掛けていた私(黒)の顔を見ると、罠にはまった狐のような顔で驚いた。
「やあ、犯人」と、私(黒)はあいさつした。




