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じゅんけいさん。  作者: ジョウビタキ子


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祖父の命日に


「あ、じいちゃんの命日、今日だよ」


「おう。今日か〜」



我が家はここらあたりが

アバウトです。


かっちりするより

思い出したタイミングで行動する。


そんな感じです。


なので、

思い出した今、

母はお花を買いに行き、

父は水や掃除道具を用意しています。



祖父は

口数の少ない人でしたが

地域の人たちには

なんとなく一目置かれていたようで

怖がられていたり

頼りにされていたり

そんなイメージを持たれていた感じがします。


孫の私から見た祖父は

厳しくて

優しくて

お酒が入るとよく笑う。


お茶目なじいちゃん


そんな存在でしたね。



「気をつけて行けよ〜」

毎日毎朝言ってくれましたね。


「ムカゴ、食べてみぃ」

そこら辺でプチっと採った

よくわからない実を生で食べさせられました。

美味しくなかったです。


「かっ かっ かっ。孫〜、踊ってみぃ」

幼少期はよく踊らされましたね。


「警察にな〜、止められたけどな〜、シートベルト、すっと手で持ったからな〜、お咎めなしだったぞ〜。かっ かっ。あれは〜、手を離したら、シートベルトしてないのバレてたな〜」

この話をするじいちゃん、好きでした。


仕事一色。

家族第一。

酒は水。


大事なところは決めるけれど

それ以外は口出ししない祖父が

初めて想いを口にしたのは

曽祖母のお葬式の日でした。


送り出した後の宴会で

ベロベロに酔って

カラカラ笑って

家族全員が涙ではなく笑い合っていたあの瞬間、


「これこれ〜、コレがいい。笑って楽しんだ方が、逝った人も安心する。こんな日はなぁ〜、こうやって馬鹿やって、笑うがぞ〜?かっ かっ かっ」


この光景と言葉が

今でも映像として焼き付いています。





そんな祖父が旅立って数年。


「じゅんけい〜!」


父が隣のハウスの人に呼ばれましたね。

あれはあだ名です。

意外としっくりきて似合っています。


一家の家長となった父は

祖父とは違う形で

地域の人に頼りにされています。


祖父とは違う笑い方で

意地悪や冗談も言いながら

仕事を頑張る父。


そんな父が

墓の周りを見て「草が生えてるな〜」と

気になっているようです。



「…刈ろうか?」



娘が挙手をすると、

倉庫から草刈機が出てきました。


初手のエンジンは、父が手際よくかけます。


娘は肩ベルトをかけ、

草刈機をガシッと掴んで

ズンズンと雑草の方へ向かいました。




ぶぅううううううううういいいいいいうううっっぅうう

ぶぶぶぃいいいいいいいいいいぅぅうううういいいいい

ぶぃいぶぃいいいいいいうううういいいぅううぶぶぃい




爆音の草刈機の音が響き渡ります。


墓の周りだけ


少しだけ


簡単に済ます


その予定だったのですが


雑草がどこまでも続いているので


気になって気になって


どんどん刈り進める娘。


墓の辺りは終わったので


次は下の柿の木のあたりにも向かいます。


梅の木の下も刈ります。


お次はハウスの横


少し足を伸ばして道ぶちも。


ここら辺りでハッとします。





私は何をしてるんだ…





腕がすごく疲れています。


両手もビリビリ痺れています。


何より日が傾いています。


チラッと墓の方を見ると


コンクリの段に腰掛けてこちらを見ている父。


花を活け終わって呆れている様子の母。





やってしまった。





小一時間経っています。


やり過ぎました。


エンジンをそっと切って


トコトコと墓へ戻ります。


何事もなかったかのように


草刈機を父へ返す娘。


そんな娘に父が


「刈りだしたら止まらないなぁ〜サンキュ〜」


とニヤニヤして言ってきます。


自分の仕事が減るので


娘を放置していたんだと思います。


母からは


「お墓参りって言ってたでしょー?

 お花も買ってきたのにー!

 ホラ、手を合わせて、帰るよー!」


と、待ちくたびれたお小言が飛んできます。


ヘラリっと笑って


お墓の前で手を合わせた娘。




じいちゃん

今年もきゅうりは無事に終わりました

お米もたぶん採れます

歴代の番犬達と

お空で酒盛りしててください




毎回

こんなことを考えながら

手を合わせています。


でも今回は

じいちゃんに

どうしても伝えておかなければいけない事が

もう一個あります。




じいちゃん…

今年はじいちゃんの大好きだった

リポビタンは供えません

焼酎だけにします

じいちゃん…

じいちゃんが好きだった

焼酎のリポビタン割りは

絶対飲んではいけないと

人工知能AIが言っていましたよ?

なーにしてたんですか?

めちゃくちゃ飲んでましたよね?

もう、お預けです

焼酎だけで楽しんでください




焼酎をリポビタンで割っていた

あの光景が焼き付いていたので

気になった娘が検索した結果を

じいちゃんへ報告しました。


良い子は真似してはいけない代物だったようです。


じいちゃん

リポビタンをお預けしたからといって

化けては出ないでください。

娘はオバケは嫌いです。




「帰るぞ〜!」


「あーい」









じいちゃんの踏みしめていた場所は

今は父が踏みしめています。


何の変わり映えもしない風景。


自然しかない田舎。


風に乗って流れてくる季節ごとの空気も

なんら変わらず幼い頃のままです。


のどか


こんな日常が

そこそこ平和に続くといいなと

そう、思います。


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