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じゅんけいさん。  作者: ジョウビタキ子


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保冷剤を背負って


お米を収穫します。


あっついです。


どこにいても、あっついです。


田んぼの周りに日陰はないので


どう足掻いてもあっついです。


唯一の休憩スポットは


軽トラの中です。


エンジン着けっぱなしで


クーラーを回します。


今日だけは許してください。


あっついんです。


太陽からの熱と


地面からの熱でサンドイッチされて


オーブントースターの中のイメージですね。


温風の流れる


オーブントースターの中で


お米を収穫するんです。


もう…


人間の適応外の環境ですが、


娘は


鎌を持って


張り切っています。






もうすでに汗が流れていますが

背中のリュックの中には保冷剤が入っているので

その冷気を背中に感じながら田んぼに突入です。


コンバインがスムーズに進めるように

田んぼの四隅の稲を人間が刈ります。


ここを刈っておくと

コンバインが稲を踏むことなく

右や左に曲がりやすくなるんです。


なので

稲刈り用の

刃のギザギザしている鎌で

ザクッ ザクッと刈ります。





楽しい





暑いですけれど

動いていいので

元気に機嫌良く稲を刈る娘。


汗はすごく出ます。


顔も真っ赤になります。


日焼け止めも化粧もしているのに

この時ばかりは

真っ赤っかですね。


それほど、稲刈りの時期は暑いです。


一度だけ熱中症になりかけた事もありましたが

最近は割と平気になりました。


ちゃんと水分補給して

保冷剤で冷やして

おやつも食べて

軽トラのクーラーに当たって

上手いこと自分を操れば

なんとかなるものです。


その暑さの中でも

楽しいと思えるのは

収穫の喜びが味わえるからでしょうか。





ザクッと刈り取った稲の穂の束


垂れ下がった穂先のわずかな重み


この穂の中に白いお米が入っているのだと


この重さが教えてくれます





コンバインが刈り残した稲穂は

娘と母が拾ったり

刈り取ったりして集めます。


ちりも積もればなんとやらです。


よくよく見て拾えば

おにぎり一個分以上は

集まっていると思います。


コレも大事な作業です。







ぴ ぴ ぴ ぴーーーーーーーっ






あ、

コンバインの中がいっぱいになりましたね。


コンバインの中が籾でいっぱいになったら

軽トラックに移して

軽トラックから乾燥機へ移します。


軽トラックで

田んぼから乾燥機まで往復するのは

母の担当です。


娘は

軽トラックをあまり運転したくありません。

MT車なので。


コンバインを操作している父と

田んぼで稲刈りを続けます。


田んぼの端っこから稲を刈り込んでいくので

残りは中心あたりだけですね。


なので今、

娘の役目はありません。


フリータイムです。


なので例の如く

キョロキョロしています。





畔のあたりには黄色い花が咲いています。

(可愛いねぇ)


バッタやカエルが逃げ惑っています。

(騒がせてすまないねぇ)


鳥が次々と舞い降りて来ています。

(今日は満腹コースだねぇ)


観察に事欠かない田んぼで

遠くばかり見ていた娘ですが、

意外と見ていなかった足元で

何かがゴソリと動きます。




「……カニ!!!」




刈り取られた田んぼの中に

大きなカニがいました。


とても怒っていますね。


コンバインに踏まれないよう

移動させてあげたいですが

チョキの手を大きく上げて

威嚇モードです。


手袋はしていますが

怖いですね…


掴めたとしても

脚と手を動かされたら

叫んで落としてしまうでしょう。



「……何か長い棒ないかな…」



少し迷った挙句、

鎌でちょいちょいしました。





こうして毎年、

お米の収穫をしていると

米一粒の大切さが毎回頭をよぎりますが、


「お米一粒の中には神様が7人いる」


という言葉の前に


「じいちゃんの作ったお米だから、残したらダメ!」


で、育った娘。



食に関しては

母をかなり悩ませたそうですが、


『じいちゃんのお米』


という言葉で

お茶碗にご飯粒は残さなくなったとか。


大好きなじいちゃんのお米なら

残すわけにはいかない

そう思った記憶は

薄っすらと残っています。


そしてこの後に、

『お米一粒に7人の神様』

の知識が入って来たのですが…


お米一粒をじっと見つめて

思ったことがあります。




この中に…

神様が7人も入れるの?

狭くないのかな?

信じられない。

ムギュムギュしてそう

押し合いっこして

喧嘩にならない?

それより…

じいちゃんが作ったお米なのに

どうして

神様がいるの?

じいちゃんの

お米なのに…




当時、

じいちゃんのお米という感覚で生きていた娘は

じいちゃんのお米を神様に取られてしまったような

そんな気分になっていましたね。


妙なところで頑固でしたから

お米の中の神様を妄想しつつも

心の片隅ではずっと

じいちゃんのお米なのだと

反論していたように思います。



今は、

お米一粒の中の7人の神様を

上手に妄想できるようになりましたが、




「じいちゃんの作ったお米」




この言葉の方が、

娘にはよく響きました。










ちなみに

新米だよ。と出されても

古米だよ。と出されても

娘はどっちがどっちか分かりません。


美味しいの範囲が広いようです。


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