ボーナス
きゅうりの作業に追われている毎日ですが、
時々イレギュラーな事が発生します。
「あれは〜どこ行ったかね〜?」
祖母です。
物を無くして彷徨っています。
時々ありますね。
足腰の弱っている祖母ですので、
父がよく探してあげていますが、
今回はなかなか見つからないようです。
父も忙しいので
早急にこれを解決したい時は
「手伝ってくれ〜!」
とお呼び出しがかかります。
すると母が、
「見つけた人はボーナスね!一万円!」
と言い始めるのです。
娘は呆れて乾いた笑いが出ます。
そんな…
お金で釣られて探すだなんて…
「探します!」
積極的に手を挙げました。
冗談だと分かっていても、目の色は変わります。
荷詰めの手袋を素早く外して、
祖母の部屋へ早歩きで向かいます。
しかし、結果は空振りです。
仕事もしなくてはいけないので、
翌日へ持ち越しとなりました。
そして翌日。
「あった!」
自主的に探していた娘。
やっとなくし物を発見しました。
「あったか〜」
父も、もう探さなくていい、と
ホッとしています。
さてさてそれでは、
「娘が見つけました!ボーナス下さい!」
元気に手を差し出します。
貰えないとは分かっていますが、
ものは試しです。
言って損はありません。
父は少し考えた後、
「あぁ〜。ボーナスか〜。ちょっと待ってて」
と、思い出したように取りに行ってくれました。
え?
もらえるの?
いざ貰えるとなると、断りたくなります。
本当に貰うつもりはなかったんです。
なくし物を見つけただけで一万円?
いいの?
なんだか悪いことをしたような
変な気持ちで待っていると、
ザリッ ザリッと、父が戻ってきました。
ダメだ。
やっぱり良くない気がする。
要らないと断ろう。
そう決めて父を見ると、
なんだか薄っすら笑っています。
「お待たせしました〜。はい、ボーナス!」
ズイズイっと
娘の手に押し付けるように渡してくる父。
「え?……ナス?と、棒??なにこれ?」
娘の左手にはナス
右手には棒が乗っています。
何が起こったのか分からない娘は、
困惑して父を見返します。
ニヤニヤニヤ〜
すっごくニヤニヤしてます。
「何コレ?!ねぇ!何コレ?!」
訳が分からないままニヤニヤされ、
娘は声が大きくなります。
そんな娘の反応を楽しみながら、
父は人差し指をスッとだして
「こっちから読むと〜?」
と、棒を指差しました。
「こっちから?棒?」
「まだ分からんか?こっちから読むと〜棒〜…」
棒で言葉を止めて、
人差し指をスッ…とナスへ移動させた父。
「棒…ナス?」
「そうです〜!」
棒とナス?
なに?
棒?ナス?
ぼう…ナス…?
ぼうなす………ぼーなす…
「ボーナス?!?!なっ!もうっ!もぅーーー!!」
娘の叫び声が作業場に響きます。
ケラケラ笑う父。
娘は
棒もナスも放り投げたい衝動に駆られています。
「持って帰っていいぞ〜」
満足した父は、休憩をする椅子に座りに向かっています。
その背中に向かってワーワー言う娘。
「棒はいらない!ナスだけもらう!」
腹が立ったのはすぐ治りましたが、
家に帰ると全力でナスを調理して
食べてやりました。
ナスは何も悪くないですが、
たまに揶揄われたのを思い出します。




