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じゅんけいさん。  作者: ジョウビタキ子


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バックオーライ


冬の間眠っている田んぼを起こすのは

もっぱら父の役目です。


トラクターに乗り込んで

田んぼの中の土を耕します。


トラクターの通った後は

土がふかふかですね。



鳥がいっぱい…。



トラクターで掘り起こされた土を

たくさんの鳥が啄んでいます。



「娘〜!来て〜!」



呼ばれました。

娘は今日、初めてトラクターを動かします。


あのでっかい乗り物を

無事に動かせるのでしょうか。





不安です。





トラクターに乗り込むと、

父からのレクチャーが始まります。

大声です。

トラクターの音がすごいので、

大声で話さないと聞こえないんです。




「ここが〜ブレーキ。ここでも止まる」

(とりあえず止め方を最優先に教えてきますね。

 分かります。そこが1番大事です)


「ここで〜スピードアップ。こっちにしたら〜遅くなる」

(このウサギとカメのイラストはそういう意味か…

 まさかイラスト付きとは)


「はい。進んで〜」

(!?)

「はい。進んでくださ〜い」

(………)





実際に娘にやらせてみようとしています。

椅子に娘が座ると、横の空いたスペースに立った父。


娘は無表情でハンドルを握りしめました。


不安な上に急に始まったので、

感情が追いついていません。




「はい、そのまま進んで〜そのまま進んで〜」

(このまま行くと…畔にぶつかりますが…)


「はい、そのまま〜……、はい!ここでハンドルきって!」

(!?)



娘の意思に反してハンドルが回ります。


隣の父がハンドルを回しているんです。




「こうやってハンドルきったら、勝手に後ろが上がるから〜、トラクターがUターンしたら〜、ここのボタン押して〜また真っ直ぐ進む〜。次は娘がハンドル動かせ〜!」

(!?!?)




スパルタめ!

娘の不安をフル無視して、どんどんやらせてきます。

職人モードの父。

たまに嫌いになります。




「はい。上手にできました〜。端っこは俺がするから、あそこまでできたらエンジン止めといて〜。じゃ、あとはよろしく〜」



とりあえず娘がトラクターを動かせているので、

父は別の仕事へ向かいます。

エンジン音がすごいので文句も届きません。

目だけで訴えますが、ヘラヘラ笑って行ってしまいました。




1人残され、

娘は心臓がバクバクしています。


とりあえず、真っ直ぐ進んでUターン。

それの繰り返しです。


(やるか…)


トラクターの轟音をBGMに、娘は頑張りました。













小一時間後。


「ははは!バックできたか〜!」


用事を済ませて帰ってきた父が爆笑しています。


娘は父から言われた場所を耕し終えたので

端っこを耕していたんです。


端っこを耕すためには

バックしなければいけません。


そう、前進だけではできないんです。


父が大笑いしているのは、

トラクターに乗った娘がバックしていたからです。



「教えてないのに〜!」



はい。

教えてもらっていないバックを勝手にしていたんです。


しょうがない。

探したらバックの切り替えがあったんだから。


ウサギとカメのイラストがあったくらいです。

よくよく探せば

バックのギアがどこにあるか分かります。


やるしかないでしょう。



父は、

不安そうにしていた娘が

ケロッとバックをしているのを見て

面白かったんでしょうね。


この後、しばらく笑っていました。



娘はというと、

トラクターが意外と楽しかったです。


豪快な音と共に進むトラクター。

ただただ乗り続け、時々ハンドルを回す単純作業。

ふかふかに耕される土。



(いい感じ〜)



父に腹を立てていた気持ちも、

田んぼの土のように柔らかくなりました。



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