24 ギルとヒロシ-(3)
ヒロシは刀を持ち刃先をギルに向ける。
再度精神統一をする、全身の魔力を纏うように、全力でギルの言葉に答えれるように。
「じゃいくよ!行くからね!」
「うだうだいってねぇでさっさと来い!」
ヒロシは走りだし、その勢いのまま刀を降り下ろす。
ギルはヒロシ刀を真っ向から受け止める。
刀を弾き、今度はギルが鎌を降り下ろした。
当たる寸前のところで鎌をよけて、ヒロシは突きを繰り出した。
ギルに突き刺さるが、ギルの上着にささっただけであった。
近距離での戦い、言葉の通りこれは死闘と呼ぶに相応しかった。
ギルは鎌を振るえないため一度距離を取る。
「ヒロシ!やればできるじゃないか!」
「ずっと見てたんだろ!」
二人は言葉を紡ぎながら斬りあう。
「この世界のお陰で初めて強くなれた気がしたんだよ!それをさ!消すって言ったり!逃避だって言ったり!」
「まったくあの時の甘ったれとは思えないな」
「死神って本当に意味不明だよ!」
「はっ、言ってくれる」
ヒロシは体力の限界を迎えていた。
息があがり魔素がなくなってきているせいか身体のだるさを感じる。
身体は辛うじて寸前のところでよけてはいるが小さな生傷が増えていった。
「ギル終わりにしよう!この一週間楽しかったよ」
「そうだな、楽しめたのなら良かったな。忘れんなよ!」
ヒロシは最後に息を整える、エラのとき感じた感覚。
目をつぶり刀を鞘に戻す。
「ヒロシいくぞ!これで最後だ!」
ギルは走りだし、鎌を振りかぶりヒロシに降り下ろす。
ヒロシは最小限の動きでよけ、鞘に滑らすように刀を抜いた。
その時、確かな手応えがあった。
「ギル…」
ギルは口から血を吐き出し。
黒いスーツは赤黒く染まっている。
「ヒロシ、本当に...成長したな」
ヒロシは思わず駆け寄る。
「お前は...ここに...くるべき人...じゃない。ここは...本当の..世界じゃないんだ」
血が噴き出しているなか、苦しそうにギルは言葉を紡ぐ。
「ギル…?」
「ヒロ...シ、死にたくない、その思い...忘れんな」
「何を…」
「もがけよ、諦めるな」
ギルはそういいながら、俺がつけているネックレスに手を伸ばし、つかんで小さくなにかを唱えると、ネックレスが光輝いた。
光に照らされた俺は意識を失った。
○ ○ ○
真っ白な世界が広がっている。
「ここはどこだろ?…眩しいな、ギルはあのあとやっぱり死んじゃったのかな....」
ヒロシの手に残る斬ったときの感覚。
まだ残っている。
そう思っていると遠くのほうから声が聞こえる。
聞いたことある声....
「これは歌かな?なんだか懐かしい。」
ヒロシは歌声に導かれるように歩いていく。
「リン…」
もしかしたらと思い、ヒロシはだんだんと早歩きになる。
視界は真っ白だ。それでも急き立てられるように、ヒロシは走りだした。
歌声も鮮明に聞こえてくる。
やがて光に終わりが見えた。
「これは…」
全ての始まりの、魔導書がぽつりと空に浮かんでいる。
ヒロシはおもむろにそれを手に取った。
ページが勝手にめくられ光り出す。
読めなかったはずの文字が変化していく。
" 生 き た い "
あの時の声が聞こえる。そうだった。この言葉を口にして、ギルと出会い、フローディアへ行くことになった。
そしてそれはやっとヒロシの耳に届いた。
『 目 覚 め て 』
ーー目覚めて、ヒロシーー




