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22 ギルとヒロシ-(1)

 

「よっ!!ヒロシ!つよくなれたか?」


 目の前に現れたギルはいつもの黒いスーツに身を包み、まるで親戚のおじちゃんのような軽い挨拶をしてくる。


「ギル!急に現れるのやめてよ!今こっちで出会った人とお別れ会してたんだよ!邪魔しないでよ!」


「ほぉ!こっち出会った人ね?それはどこにいるんだい?」


 ギルはわざとらしく辺りをキョロキョロと見渡す。


「ギルなにを言ってるの?いままでここにいたじゃないか?」


 ヒロシは周りを見渡す。


「アンナさんにブラドさん、それにピコ、どこにいったの?」


 周りには誰もいなかった。

 ただ真っ黒な闇が広がっている。


「ギルまたなにかやったね?あの人たちはなにもやってないんだ!返してよ!」


「俺はなにもしてないぞ?そう、最初から最後までなんもやってない」


 ヒロシは困惑する。


「ヒロシ?強さは学べたか?」


 ギルは意地悪く問う。


「どういうこと?強さはすこしわかった気がするよ!ギルに連れ去られて、この世界に来て良かったと思う」


 ヒロシの必死さはギルに届かない。


「それで?」


「こっちにきて、レイラさんとエラっていう姉妹に出会って稽古つけてもらったんだよ!前よりだいぶ強くなったと思う!」


「ふーん?」


「それに火の玉と肉体強化の魔法も使えるようになったんだよ?俺はこの世界でも生き残れるようになったんだ!」


「そうか!それは良かったな!ところで魔法はどうやって覚えたんだ?」


「川辺にたまたま祠があって、そこに女神様がいたんだよ!その人から教えてもらったんだ!」


「ほう!そうなのか?それはこんな感じだったか?」


「ヒロシ、あなたに力を授けます」


 ギルからあの時聞いた女神と同じ声が聞こえた。


「夢を壊してすまんな、あれは俺なんだよ。俺がお前に力を与えた。まさかここまで使えるとは思っても見なかったがな」


 ヒロシが絶句しているのを愉快そうに眺めながらギルは話を続ける。


「お前にあげた、ペンダントあっただろ?あれでお前の姿は見ていたんだ」


「なんで?なんでそんなことするの?」


「まぁ親心みたいなものだ、死なれても困るしな」


 ヒロシは絶句する。


「俺がお前にしたことと言えばそれくらいだ。あとはヒロシ自分の力で乗り越えてきたんだよ」


「…そうだよ…俺頑張ったんだよ…」


「前の世界と比べてどうだ?まだ報復したいと考えるか?」


「……」


「相手にしてくれなかったクラスメイトたちにやり返したかったんだよな?」


 ギルは言い連ねる。


「ちょっと充実して、ひとりじゃなくなったらどうでも良くなるような気持ちだったのか?」


 ヒロシは食いしばる。


「お前の願いはその程度なのか?」


「クラスの人なんてもうどうでもいいよ!俺は1人が嫌だったんだ!寂しくて、孤独だっだ!もう嫌だよ!俺はこの世界が居心地いいよ!エラやレイラさんと一緒に冒険者となって旅したいよ」


 力の限り叫んだヒロシはぜえぜえと肩で息をする。


 それを眺めるギルの目線は冷たい。


「やっぱりお前はそう思ってしまったか。そうやってお前は逃げるんだな」


「逃げる…?ギルの言っている意味がわかんないよ!」


「元の世界に何のケジメもつけないのか?お前の決断は逃げているだけじゃないのか?」


「元の世界?そんなの....覚えて.....あれ?思い出せない」


「家族のことも.....あれ?なんで!?」


「思い出せないか?親や友達、大切な人達のこと」


「思い出も全部忘れたか?」


「ただのど忘れしただけだよ.....」


「そうだな。忘れてるんじゃない、都合よく忘れてたいだけだからな」


「そんなことないよ!」


「お前は本当に強くなったのか?弱い自分を捨てられたと思ったのか?」


「ギルわかんないよ....もうわかんないよ!」


「そっか、またそうやって逃げるんだな。…お前は変わらないな。それじゃ仕方ないな」


「何言ってるんだ」


「お前がこの世界で大事にしていた人を皆殺しにしようかな。あいつらのせいでお前は成長しなかった。お前は悪くないよ」


「ギル?本気じゃないよね?やめてよ!!あの人たちは関係ないよ!」


「俺は冗談は言わない。本気だ。お前を余計弱くさせたのはあいつらだ。罪を償ってもらわないとな」


「ギル!いい加減にしないと俺も怒るよ!?」


「そうだな。お前が俺を止めないと大事な人達が死ぬぞ?どうするヒロシ?俺を止めるか?」


 ヒロシは手元にあった刀を抜き、ギルに刃先を向ける。

 向けた刃先は震えで小刻みに揺れていた。


「それがお前の答えなんだな?一度抜いたらあとには引けないぞ?」


「わかってるよ!それでも守りたい。俺はあんたを止める」



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