20 成長したヒロシ
「新しい服も手に入れたし、修行いきましょうか」
レイラがそのままの流れで提案した。
ヒロシは少し部屋を掃除していたが、別れをいうタイミングを見つけるため、素直に従う。
「そうですね。今日はなにをするんですか?」
レイラはニヤリと笑う。
「ひみつよ!!」
相変わらずだなぁと思うが、この二人にはいろいろお世話になった。
この二人に会わなければ確実に死んでいた。
エラとレイラには本当に感謝していた。
いつものごとく原っぱを抜け、いつもの修行をしていた場所についた。
「ヒロシくんは最初の頃よりだいぶましになったわ。それでも弱いけどね」
前半の褒め言葉に浮かれそうになったヒロシにしっかりとレイラは釘を刺すことを忘れない。
「だから今回はエラと模擬戦をしてもらいます。武器はこれを使って!」
そういって、レイラは木刀のようなものを投げて渡す。
エラは素手で戦うようだ。
「エラは武器使わないんですか?」
「私は素手の方がやり易いからね!気にしないで思いっきりきて大丈夫だよ!」
「わかりました。それでは遠慮なくいきます!」
「では模擬戦はじめるわよー、構えて、始め!」
ヒロシは先手必勝とばかりにエラに走り出した。
エラはそれでも動かない。
「まずは一撃もらいます!」
ヒロシは木刀を上段にかまえ勢いよく振りかぶる。
ヒロシの一撃は空をきり、エラがいた場所には誰もいなかった。
「えっ!うそ?」
ヒロシは目を丸くする。
すると横から声が聞こえた。
「ヒロシくんどこみてるのかな?無防備だと危険だよ?」
ヒロシは急いで守りに入るが間に合わず、横から衝撃がくる。
衝撃と共にヒロシは吹っ飛ばされた。
身体の空気が強制的に口から吐き出されるような感覚。
ぐはっと声をあげ、ヒロシは倒れた。
「あれ、ヒロシくんもうギブアップなのかな?そんなんじゃ強くならないよ?」
「もう終わる?」
エラはヒロシを煽る。
「まだです!出来ます!」
ヒロシは声にならないような声でいう。
ヒロシは集中する。
エラがいきなりいなくなったのは肉体強化で脚力がつよくなったからだ。
俺も肉体強化しないと戦えない。
頭のてっぺんまで魔力を。
ヒロシの身体があたたくなり、軽くなる。
「よし!もう一度よろしくお願いします!」
「ほぉ!ヒロシくん肉体強化覚えたんだね!これで気兼ねなく出来るよ!」
あれで手加減なんだと思ったが、今はそんなこと気にしてる余裕はない。
ヒロシはまた一直線にエラの元に走り出す。
さっきとはスピードが格段にあがっている。
エラにまた一撃いれようと、今度は下段から切り上げる。
攻撃の途中で、エラの脚が動くのが見えた。
ヒロシはギリギリで攻撃を中断し、そのまま前に転がり込む。
後ろからエラの攻撃の風圧がきた。
「ヒロシくんやるね!今のが見えたなんて、成長してるね!」
「さすがに今のもらうとまずかったですね!死ぬところでした。」
「死なない程度にやってるから大丈夫だよ!!殺したくないし!」
エラは笑ってはいるがそれが怖い。
そして後ろで目を輝かせているレイラさんが怖さを倍増させる。
「ヒロシくーん!今の実力はわかったわ!エラに一撃でもいれたら君の勝ちにするわぁ」
「だってさ!一撃いれれたらいいね!!」
「善処するよ!エラも調子にのってるとすぐにおわっちゃうよ?」
ヒロシが珍しく煽る。
集中力を切らさないように刀を構える。
「言うようになったねぇ!それじゃ楽しもうよ!」
今度はエラから動いた。
間合いを詰めて、懐に入る。
ヒロシも反応し、迎え打とうとするが、木刀を降るときの腕を弾かれる。
その瞬間また正面からお腹に衝撃がくる。
身体がくの字にまがる。
肉体強化されていても口から血が出るような衝撃。
ヒロシは意識を刈り取られそうになるが、なんとか保つ。
二回殴られただけでこうなるのか、まだまだ弱いな。
ヒロシは実感する。
こんなんじゃ誰も守れないじゃないか。
「やっぱり強いですね。俺はレイラさんとエラみたく強くなりたい!」
ヒロシは叫ぶ。
「その力があれば...その力があれば!誰だって守れるじゃないですか!俺はそんな人になりたいです!」
「ヒロシ!強さは力だけじゃないよ?ヒロシは十分強いよ?」
「その証拠に攻撃をくらってもたってるでしょ?心折れてないでしょ?」
「君は十分つよくなってるよ。だから私に一撃いれてみな!君なら出来るよ。」
ヒロシは自然と笑みがこぼれた。
「うん!わかった!やってみるよ。」
ヒロシは深く呼吸をし、精神を整える。
刀を構え、目を瞑り、次の一撃にすべてをかける。
「ヒロシくんかっこよくなったね。いくよ?」
エラは走りだし、間合いを詰め拳に力をこめる。
力をそのままヒロシにむかって打ち出した。
エラの一撃を放ったところにはヒロシはおらず、エラの首もとに衝撃がはしった。
そのままエラは意識を刈り取られた。
「レイラさんやりました!でもエラが!!」
ヒロシは全然気にしていなかったがエラにわりと強い攻撃をしてしまったことに、困惑している。
「ヒロシくん大丈夫よ!この子はこれくらい平気よ!いつもこれ以上のことやってるから!」
ヒロシは深く聞くのをやめた。
レイラの手が光輝き、エラに向ける。
光の球が放出され、エラに当たると、小さくふぎゃって声が聞こえ、エラが目を覚ます。
「ここは?あっ模擬戦は?」
「エラの負けよ?最後に油断したわね!」
「そっか....ヒロシくんつよくなったね。最後は見えなかったよ。」
「そうね。ヒロシくんはつよくなったわ。…それでヒロシくんは、なにか話したいことあるんじゃないの?」
ヒロシはビクッとなり、申し訳なさそうな顔をする。
「やっぱりレイラさんには敵いませんね。はい!エラとレイラさんと会えるのもこれで最後になります。」
「もともとここにいるは1週間だけだったので、いままで言えなくてすいません」
「そうだったのね。…わかったわ。残念だけどまたどこかで会えるといいわね」
「はい。俺もまた会いたいです!」
「ヒロシくんあなたは強くなったわ。心は立派に成長している。自分を誇りなさい!」
「はい!」
レイラさんとエラはほんのり涙目になり、せっかくセットしてくれた髪をグシャグシャに撫でる。
「本当にありがとうございました。」
ヒロシは深く頭をさげ、お礼をいった。
二人の反応が思っていたよりあっさりしていたため寂しさを覚えたヒロシだったが、エラが涙を堪えながらこっそり「お姉ちゃん、こういう時口数減っちゃうの。ごめんね」と言った。ヒロシは泣いた。
別れ際、
「しんみりしたのは嫌いよ、笑顔でいきましょ」
「またねヒロシ!」
「はい!また!」
2人に見送られて、家を片付けるためヒロシは帰った。




