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無力の果てに

戦闘シーン満載で少し長めです。

奏多たちの死闘が始まるおよそ10分程前。


右脚に負っていた大怪我が治り、無事に進めるようになった奏多達一行は、早速大森林の中を快調に飛ばしていた。


普段であれば、ここまでのスピードを出すと音に釣られ魔物が近寄ってくるため、大蜥蜴の最高スピードとは程遠いペースでこれまでは進んでいたのだが、現在奏多達は猛スピードで森の中を横断している。


大蜥蜴の全力となれば当然かなりの轟音が大森林の中に轟き、洒落にならない数の魔物が寄ってくる事は自明の理ではあった。

しかし、それでも奏多達が最高スピードで森の中を走れているのはひとえにーーー


「お前のお陰、だよ。ありがとな。」


先程から奏多達の頭上をやかましく飛び回っているこのドラゴンのお陰で、この無謀な強行突破はなし得ているのだ。


まだ少ししか走っていないにも関わらず驚く程襲いかかってくる魔物達は、一体の例外もなく子ドラゴンの前に骸と化している。


なにせ、魔物が大蜥蜴や奏多へと攻撃に移行する前にもう首が落ちている。

それ程の神技、曲芸とも言えるだろうその能力を先程から何度も繰り返す、このドラゴンの実力を再認識し、奏多は改めてこのドラゴンが仲間になったありがたみを感じていた。


お陰で奏多は、魔物の警戒などを一切せずに大蜥蜴の背の上でコレクションしていたドロップアイテムを眺める事が出来ていた。

奏多自身は敵を倒してもドロップアイテムは出現しないのだが、そのコレクションにはどうやらかなりハマっているようだ。


ドラゴンに倒した魔物のドロップアイテムを拾ってくるよう頼んでいることもあり、奏多のコレクションは今後も増加の一途を辿ることだろう。


「あー、こんなリラックス出来るの久しぶりだ……」


大蜥蜴も、脚が治って気持ちが良いのか心なしスピードが速い。

この調子であれば、案外すぐに着いてしまうかも知れないなんて珍しく楽観をしながら、それでもカチャカチャとうるさい鉄剣を近くに置いておくのはやはり奏多と言った所だろうが。


そもそも奏多は人の身でありながら巨大蜘蛛5匹をも相手に死闘を繰り広げ、大怪我を負いながらずっと緊張状態で歩いていたのだ。

治療魔術ですら体内の疲労は回復することは不可能な為、既に奏多の疲労はMAXまで溜まっていると言っても過言では無い。


そんな緊張がドラゴンによって突然解されれば、普通の人間は剣など放り出して寝ていてもおかしくはないのだ。


茜に染まった空が優しく奏多を包む。

自分に睡魔が襲ってくるのを自覚しながら、それでも何とか意識を覚醒させる。ドラゴンだけに任せておく訳には行かないのだ。


(レベルアップした状態でこの疲労度なんだから、もし生身ならドラゴンと会う前に疲労で死んでいたかもしれないな……)


霧がかかってきた思考で朧気にそんな事を考えていると、森の中から何か黒い、硬質な輝きを放つ石のようなものが飛んできていた。

ただそれは、ただの石というには余りにも大きい。

人の頭ほどあるその石は、打ちどころが悪ければ死ぬレベルだろう。


その石は、物凄いスピードで大気を切り裂きながら一直線にドラゴンへと向かっている。


とはいえ、所詮は石。

普通ならただ避けておしまいなのだろうが、その見覚えのあるフォルムにうとうととしていた奏多の意識が急激に覚醒し、そして叫ぶ。


「ドラゴン、それは森亀だ!」


ドラゴンへと飛びかかってきた石の正体は、大蜥蜴の突進を余裕で耐えた、今まで見たなかで最高レベルの硬さを誇る魔物。

亀のようなフォルムを持つその魔物が自身の身体を丸め、特に硬い殻の部分を盾にして突進してきているのだ。


いくらドラゴンでも、もし直撃してしまえば致命傷になりかねない攻撃力を持つその攻撃は、だがしかし永遠に当たることは無かった。


それは、森亀の甲羅をドラゴンの爪が貫いていたからだ。


「ぎゃ、がう……!?」


あまりの硬さに爪を突き刺したドラゴンからも苦しそうな声が聞こえるが、それでもドラゴンの爪は甲羅の奥、森亀の本体にまで届き致命的なダメージを与えた。


「ぎぅがぉぉぁぁ!?」


甲羅の中から低く、鈍い声が森亀から漏れる。


それは、自分の絶対的な自信につながっていた甲羅が貫かれたことへの驚きか、単純にこの小竜の強さへの憎悪か。


とはいえ、それは結局分からずじまいだ。


ドラゴンが、思わぬ痛みに顔を顰めながら爪を引き抜くと、そこから森亀の血が大量に吹き出してくる。

よく見るとドラゴンの爪もかなりボロボロで、血を吹き出す森亀から即座に視線を外すと自身に治癒魔術をかけるため集中していく。


「いくらドラゴンでも、森亀の甲羅には多少ダメージを負うんだな……」


本来、森亀とドラゴンは格がかなり違う。

自分より何倍も強い相手に手傷を負わせることができたのは、流石防御特化だと言うところだろう。


そう感心しながら、奏多はドラゴンの背後で息絶えた森亀のドロップアイテムを確認しようと近付きーーー


「ドラゴン、後ろだ!!!」


白い光に包まれるドラゴンの背後には、甲羅に風穴を開けながらもなんとか生き残った亀の姿。

ボロボロになった亀はそれでも闘う意思を絶やさず、自身に残った最後の力でドラゴンに甲羅の一撃を喰らわせようとする。


ドラコンは治癒に夢中で気付いていない。

この状況でやれるのは、奏多だけだ。


「おっらぁぁぁぁあああ!!!」


腰に収まった剣を引き抜くと、強化された身体能力に任せて強引に距離を詰める。その加速の勢いのままに剣を振り上げると、死にかけの森亀を思い切り袈裟で切りつけた。


「ぎゃ、うがぉ……」


森亀は、届かなかった一撃に憎悪の唸り声をあげると、今度こそぴくりとも動かなくなった。

ようやく森亀が死んだことを確認すると、奏多はホッと息をつきドラゴンを睨みつける。


「危ねぇな、今のまともに当たってたらドラゴンでも大怪我してたかもなんだぞ?」


油断したドラゴンの後ろで最後の特攻を仕掛けようとしていた森亀の姿を思い出した奏多は、そうドラゴンに注意する。


防御力をそのまま攻撃力に上乗せした甲羅の一撃は、いくらドラゴンであっても無傷とはいかないだろう。


「ぎゅあ?ぎゅうきゅあ!」


奏多に感謝?をしているのだろうか、ドラゴンは大袈裟に彼の周囲を飛び回る。


奏多がトドメを刺してしまったせいでそれなりにレアなドロップをする(誘魔石を手に入れたのはあの魔物からだ)森亀のアイテムは手に入れられなかったものの、ドラゴンの命の方が優先だろうと奏多は僅かに残った後悔を振り切って自身の鉄剣を収めた。


すると、完全に緊張が解けて再び大蜥蜴の背に座った奏多の膝に、何故かドラゴンが丸まり寝転がってしまう。


「ちょ、なんだよ、離れろって……」


重くは無いので奏多としては別に大丈夫だが、ドラゴンが警戒に当たってもらわないと情けないことに奏多達は全滅だ。

なんとか追い返そうと四苦八苦しながら、奏多は今後のことを考えていた。


そもそも、ティロスから渡された食料は7日分だ。


ティロスは大蜥蜴の足なら早ければ6日で着くと言っていたのだ、そろそろ着いてもおかしくない頃合だろう。しかし、未だ人の気配はおろか街道のようなものすら見つかっていない。


「どう考えてもおかしい、よな……」


魔物との戦闘でペースがだいぶ落ちてしまったかも知れないが、それにしても不自然だ。

ティロス達には、元から腑に落ちない点が多いのだ。


巨大蜘蛛の情報を意図して抜いていたり、ドラゴンの話を全くしていなかったり。


もし本当に万が一、ティロスが奏多達を騙していた場合、ここからの生還は絶望的な状況になるだろう。


食料は予備の一日分だけあるが、それだけではどれだけ全速力でも人間の領域に帰ることは出来ないし、例え帰れたとしても今度はあの国の人間に追いかけられるだけだ。


怪我をしても治せるし、魔物の心配もないだけ大分マシだろうが、それでも厳しいことには変わりない。


「詰み、か。」


残念なことに、今の奏多はティロスの善意を信じて進むしかないのだ。


「少し、日が沈んできたな……」


既に空の一角は、闇色に染まり始めていた。

今日中に街へと着けなければ、正直かなりやばいだろう。


更に大蜥蜴のスピードをあげると、奏多達はあるかも分からない街へ向けて必死に走り続ける。



それから、数十分が過ぎた。



日はかなり沈み、空は橙色を侵食して闇に染まり始めている。


大蜥蜴のスピードをこれ以上なく早めたことで魔物が猛烈に集まってきた為、奏多は既にかなりレベルを上げることに成功している。

ここまでのレベルアップで、今の奏多は普通の国の兵士くらいのレベルにまで上がっているのだが、ステータスを見ることの出来ない彼がその事を知るのは、まだまだ先の話だった。


そんなことより優先するべき一番の問題は、やはり街だろう。


「何をしようにも、人間がいないとどうしようもねぇ。このままじゃ餓死ルート一直線だぞ、俺達……」


今のところ、それらしきものがある気配は一切ない。

近くには獣道すら見当たらず、ましてや人が行き来した痕跡なんて1度も見ていない。


このまま夜になれば、また朝までの足止めを喰らうことになってしまう。本当なら寝る間も惜しんで進むべきなのだろうが、夜目のきかない奏多と大蜥蜴ではいくらドラゴンがいるとはいえ危険すぎる。


もしそんな状況になって、次の日予備の食料を使い果たしても街が見つからなかったら。

奏多が食べれるような食料がないこの森では、確実に死んでしまうことは間違いないだろう。


最高スピードを出せるようになったのだから、今からでも撤退した方が良いのかもしれない。


そんなことを考えていると、先程膝の上から追い返したドラゴンが敵の気配を感じたのか大蜥蜴の背から一瞬で姿が消えた。


これまでなら、その後襲ってきた魔物たちがあっという間に屍を晒すというとてもワンパターンなものだったのだが、今回は違う。


「ーー?」


かなりの時間姿が消えたままだし、ドラゴンの鳴き声すら聞こえない。


「どこにいるんだ?」


からかっているのだろうかと奏多は訝しみ、ドラゴンを探そうと彼が大蜥蜴の背で立ち上がった瞬間。


「ぎゅあぁぁぁ!?」


これまでに聞いた事のない程焦りの篭った悲鳴を上げたドラゴンが、森の奥から物凄い勢いで投げ飛ばされていた。

有り得ないスピードで一直線に投擲されたドラゴンはそのまま近くの大木へと突き刺さり、一切動かなくなった。


「ドラゴン!?」


もしかして死んでしまったのか、奏多の思考が思わず絶望に染まるが、直後ドラゴンの体を白い光が包み込んだ。


奏多達の怪我を治した治癒魔術だ。

だが、その光の大きさが明らかに以前とは段違いで、明るさも奏多達を癒した時とは比べ物にならない。


それだけドラゴンも切羽詰まっているのだろう。


「生きてるか。となると、誰がドラゴンを投げた……?」


先程、ドラゴンが投げ飛ばされた方向へと奏多は顔を向ける。

昼間から薄暗かった森は、薄暗い夕方にもなると完全に闇へと同化していく。故に視界は最悪、奏多からは何も見えず、それが逆に不気味さを漂わせていた。


「なんなんだ、なにがいるんだよ……!!」


ドラゴンを吹き飛ばした何かが必ずいるはずだと、奏多は恐怖を押し殺して更に目を凝らした。


それが起きたのは、奏多が目を凝らした数秒後のことだ。


「ぐる、グォガォァァァァアアア!!!」


何の前触れもなく突然、森に巨大な咆哮が響き渡った。大気が猛烈に震え、木々に止まっていた鳥たちが尋常ではない音に一斉に飛び立つ。


大蜥蜴は警戒するように唸り、好戦的であるはずの森の魔物たちも息を潜める。


「くそが、なんだよこれは……!!」


剣を強く握りしめる奏多の決意を嘲笑うかのように、彼の力不足を目の前で懇切丁寧に教えてくるかのように、ドラゴンが投げ飛ばされてきた方向の木々が、一斉に爆発した。


それは恐らく、先程の咆哮によって吐き出されたのだろう黒き炎だ。

フィラル大森林の巨木を、様子を見に来た魔物たちを、ほんの一瞬で灰すら残さず焼き払う漆黒の炎は、「それ」の周囲の木々を全て焼き払うと、役目を終えたかのように自然に中空へと溶けていく。


そうして、木の葉による闇に紛れて見えなかった「それ」の姿が完全に明らかになる。


「嘘、だろ……?」


その風貌は、まさしく化け物。

6mはあるだろうその巨大な体と、それに見合った鋭くも大きな鉤爪。その姿は奇しくも大蜥蜴と同じ漆黒の鱗を纏っていて、しかしその鱗が与える印象があまりにもかけ離れすぎている。


大蜥蜴は、屈強さと気高さを。

だが、この化け物が与える印象は、そう、まさしくーーー


「ーーー絶望と恐怖、か。」


爬虫類を彷彿とさせる鋭い目には全ての生物に対する底の見えない殺意が宿っていて、化け物は奏多達を捉えると、本能のままに大きく咆哮した。


「グォルォァァァァアアア!?」


すると、咆哮と同時に口から大量の漆黒の炎が、奏多たちを焼き尽くすためだけに産み出される。それは辛うじて残っていた木々を容赦なく焼き払いながら、猛烈な勢いで奏多たちへと迫っていた。


「ぐ、ガァァァァァァ!!!」


圧倒的な力の前に避ける術もなく、呆然としていた奏多たちの後ろから目にも止まらぬ速さで何かが思い切り飛び出してくる。


よく見るとそれはピンク色の鱗を纏った小柄なドラゴンで、傷の治療が完了し戦線復帰した、奏多たちの中でもっとも頼れる魔物だった。


「ギャァァァァァァァァァァァ!!!!」


ドラゴンはあの化け物に対抗するように咆哮を上げると、口元から緑色の炎を生み出す。

怪物と比べやや柔らかい印象を与える緑炎は、その勢いのままに漆黒の炎とぶつかり合う。


真正面からぶつかりあった緑炎は明らかに漆黒の炎の勢いを弱めたが、やはり体の大きさの問題か封殺とまでは行かず、ドラゴンの炎を無理矢理かき消してさらに奏多たちへと進んでいく。


「大蜥蜴、行っけぇえええええ!!!!」


「ぐるぁ!!」


だがしかし、勢いの弱まった炎など、大蜥蜴にとって避けるのは容易い。

ゼロスピードからの急加速で危なげなく炎を避けると、今度は奏多の指示に従い化け物に向かって猛スピードで接近していく。


大蜥蜴に接近の合図を出した後、奏多は大蜥蜴の背で揺られながらも立ち上がり、何とか錆び付いた鉄剣を引き抜いた。


一方大蜥蜴は、咆哮を上げながらどんどん化け物との距離を詰めていく。自分より明らかに食物連鎖の上位に立つその魔物に対し、彼は一切怯むことなく近づいていきーーー


大蜥蜴が物怖じせずこちらに向かってきたことに面食らったのか、化け物は一瞬だけ怯むが、即座にその鋭利な爪を大蜥蜴へと振るう。


刹那、無防備になった胸元へ大蜥蜴からジャンプした奏多が突っ込み、既に引き抜いてあった鉄剣を化け物の丁度心臓の部分へと突き刺そうとする。


勢いは万全、大蜥蜴のスピードを上乗せした突きはかなりの鋭さで、故に奏多は油断していたのだろう。

そんな彼を世界は許すはずもなく、運命は、奏多にその慢心を思い知らせる。


ーーー奏多の力など、この世界では何の役にもたたない、半端なものでしかないのだと。

それを猛烈に、熱烈に、これから思い知ることになる。


「な、あ?」


竜の胸元を狙った突きは、奏多が想像していたより何倍も硬かった漆黒の鱗に阻まれて全く突き刺さらない。

それどころか、大蜥蜴の突進の勢いを乗せて放った剣は、その半ばからぽっきりと折れていた。



飛び散る鉄剣の破片と同じように、奏多は3mほどの高さからいっきに地面へと落下し、ショックから一切の受け身も取れずに化け物へと無防備な姿を晒す。


当然、その隙を見逃す程化け物は優しくない。


大きく、目いっぱいに爪を振り上げると、大気を強引に切り裂きながら振り下ろしてきたのだ。


どうやら先程大蜥蜴を狙った爪の一撃はドラゴンが防いだようだが、それにより怪我をしたのかドラゴンは一切動ける状態になく、奏多は落下の衝撃で一瞬動きが止まる。


(くそ、これは……)


迫り来る爪を見つめ諦観にも似た感情を抱いた奏多だったが、その直前で脳裏にふと浮かんできてしまう。


舞香が、大蜥蜴が、ドラゴンが。


この世界に来て、守りたいものも増えてしまった。

彼らを思い出すだけで、それはどうしようもなく奏多の胸を焦がすから。


だからーーー


(守りたいものが、ある。ここで諦める訳にはーー)


懐に手を伸ばす。

掌に触れた硬質な感触の「それ」を掴み取り、奏多はにやりと、このクソッタレな世界を嘲笑うかのように大きく笑った。


「ここで、諦める訳には、いかねぇんだよ!!!!」


懐の「それ」を思い切り化け物へと掲げる。

意識するのは身体の中心、そこにある、何か朧気な靄を、形にする。

思い描くのは、爪から身を守れることが可能な土の壁。


「最後まで、精一杯足掻かせて貰うぜ……!!」


靄を形に変え、奏多はそれを掌へと集結させる。

身体の中にある、血液とはまた違うそれが一斉に掌へと集まり、奏多はその薄気味悪い感触にしかし笑みを絶やさない。


奏多のイメージに、彼が掌に掲げた黄褐色の石ーーー【大地石】が呼応し、眩い程の光をあげる。


しかし化け物は怯まず、爪のスピードは一切落ちることは無い。だが、もうこれで充分だ。

後はこのイメージを、言葉にして放出するだけ。


何を叫べばいいのかは、心が、脳が自然と理解していた。


「第五等級魔術―――」


放てるのは、さして高度でもない下位魔術。

それでも、大きさを極力絞ればなんとか身を守ることは可能なはず。


「―――【大地の慈悲(アース・メリー)】」


呟くと同時、奏多は己が手に握りしめていた【大地石】を思い切り粉砕する。それの残骸は光の粒子となって幻想的に宙へ溶けていきーーー


途端、土が猛烈なスピードで壁を構成していく。

その大きさは奏多の座高ほどでかなりこじんまりとしたものだったが、防御力で言えばかなりのものであることは間違いない。


「グル、ガァァァァァァァァァア!!!!」


化け物が、咆哮をあげながら爪を土壁へと突き刺した。恐らく壊すつもりで直撃させたのだろう一撃だったが、土壁は半壊しながらもなんとか持ちこたえ、奏多の命をほんの寸前で繋ぐ。


自身の攻撃がまさかあの程度のちゃちな壁に防がれたのを驚いたのか、化け物の動きが一瞬、ほんの少しだけ止まる。

当然その隙を、奏多が見逃すはずもない。


奏多は全力で距離を取ると、そのままの勢いで走ってきた大蜥蜴に飛び乗った。

そうしている間に治療が完了したドラゴンが再び化け物に弾かれるのを横目に、奏多は未だ状況が良くなっていないこの事態に思わず唇を噛んでいた。


再び、治療が完了したドラゴンが飛びかかりーーー







そうしてその後も数多の攻防を繰り広げ、時はようやく前話に追いつく。


これが後に、奏多の運命を大きく変える闘いになるとは、まだ誰も、気付いていない。

次くらいでチート能力ゲット

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