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弱者なりの意地

やっとチート獲得します

お待たせしました!!

状況は、刻々と悪化している。


命懸けの闘いの中で既に空は闇に溶け、漆黒の鱗を持つ竜の姿は徐々に認識しずらくなっていき、大蜥蜴やドラゴンとの連携も取りにくい。


しかも最悪な事にドラゴンは夜目が効くらしく、奏多を狙う爪の風切り音だけという絶望的な状況で、なおかつドラゴンが正確な一撃を叩き込んでくる。


それでも奏多が生きているのは純粋な身体能力だけではなく、これまでとは段違いの極限状態に追い込まれたことによる火事場の馬鹿力のようなものもあったのだろう。

とはいえ、それももはや限界に近い。


視界が悪くなってくるに連れ奏多の体に刻まれる傷は加速度的に増し、ヒットアンドアウェイを繰り返していた子ドラゴンも疲れが見え始め、戦線復帰が明らかに遅くなってきている。


切り札であった【大地石】は既に使ってしまい、もはや攻撃手段は子ドラゴンの攻撃のみ。

奏多達は少しづつ、しかし確実に追い込まれていた。


あの時折れてしまった鉄の剣は、もう使い物にならない。全神経を集中してただひたすら敵の攻撃を避け続けるだけの単純作業だが、それ故にやはり隠しきれないほどに疲れが溜まってくる。


いくらレベルアップにより人外の体力を獲得しても、やはり限界はあるのだ。

それどころか奏多の能力は異世界でも平均程度、間違っても竜に勝てる力などない。


あまりにも極限状態が長引き、何度も強引に身体を動かしたせいで動きも鈍くなっているのが自分でもわかってしまう。


「ギャ、グヴォァァアアア!!」



再び叫び声を上げて子ドラゴンが戦線復帰し、治癒魔術が使えるからこその捨て身の突貫を敢行して行く。その勢い任せの攻撃には流石の竜も僅かにたじろぐが、やはり硬い鱗に阻まれ大した傷をおわせることも出来ずに再度吹き飛ばされる。


こうしてまた、子ドラゴンの治癒が終わるまで時間稼ぎを続けていくしかないのだ。


(いいのか?このままだと、お前たちは負けるぞ?)


迫り来る竜の拳を転がるようにして避け、追撃を紙一重でかわす。

身体の負担を完全に無視した挙動に全身が悲鳴をあげ、視界が明滅するのを根性で無視。


(お前はまだ何も知らない。偉大な我が、貴様に全てを知る力ための力を授けてやろう)


「ふざ、けるな……っ!」


竜がその巨大な尻尾を薙ぎ払うが、直前に駆け寄ってきた大蜥蜴の背に飛び乗ってぎりぎり範囲外へと逃げる。


大蜥蜴の背に乗ったまま竜の周囲を駆け回り、命懸けで敵の意識を撹乱させる。


「そんなうまい話、信じる訳ねえだろうが……!」


もう、何度も死にかけてきた。

明確な誰かの殺意に、知性なき獣に。


ーーー大切な人の目の前でさえも、世界は奏多に奇跡なんてものを与えなかったから。


「ギュアアアアアアアア!!」


長引く戦いに流石にウンザリしたのか、竜が巨大な雄叫びを上げて爪を振るう。

その速度は先程とは段違いに鋭く、既に死力を出し尽くした大蜥蜴にとって避けることが可能なほど生温いものではなかった。


「ーーッ!大蜥蜴!」


故に、大蜥蜴が出来ることといえば奏多を庇う程度で。


(無様だな、少年。貴様の力など、所詮その程度でしかない。)


竜の一撃が奏多ごと大蜥蜴を引き裂く直前、大蜥蜴によって中空に投げ出された奏多は血を噴き出しながら飛ばされる大蜥蜴を、ただ呆然と眺めていることしか出来なかった。


(貴様はいつまでも失い続ける。自身の無力で仲間を殺し、親しき者の血の海の中で後悔に苛まれることしか出来ぬ愚か者だ。)


地面に叩き付けられ、大蜥蜴の安否を確認する暇もなく奏多に爪が振るわれる。


(正直、期待外れでしかないな。面白そうだと思っていたのだが……)


「ーーーなんで、俺に手を貸す。メリットなんて、どこにも無いだろうが……」


迫り来る一撃を横に飛び退いてなんとか避け、痛みを主張する身体を脳内麻薬で完全にシカトする。


(我はこの行為にメリットなど求めておらん。ただ、面白いから救う。我の行動原理は、それだけだ。)


再びの爪撃に、奏多は痛む身体をさらに酷使して無理な挙動を実現させる。思った以上の激痛に息を詰まらせながら、しかし彼は叫ばずにはいられない。


「……そんなの、信じられる訳あるか。」


(ーーー)


「突然異世界に召喚されて、訳の分からないまま殺されかけて、騙されて、擦り切れてッ!」


(つまり、貴様はーーー)


「それでも着いてきてくれたあいつらを、全てを、何もかもを守り切ってこそ、俺は胸張って舞香の兄になれるんだろうがッ……!!」


(……ほう。)


それこそが、奏多がこの絶望の末に得た答え。

何をされたって構わない。卑怯者と罵られようと、騙されて全て失おうと、それでも彼は大事な物を守る為に立ち上がる。


守るためならば、例えどんなに細い糸でも盛大に縋り付く。

弱い者が、希望にすがりついて何が悪い。

弱い者が、未来を望んで何が悪い。


「あぁ、そうだ。何にも悪くねぇよな……!」


これが、力無き弱者である奏多の闘い方。


(……思ったより度胸があるな、若造。ならば、貴様の願いを叶える禁断の術式を、その身に授けよう!!)


奏多の魂に響く謎の声が何処か嬉しそうな喝采をあげた直後、彼の視界が盛大に爆発する。

竜の鉤爪が倒れ込む奏多の1寸先を切り裂き、その破壊の衝撃波で彼は無様に吹き飛んだ。


5メートルほど飛ばされ、ボロボロの身体に加えられた過剰すぎる衝撃に、視界が明滅して覚束無い。

14歳の少年が、涙を流して地に這い蹲る残酷な世界は、何処までも奏多を許そうとはしなかった。


息がまるで首を絞められているかのように苦しく、意識も段々朦朧としていく。


満身創痍の奏多を捉えた竜がにやりと口角を上げると、未だ復帰すらしていないドラゴンや吹き飛ばされた大蜥蜴に背を向け、目にも止まらぬスピードで奏多に迫ってきていた。


多少のダメージよりも、確実に敵の数を減らすことを優先したのだろう。

そう奏多が認識した直後、反応すらろくにできない彼へと巨大な爪が振るわれる。


それは、もしほんの少しでも運命が違っていれば、この時に死んでいたかもしれない程の綱渡り。


迫り来る爪は大気に悲鳴をあげさせながら迫り、その軌道は確かに奏多の首筋へと一直線に向かっていた。

当たれば首は容易く千切れ、この世界の事を何一つ知ることなく、あっけなく終わっていたのだろうその強烈な一撃。


(我と同時に、叫べ。)


だが、不思議なことに奏多にはどうしようもない確信があった。

朧気な意識だったが、自分が助かるにはそうするしかないと、奏多の中の生に固執する部分がそう叫んでいたから。


それ故に奏多は迷いなく、血を吐きながらも全力で、叫んだ。



「「第一等級魔術―――【悪魔の祝福(デビル・ブレシング)】!!!」」


刹那、奏多の身体の中で行き場もなく渦巻いていた何かが、激しく躍動する。


「それ」は奏多の体内で、徐々に形を生していく。

やがて全身を焼くような激しい激痛とともに莫大なエネルギーが流れ込んでいき、まるでレベルアップの時のような充実感を奏多へともたらしていた。


ただ唯一レベルアップの時と違うのは、流れ込んでくるエネルギーの量だ。

それは普段のレベルアップの時とは比べ物にならず、自身の身体が膨張していくのが感じられる程大きな変化だった。


そして―――


「痛みが、収まった……?」


身体を襲う激痛と充足感の終わりは、酷く唐突に訪れた。

不思議なことに一瞬で朦朧としていた意識が覚醒し、あれだけボロボロだった身体に感じる痛みすらもうあまり感じない。


突然訪れた変化に体が慣れず、奏多は軽く首を回す。


どうやら、一回り体格が大きくなっているらしい。普段より明らかに目線が高く、僅かだが物が見やすくなっているのが分かる。

そうしてこの状況の確認を一通り終えると、奏多はゆっくりと前を向いた。


「俺がさっき見た時より、だいぶ大人しくなってんじゃねえか……」


奏多の目の前には、人の背丈ほどもある鋭い竜の爪。

あれ程早く奏多を切り裂こうとしていたその爪が、今では亀の歩み程にのろのろと世界を進んでいる。


無論、相手のスピードが遅くなった訳では無いことは奏多も理解していた。


この状況はーーー


(我の祝福の心地は、どうだ?)


「あぁ、最高だ……ッ!」



ただただ、竜と比べて余りにも、奏多が「早すぎる」だけなのだから。








ゆっくりと迫る攻撃を、軽々と横にかわす。


そのまま奏多は静かに歩き竜の胴体へと進むが、竜は未だ奏多を捉えることは出来ていない。

ようやく避けられたことに気付いて顔が驚愕に歪んでいくが、その動きすらスローモーションだ。


「これって、身体強化倍率何倍くらいなんだ?」


奏多の魂に響いてきた謎の声に問いかけるが、この何もかもが停滞した世界であの声は聞こえなかった。


「まあ、それはこの竜を殺してから考えるか。」


酷く鈍い動きをする竜は、もう先程の脅威の面影すら残っていなかった。

よく見ると大蜥蜴は衝撃で吹き飛ばされたようで、巨木に激突して動いていない。


「とりあえずさっさと倒して、治療をしなきゃな。」


そう呟き、奏多は至って軽く土を蹴るようなイメージでジャンプする。


「これで終わりだぜ、ドラゴン……!!」


普段なら軽く身体が浮く程度だろうその跳躍はしかし常外の力を得て一瞬で竜の頭の高さまで飛び上がり、奏多はその勢いのままに、酷く無防備な竜の横っ面を全力でぶん殴った。


そして、信じられないほど呆気なく舞台は終了を迎える事となる。


(よし、我のサポートはここまでだ。)


そう、謎の声の安堵したような響きを魂で聞いた途端、奏多の世界が思い出したかのように「正常」へと復帰した。


「ぐ、あぁぁあ!?」


6mの高さから落下する奏多の視界には、轟音と共に首がもげ、血を噴水のごとく吹き出した竜の姿が見えていた。

そして、そのまま竜の血で濡れた地面に頭から激突する。


ただでさえボロボロの身体だ。

落下による衝撃で呼吸が止まり、息苦しさともう何度目かも分からない激痛に今度こそ意識が遠ざかっていく。


だが。


朧気な視界の中で、首を完全に引きちぎられてもまだ僅かに動いている竜の体が見える。


ほとんど確認できなかったため確証はないが、奏多には竜が、倒れ込んでいた大蜥蜴を狙っていたように見えて。


それは、生きるものに対する執念が成し遂げた奇跡。

魔物としての身に余る程の憎しみが、死した竜の体をなおも動かした。


そんな竜の、儚い最後の抵抗は。


「これで、終わりだ……ッ!」


奏多が最後の力を振り絞って投擲したのは、折れた鉄の剣。

それが、竜の鱗の剥がれた部分に突き刺さる。

残りかすかな命を振り絞った竜は最後に一際大きく悲鳴をあげ、そして今度こそフィラル大森林に屍を晒した。


それを見届けることすら出来ず、度重なる無理が重なった奏多の意識も、心地よい暗澹の中で静かに沈んでゆく。


(今はゆっくりと眠れ。我が貴様に与えた祝福は、次に目が覚めれば更に大きな物へと変わっているはずだ。)


そんな、誰かも分からない謎の声に、だが理由も無しに奏多は心の底から安堵して。


そしてとうとう奏多は、ずっと保っていた意識を失った。









鉄の剣精霊族 Lv197



装備者



攻撃力+200


素早さ+100


ーーーーーーーーーー


特殊効果



多重詠唱


装備者自動回復


鉄の剣自動修復


装備者スキル共有


闇属性の敵にダメージ20%up


全属性の敵にダメージ10%up


自我交換


念話


種族スキル 〈ステータス〉付与


形状変化


ーーーーーーーーーーー

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