表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/70

#49、跳梁跋扈




今回の話し合いで、カリュウちゃんの秘密が結構明らかになった。

陛下を裏から操り、姫皇帝となるずっと前からこの帝国を支配していた事。

ランカーシス技研で、自らの命を犠牲にしてしまう不可解な兵器を建造している事。

そして、私達の想像を絶する程の太古の時代から、生きているという事。


カリュウちゃんは一体、何を思いながら日々を過ごしているのだろう。



「例の兵器は、恐らく他国を壊滅させたり、民衆を威圧する類の物ではなかろう。

カリュウの目的からして、ゴールデン・テーブルマナー対策の可能性が非常に高い。余はそう思う。」


陛下の意見に、その場の全員が共感する。

確かに、それが一番納得出来る考えだ。

いや、カリュウちゃんがそれ以外の用途で兵器を造るなんて、それこそ有り得ない。


そして、世界崩壊の大災厄を止める為に自らの命をも捧げてしまうという点においては、この世界が好きなカリュウちゃんらしいとも言える。



「…陛下、トドマツさん、ククノチさん、ありがとうございます。

皆さんと話し合ったお陰で、今後の明確な目標が出来ました。」


「ほう?そうか。」


「今までは、私がカリュウちゃんと話をしたいという理由だけで帝都を目指してましたが、これからはそれに加え、兵器とカリュウちゃんを止めるという目的が増えました。」


「成る程。だがしかし、兵器を止めさえすればカリュウは救えるが、その代わりにゴールデン・テーブルマナーは止められなくなるぞ。

世界が滅んでしまっては、元も子もないのではないか?」


陛下の言う通りだ。

私を試すかのように、避けられない現実問題を突きつけてくる。



「それは…


今はまだ、何も思い浮かびません。

なので、カリュウちゃんに会うまでに、もしくは会ってから、代替案を考えたいと思ってます!」


我ながら、実にノープランで行き当たりばったりな作戦だと思う。

でも今は、そうする他ない。それ以外に思いつかない。


「ハッハッハ、成る程なぁ。とどのつまり思いはオイラ達と同じだ!

お前さん達は反乱軍のメンバーではなくとも、今後惜しみなく支援させて貰おう!」


トドマツさんが、豪快に笑いながらそう言った。

協力してくれるのはありがたい。

でも、私には、彼らについてまだ謎な点がある。



「トドマツさん、一つ質問しても良いですか?」


「おう、何だ何だ?」


「そもそもの話、どうして貴方は反乱軍を結成したんですか?」


こればっかりが、私にはずっと疑問だった。

きっと私だけじゃなく、コロちゃんとシャツキフさんも同じだろう。


確かにククノチさんは帝国に対して、研究資料を奪われた恨みはあるだろう。

でも、だからといってこれ程の人員を集めて、これ程の規模の秘密基地を造り、全員で意志を一つに打倒帝国というのは、流石に無理がある。

それ以前に、カリュウちゃん主導の帝国は善政を敷いていて、生活苦な国民もほぼいないのに、反乱を起こす理由とは一体何なのか。

それがさっきから気になっていた。




「…そうか、それを聞いちまうかぁ。」


トドマツさんの表情に途端に暗い影が落ちる。

ククノチさんも先程までの上機嫌はどこへやら、眉間に皺を寄せて、最初に会った時よりも一層険しい顔付きになっている。


これは、マズい地雷を踏んでしまった感が否めない。

反乱軍ではない陛下ですら、額に手を当てて溜め息を吐いている。


「…あ、あの、別に話したくない事なら、話さなくても結構ですよ。」


「いや、お前さん達はもう、オイラ達の仲間も同然みたいなもんだ。

それに、特段隠すような事でもねぇし、教えておこう。帝国が犯した、最大の〝罪〟をな。」



帝国の罪…?

一体、何の事なのか予想も出来ない。


「…もう、8年になんのか。

あの時の悲劇は、反乱軍結成の動機になり、オイラ達の心に決して消えない傷を残しやがった。


そうだな、まずはこれを見てくれ。」


そう言って、トドマツさんは手元にあったリモコンみたいな物を手に取り、ピピッとボタンを押した。

すると、小さな機械音と共に、天井から陛下の背後へと巨大なスクリーンが降りて来たのだ。


そこに、映像が映し出される。










『悪の組織、カースドプラネット!お前達だけは絶対に許さないわッ!

食らいなさい!マジカルファンシー・ムーンスター!』


『グホァァッ!?

クックク、俺様を倒したからって良い気になるなよ!

俺様はまだ表の四天王の最後の一角に過ぎない。

これから先、俺様よりも遥かに強い裏四天王が貴様を潰しにかかるだろう!

更にその後は、真の四天王、更に更にその後は、超絶四天王が貴様を確実にィ…!』




ピンク色の派手な衣装に身を包んだ金髪の女の子が、魔法のステッキ片手に悪の組織の怪人を聖なる閃光で倒していた。



うん、これは既視感がすっごいある。



「これって、結構前に放送されてたアニメの、『魔法少女ムーンスター・ソラコ』ですよね?

子供の頃、観てましたけど。」


確か、帝国の国営放送で製作された、女児向けのアニメだ。

どう見ても無関係に見えるこれが一体、反乱軍とどういう関係にあるんだろうか。


「あ、私帝都に来てから、ビデオ借りてみてたなー♪

懐かしいねー♪」


「アタシも、薄っすら観てた記憶があるかも。」


シャツキフさんとコロちゃんが、当時を思い出しながら言った。


「それで、このほんのり懐かしアニメが、どうかしたんですか?」


「どうかしたもこうしたもあるモンかァッ!」


いきなり感情的になったトドマツさんが、己の両拳を握り締め、テーブルの上に叩きつける。

ヤバい、もしかしたらこの時点で、反乱軍の目的が分かった気がする。



だって、このアニメは…!





「ちょうど、超絶四天王編に差しかかった辺りの出来事だ…!

この至高のアニメを放送していた帝都放送局は、突如としてムーソラ(魔法少女ムーンスター・ソラコの略称)を打ち切りやがったんだぁ!

あろう事か、主人公のソラコが、ヒロインの女の子カナデから愛の告白をされた所で終わった回でなぁ!」


あー、うん、何となく覚えてはいる。

突然放送終了して、当時は私も納得いかなかったけど、両親から大人の事情があるのだろうから仕方ないと言われ、泣く泣く諦めた記憶がある。


「確かによぉ、原作を読みゃあ、その先の話は分かるだろう。

だがオイラは!いや、オイラ達はッ!違うんだッ!

あの素晴らしいクオリティのアニメーション、卓越した素晴らしいメンバーの声優さんで、100%楽しみたかったんだ!

とどのつまり、それを実現させる為に、オイラは反乱軍を結成した。

諸悪の根源である帝都放送局に訴えかけ、ムーソラを復活させる為に!」


かなりの熱量を伴って捲し立てるトドマツさん。

ククノチさんはそれを見て、両目を閉じたままウンウンと同意するように何度も頷いている。




「……。」


「……。」


「……♪」



…圧倒的温度差。

白熱しているトドマツさん達に対して、私達の反応は極端に冷めていた。

まあ確かに、私もムーソラの終わり方にはモヤモヤしたものがあったし、ちゃんとラストまで見たいというトドマツさん達の意見も幾分かは分かる。

でも、だからといって大規模な反乱軍を組織したり、それで放送局に殴り込みに行こうと考えてるなんて、流石にない。

正直言うと引いてる。


そういえば、このアジトに入る時の合言葉、ソラコの必殺技だったなぁ。

そんな所から、無駄に伏線張ってたのか。

うん、多分今世紀最大に無駄な伏線だ。



「あー、えっと、取り敢えず私達に協力してくれるんですよね。」


「おう、当たり前だ!

そうだな、お前さん達が帝都に乗り込む際には、オイラ達も便乗して放送局に乗り込んでみるかぁ!」


う〜ん、色々とダメな人達だけど、協力者は多いに越したことはない。

お互いに利用し合うような関係だけど、距離感的にはちょうど良いと思う。

そもそも、これ以上深入りしたくもない。




「さて、話し合いもひと段落ついたし、地上に戻るかぁ。

良かったら、この町の観光案内でもしてやるよ。」


「観光?この町でですか?」


こんな悪漢とのエンカウント率MAXな治安最悪の町で観光なんて、想像すらしなかった。


「安心しろ。オイラ達といりゃあ、まず誰にも絡まれないし、こんな町でも案外美味い飯が食える店は結構あるんだ。

とどのつまり、穴場の店を教えてやるよ。」


「それ、トドマツさんが行きたいだけなんじゃないですか?」


「ハハッ、バレたか!」


「それじゃあ、トドマツさんの奢りで…」


その時だった。

突然、真っ暗だった筈の会議室のスクリーンに映像が映され、音声も流れてきたのだ。


先程まで魔法少女アニメが映っていたスクリーンには、魔法少女とは似ても似つかないイカつい男が映っている。

しかも、何やら酷く狼狽している様子だ。


「どうかしたんですか?」


「こいつぁ、反乱軍ウチの緊急通信だ!

映ってるのはオイラの部下だ。地上で何か厄介ごとでも起こったのか?」


『ボス!ククノチさん!緊急事態だ!

敵襲!敵襲!帝国軍の達人が、攻めて来やがった!

それも、とびきりヤバいのが!』


男の背後に街並みや慌てふためく人々が視認出来るので、地上からの連絡で間違いない。

ただ一点異様なのは、画面上部に映る空に、黒い影のようなものが無数に飛び交っている光景だ。


影というか、よく見たら巨大な鳥のように見える。



「クソッ、あの鳥は全部魔害獣だ!

敵は『鳥使いの達人』!お前らの手に負える相手じゃねぇ!

外に出てる奴らは全員、家の中に避難するよう誘導しろ!なるべく頑丈なとこにな!」


『は、はい!分かりました!』


「頼んだぞ!」


トドマツさんは怒鳴るように、しかし的確に指示を送り、通信を切る。


「鳥使いの達人、強敵なんですか?」


「ああ、帝国軍の達人の中でも、とどのつまりかなり上位の実力者だ!

お前さんら、『魔害獣使いの達人』の話を知ってるか?」


魔害獣使いの達人。

確か以前、シャツキフさんと少し話した事がある。

帝都周辺の強力な魔害獣全てを、たった一人で飼い慣らしているという噂の、実在するかどうかも分からない都市伝説めいた正体不明の達人。


「…噂で、聞いた事はあります。」


「そうか。生憎だが、魔害獣使いの達人は実在する!

鳥使いの達人は、千両役者フルコースである奴の直属の部下!

陸海空を支配する、『死育委員デーモンビーストテイマーズ』の一人だ!」


死育委員?

また大層な名前の人が出て来た。

しかも、一人ではないようだ。


「死育委員は、3人の魔害獣使いから構成される、イカれた連中だ。

外には強力な魔害獣がウヨウヨいる筈だ!気を引き締めてかかれよ。」


私達はかつてない規模の戦いを覚悟して、地上への道を駆け上がった。












◆◆



「…こ、これは!」


赫のゲヘナの宿屋から飛び出すなり、豹変した町の空の光景に目を疑った。


「ちょっ、アレ全部魔害獣なの?ヤバいでしょ!」


コロちゃんの焦りたくなる気持ちが痛い程よく分かる。

まだ正午過ぎの晴れ渡る青空を、無数の怪鳥達が跳梁跋扈しているのだから。


今のところは上空を旋回しているだけで襲ってくる気配は無いけど、油断は出来ない。


「町の連中は、全員避難出来たみてぇだな。良かった。」


トドマツさんの言う通り、町の人達はちゃんと指示通り家に閉じ籠もっているようだ。

よく見ると、興味本位で窓から外の様子を伺っている人もチラホラいるようだけど。




「おー、出て来た出て来た!

マジで釣れるモンだなー!ラッキー!」


上空から周囲に響き渡る声が聞こえてくる。

まるで拡声器でも使ってるみたいな声に、全員がその方向に振り向いた。


「てめェ!」


「キャッハハハ、そう邪険にするなって、トドマツの旦那!

久し振りって程でもないか、1年前なら。」


現れたのは、他の怪鳥達よりも一回りは大きい、平たい鳥。

まるでマンタと鳥を無理矢理融合させたみたいな、奇怪な姿をした鳥(?)が、ゆっくりと羽ばたきながらこちらに視線を合わせてくる。


私の害悪指数測定眼鏡で見てみたところ、マンタバードというそのまんまな名前の魔害獣で、害悪指数はなんと6450KC。

変な魔害獣なのに、かなり強いらしい。


「キャハハハ、ビビったかな?

その眼鏡便利そうだなー。僕も欲しいなー。」


声の主は、マンタバードではなく、その上に座っている銀髪の幼い少年だった。

上半身は漆黒の軍服、軍帽を着用し、同じ色のマントを羽織っている。

下半身は短パンで素足を露わにしており、その上に茶色のブーツを履いている。

端正な顔立ちの美少年だけど、口元を歪ませて笑っているのを見る限り、性格には難がありそうだ。


「お前さん達、油断すんじゃねぇぞ!

アイツはガキだが、実力は本物だ!何せ、主役メインディッシュの達人の中でも最も千両役者フルコースに近い連中の一人だからな。」


トドマツさんに言われなくても、彼の強さは既に十分理解している。

こんなとんでもない魔害獣をペットみたいに使役しているのを見せられたら、どんな世間知らずでも警戒せざるを得ないだろう。


⚪︎コロちゃんのメモ帳



ベリオーンの町


一言で言うと、凄く治安の悪い町ね。

あまりにも治安が悪くて、帝国の監督官がいない珍しい町。

でも、この治安の悪さは反乱軍を探りに来た他所者を追い返す為に演じている防衛措置でもあって、一概に悪い人の割合が多い訳じゃないみたいね。

住民の殆どが反乱軍のメンバーなんだけど、達人なのはトドマツさんとククノチさんだけよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ