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#41、どうして真面目に




「ホカーイドゥ、ジーンギッスカーン!」


「『俺達ゴトーチ族は、何よりも知恵を重んじる部族。このクイズ大会は、古より伝わる伝統の神聖なる儀式だ!』だって♪」


「いや、こんな筋肉モリモリのむさ苦しい人達に力づくで連れて来られて、知恵を重んじるとか言われても説得力無いですよ。」


オルガさんと名乗ったリーダー格の男に、私は冷静にツッコむ。

シャツキフさんが空気を読んで、そこだけ翻訳しないでくれた。



「でも、何でそんな神聖で大切な儀式に、部外者であるアタシ達を無理矢理参加させてるの?

アンタ達で勝手にやってれば良いじゃない。何が目的なの?」


コロちゃんの疑問をシャツキフさんがオルガさんに訳して伝えると、オルガさんは溜め息を吐き、明らかにこちらを馬鹿にしたような顔つきで返した。


「セーンダイッ、ギューターン!カナッザワーカーレ!」


「『貴様らのようなアホ面下げた旅人を強制参加させて、クイズの達人である俺が圧倒的実力、知識量で捻じ伏せる。

それによって、俺を含めた里の皆が満足。自尊心や優越感を満たし、捕らえた貴様らをしばらくの間、里の娯楽として見せ物小屋に展示する!』だって♪」


「うわー、想像してた以上に嫌な理由。」


「最低じゃないですか。」


この部族、あまりにも人としての器が小さ過ぎる。


「ヤマナッシー、ホートー!アイッチノヒッツマーブシ!」


「『だが、ただただ一方的に俺が勝つのも面白くないので、貴様らにも〝希望〟をやろう!

もしも万が一貴様らが勝利したら、貴様らの願いを何でも一つ聞いてやろう!』だって♪ウザいねー♪」


いちいち私達を挑発するような言動を繰り返しながら、高笑いをしているオルガさん。

ここまで言われたら、私達も黙っちゃいられない。

煽り耐性の低いコロちゃんなんか、歯軋りしていて今にも噴火しそうだ。


「分かりました。そのクイズ大会とやら、受けて立ちましょう!」


私の眼鏡キャラは伊達じゃないという、インテリジェンス溢れる一面を見せてあげよう!







まあ、いざとなったら力づくで何とかするつもりだけれど。





「ねえ、アディーナ。」


「コロちゃん、どうかしましたか?」


不安そうなコロちゃんが、小声で話し掛けてきた。



「クイズ大会、やる気なのはいいんだけどさ。本当に大丈夫なの?

よく考えたらあいつらが主催なんだからさ、いくらでもインチキし放題なんだよ?」







「………あ。」


「あちゃぁ、やっぱり…」


そうだ、興奮し過ぎてそんな簡単な事を失念していた。

このクイズ大会はゴトーチ族主催のもの。

だったら、彼らの仕込みがどれだけあってもおかしくはない。


「シャツキフさん、この大会の公平性について聞いて貰って良いですか?」


「はいは〜い、えっと、エードマッエズーシー?」


「トゥヤッマノー、ブッラクラメーン!」


「『安心しろ、そう言われると思って、ちゃんと公平性を期す為の措置はしてある。』だって♪意外だね♪」


そう言われた直後にゴトーチ族の若衆達が、この里にはミスマッチな巨大な大画面のテレビを舞台上に運んで来た。

こんな文明の利器がこの里にあったなんて。


「ハママーツノ、ギョザー!」


「『クイズの出題は、〝グラットン帝国クイズチャンネル〟によって行う。』だって♪」


「は?クイズチャンネル?」


コロちゃんは知らないっぽいけど、私は知っている。


「懐かしいですね、確か帝都のクイズ協会が放送している、かなりマイナーなチャンネルですよ。

24時間365日、ただひたすらにクイズを出し続けるだけのチャンネルです。私もたまに観てました。」


「そんなのあったんだ…。それって需要あるの?」


「何を言うんですか!一部のクイズマニアや知識自慢、暇を持て余した人達なんかにとってはもってこいの、隠れた人気番組ですよ!

放送開始から10年以上経ちますけど、一度も問題のダブりは無いですし、常に新しい問題を作り続けているので、公平性については問題ないでしょう。」


「へぇ。」


若衆が大型テレビを、観客席に見やすいであろう舞台後方にセッティングし終え、ついにクイズ大会開始の準備が整う。

余裕綽々といった表情のオルガさん、存在を忘れそうになってたけどうたた寝しているお爺さん、楽しそうに見守りつつ通訳をこなすシャツキフさん、予想以上に集まった観客に緊張しているコロちゃん、そして平常心の私。



「ヨッコスーカー、カイグーンカッレー!ヒッロシーマフーオコノッミヤーキ!」


さっきの綺麗なお姉さんが、大きな声を上げる。


「『皆さん準備は完了したみたいですねー!申し遅れましたが、私は今大会の司会進行役に任命されました、副族長の娘のリィランでーす!旅人の皆さんは初めまして!』だって♪こちらこそ初めましてー♪」


リィランさん、か。

露出の高い格好で笑顔を振り撒き、部族の人達は皆メロメロになっている。

ゴトーチ族のアイドル的な存在なのだろうか。


「ミッヤザーキノー、カンジュックマーンゴ!」


「『なお、今大会のルールはポイント取得制のチーム戦となっており、旅人チームとゴトーチ族チームの2対2の勝負となりまーす!全10問の解答後、一番多くポイントを取った方の勝ちです!』だって♪」





「エッチゼーンガニー!」


「『それでは行きましょう!第1問目です!』だって♪」


「ゴクリ…」


いざ始まってみると、私もちょこっとだけ緊張してきた。

そんな私とコロちゃんの緊張をよそに、テレビの画面にクイズが表示される。







【ランカーシス技研CEOの名前は?フルネームで答えて下さい。】





「え?ランカーシス博士じゃないの?」


「コロちゃん、フルネームですよ、フルネーム。」


「えっ!?フルネーム、フルネーム……え、フルネーム?」


「混乱しないで下さい!ファンだったんじゃないんですか!?」


「いや、そこまで熱烈なファンじゃないし!にわかだし!」


「そんな!」


私達があたふたしている内に、オルガさんはもう答えを書き終えているんじゃないか!

そう思って相手チームの方を見てみると、何故かオルガさんは解答用のホワイトボードにもペンにも手を付けず、机の上に両足を乗っけて偉そうに踏ん反り返っている。

そして、私と視線が合うなり、ニヤニヤ馬鹿にしているような笑みを浮かべている。

何なんだあの人は!

もう一人の参加者である謎のお爺さんなんか、殆ど寝てて問題を見てすらいない。


「何よアイツら、自分達から仕掛けておいて、全然やる気ないじゃない!」


「私達に解けっこないと思って、余裕なんでしょう。

制限時間もありますし、分からない問題は適当に答えて、分かる問題だけ答えましょう。」


「…あ、いや、思い出した!思い出した思い出したぁ!」


叫びながら、コロちゃんが勢い良くホワイトボードに答えを書いていく。





「アッカシヤキー!」


「『制限時間でーす!』だって♪答えを見せてねー♪」


「はい!」


コロちゃんとオルガさんは、同時にホワイトボードを客席に向けて公開する。


コロちゃんのボードには『アークトゥルス・ランカーシス』、オルガさんのボードには『あ』と、ただ一文字だけ書いてある。

解答もまるでやる気無しとは、あの人は本当にクイズの達人なのか疑問に思える。



「ゴッヘーモーチ!」


「『気になる答えはこちら!』」


皆がテレビ画面に注目する。




【アークトゥルス・ランカーシス】




「やった!」


見事、コロちゃんの正解だ。

司会のリィランさんが私達の元に駆け寄り、1ポイントを表す木札を渡してきた。


初手から私達がリードするも、オルガさんは相変わらずこっちを見下しているような嫌らしい笑顔のままだ。

あそこまで余裕ぶられると、流石に嫌な予感がしてくる。


「コロちゃん、オルガさんは何か企んでいるのかもしれません。」


「それ、アタシも思った。いくら公平性が何だの言ってたって、結局ここは奴らの領分だからね。

何かズルでもしようとしてるんじゃない。」


「そうですね、警戒はしときましょう。」


リィランさんが進行を促し、次の問題がテレビ画面に表示される。






【魔害獣の強さを表す指標である害悪指数。さて、今年正式に決まったその単位は?読み方も含めて答えて下さい。】






「めっっっっちゃ答えたくないんですけどッ!」


かつてない程分かりやすく嫌な顔をする、コロちゃんもとい答え。


「じゃあ、私が答えときますね。」


スラスラとホワイトボードに答えを書く私に、コロちゃんが恨めしそうな視線をぶつけてくる。



「…言っとくけど、アンタの悪ふざけの所為で〝それ〟になった恨み、まだ忘れてないんだからね。」


「…許してくれたんじゃなかったんですかぁ?」


「こうして蒸し返されると、改めて腹が立ってきた。」


「理不尽ッ!」









「アッカシヤキー!」


制限時間が来た。

解答の提示を促され、私とオルガさんは同時にボードを見せる。



私のボードには『コロチャン』、ニヤニヤ笑うオルガさんのボードには『ケロチャン』と書かれている。



「ブッ!ケロチャン…!」


不意打ちの珍解答に、私は思わず吹き出してしまった。

しかし、すぐにハッとなって横を向く。

案の定、コロちゃんが鬼神のような表情で私を睨んでいた。




「…あ、あの…」


「笑わせちゃって悪かったわね。ごめんね、カエルみたいな名前で。ケロケロ、はいこれで満足?」


「ご、ごめんなさぁい…。」


怒れるコロちゃんを何とか宥めて、クイズ大会を続ける。

答え合わせは勿論こちらのチームの正解で、オルガさんは再び不正解だ。




その後も、私とコロちゃんは知識を絞り出し、解答をし続ける。

途中間違える事も何度かあったけど、9問目まで行った時点で6問正解といった状況。

オルガさんはずっと不正解のままで未だにゼロポイントだし、謎のお爺さんに至っては4問目辺りでトイレに行ってくると言って退席したきり、戻って来なくなってしまった。

これでもう私とコロちゃんチームの勝ちは確定してる訳だけど、オルガさんはやはりというか目が合うと気持ち悪く笑っている。


「オルガさん、もう私達の勝利は決定されています。

今更聞くのもアレですが、どうして真面目に答えないんですか?

曲がりなりにも、クイズの達人を名乗っているのでしょう?」


シャツキフさんが通訳し、私の言葉が届いたら、オルガさんの笑いは嘲笑から爆笑へと変わり、大声で笑い声を上げていた。



「何なんですか、いきなりテンション上がって、気持ち悪いですね。」


「ウオッハッハッハッハハハハ!クッマモートノー、クッマモートラッメーン!クッマモートノー、カッラーシレンコーン!?」


「『ウオッハッハッハッハハハハ!貴様らは本当におめでたい連中だな!この勝負本当に、自分達が勝ってると思っているのか!?』だって♪ムカつくねー♪」


「は?」


苦し紛れの負け惜しみか?と思ったけど、オルガさんはこれまで明らかにわざと不正解を連発していた。

やはりこれは、何らかの罠である可能性が高い。

私はこれまで、何か見落としていないか?どこに罠が張ってあるのかと疑心暗鬼になる。



「落ち着いてアディーナ、動揺を誘うのも、アイツの作戦よきっと。」


「は、はい、すみません。」


コロちゃんに諭され、私が冷静さを取り戻すと同時に、大会の方も最終問題へと突入した。



「ナッガサーキチャーンポーン!オーマッノマッグーロ!」


「『え〜、最終問題は趣向を変えて、早押しクイズになりまーす!最終問題も公平性を重視して、お互いのチームの参加者でない識者同士が考えた特別問題になります!』だって♪

ちなみに問題考えた識者ってのは、私とリィランちゃんだよー♪」


えぇ、いつの間にそんな事を…!

いや、そんな事よりも、まさかこれがオルガさんの狙い?

でも、この問題を私が取り逃したとしても、こちらの勝利は揺るぎないものの筈!



「カゴッシマノカッキゴーリ、シーロークーマー!」


「『なお、最終問題の正解者には、特別に1億ポイントを進呈しまーす!』だって♪ベタだねー♪」









は?





「はァァッ!?」


「ちょっとォ!?」


私とコロちゃんは、同時に抗議の声を上げた。



「いやいや、これまでの問題は何だったんですか!?」


「そうよ!全部無駄だったって事!?」


「ナゴッヤコチーン!オッカヤーマーノ、デッミカツードン!」


「『その通り!クイズの達人である俺には、1問目の時点から大会の流れと空気感を全て読み取り、最後にお約束の1億ポイント問題がある事を予測していたのだ!

これぞ我が奥義、『億倍返し(ビリオンリバーサル)』!』だって♪

カッコつけてるけど、ただのセコ技だよねー♪」


「なッ!?」




私とコロちゃんは絶句した。



まさか、こんなしょうもないアホみたいな技で逆転されてしまうなんて、あまりにもバカバカし過ぎてやる気無くなってきた。


⚪︎コロちゃんのメモ帳



リィラン



ゴトーチ族副族長の娘さんで、今回のクイズ大会の司会進行役をしてた子ね。

凄く明るくて人当たりの良い性格、加えて美人なので、老若男女問わずゴトーチ族内では非常に人気者らしいわ。

愛想が良いから分かりづらいけど、むさ苦しくて男臭い若衆の事はあまり快く思ってないみたい。

ここだけの話、族内に付き合ってる彼女がいるとかいないとか…。

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