モンスター
◆◆◆モンスター◆◆◆
露店エリアを後にして、ユラちゃんのところに向かったら酒場についた。
「我が半身よ、新たに我らが陣営に加わった者たちだ、歓迎せよ。」
どう見てもサワガニだ。名前は違うかもしれないけどサワガニだ。
「俺が魔王様一の配下、霧の勇者中川翔太だ。ともに魔王様を支えよう。」
蟹の勇者だから、蟹なら何でもテイムできるのだろう。
「魔物ではないだろうし、Lv0ですよね?強化はどうした方がいいですか?」
「そのままで良い。我が蟹を司る力があれば、このような存在であっても力を発揮できるのだ。総員、鶴翼の陣!」
―サワガニがユラちゃんを中心に鶴翼の陣をとった。動きが早い。
「もしかして、魔王様の速と同じになるのですか?」
「フッ、魔王たる我と同等とはいかぬが、特定条件下であれば迅速に行動させることができるのだよ。」
「配下のステータスの1割分ユラちゃんが強化されるんだぜ?隊長以外でアタシの槍を受けられるのはユラちゃんだけだったんだ。」
「受けれるが故に修行相手に選ばれる、なんという悲劇。って俺もか…。」
「修業はすべて任せる。異論は認めない。」
「飯食う前に修行いっとくか?」
「「今すぐ食事にしましょう!」」
「そっか、じゃぁあの店にしよーぜッ!」
修行の勝敗で決めようとか言われたら怖いのでその店に決まった。日本食の店のようだ、勇者が広めたのだろう。
「ご注文はいかがされますか?」
「アタシみそラーメンッ!」
「オムライス、ノーマルのやつ。」
「我は…グラタンセットを頼もう。」
魔王様がチラっとこっちを見た。
「俺はミートスパゲッティで。それと、デザートをここからここまでお願いします。」
「こ、これが大人買い…!!」
「デザートの注文は任せろってゆーから期待してたけど、さすが隊長だぜ!」
「トリアテ様へのプレゼントなんですよ。来たらみんなで欲しいやつを選びましょう。」
君たちもDPたくさん持っているから同じことできるよね?
「プリン、あるだけ全部。」
「す、すげぇ猛者がいたぜ。」
「保管すれば余裕。」
「わ、私も何か…ケーキをたくさん!」
「魔王様ってケーキ好きなんですか?」
「それほどでもない。」
「うーん、なら、いろいろ注文したほうがいいのでは?」
「た、旅先で食べるから大丈夫。」
「まぁ、なんでもいいですけどね。」
「ご注文は、以上でよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
「かしこまりました、しばらくお待ちください。」
「それにしても、誰一人日本食を注文しなかったな。」
「アタシは注文したぜ?」
「ラーメンって中国じゃなかったっけ?」
「知らねーけどみそは日本だろ?中国じゃぁみそなんて使わねーんじゃねぇか?」
「日本食にアレンジされた中華料理ってやつかな?日本食みたいなものか。」
「オムライスは日本食、これは常識。」
「え?マジで?」
「イギリスとかじゃねーの?」
「日本のまかない料理として原型が誕生し、元祖オムライスとして販売されているオムライスは卵焼きに近い。」
「そうなのか。」
魔王様はボロを出さないためかだんまりだ。
「貴様らのために、一番いい依頼を受けておいた、感謝するがいい…!!」
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モンスター亀の討伐
難易度:S
成功報酬:20億DP
可能であれば、隣にあった町を滅ぼした亀を討伐して欲しい。この亀はLvが異常に高く、進化の影響か巨大な為、我が領による討伐は困難であり助力もできない。現在は安息期なのか、滅ぼした町から遠くへは移動していないため静観しているが、動き出したら危険なので早期の討伐が求められている。
こちらの都合上失敗は許されない、十分な実力があると認められた者のみがクエストを受けられるものとする。
地図は別紙参照。
依頼者:シュタン・フォールニール財務官
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「いやいや、なにこれ、なんで受けてきちゃったの?っていうか、なんで受けれたのこれ?」
「我が魔王ユレイラ・F・キャンサーを名乗れば許可が得られるのは当然の理。」
「ちったぁ、歯ごたえがありそうだなッ!」
「勇者だからってOK出さないで欲しいなぁ。超強い亀っていやな予感しかしない…。それにしても、クエストの報酬って妙に高くないか?」
「学校より安いじゃん。」
「小さい学校くらいなら建てれそうな金額をポンとくれてもいいものなのか?」
「亀がこっちに来て壁壊されただけで修理費がもっとかかるんじゃねーの?」
「こういうのは大人数で討伐するのじゃ。いわゆるレイドボスじゃのう。報酬を頭割りすれば微妙な金額になるのじゃ。」
「動いていないらしいし、遠くから鑑定してもらえばいいか。やばかったら依頼をキャンセルしよう。」
「そうだ、あの牛食えるかな?聞いてくるッ」
牛は食べれるが大きすぎてここではさばけないらしい。確かに肉屋じゃないと解体するだけで大仕事だろう。食べなれた味を満喫した俺たちは、また別行動でそれぞれの用事を済ませるのだった。
「うう、流石に多すぎたよぉ…。」
魔王様がパフェの食べ過ぎでダウンしたので俺がおんぶして宿まで連れていくことになった。言うまでもないが超役得だ!
「ま、待って。ちょっと止まって。」
ええ、いくらでも待ちますとも!なんなら宿にたどり着けなくてもいい!!
ああ、このほのかな膨らみのなんと素晴らしいことか!!
「も、もう大丈夫。進んでいい。」
俺は、休み休み進みながら食べ過ぎでダウンした魔王様を連れて宿の手配をした後、町長さんの所に連絡だけはしておき、残った時間はすべて買い物に費やした。我慢できないからもう一度言っておくが最高だった!買い物での戦利品はこんな感じだ。
・投擲用の安物の武器100本
・出来合いの食事や食材多数
・着火用の棒
・どう見てもコンロにしか見えない魔道具
・飲用水 10t
・包丁 詳しくないのでいろいろ
・鍋 大 中 小
・フライパン
・着替え用衣類
・お湯 21.6t
マロニカちゃんが買い物に来ていないと思うので投擲用の武器を買っておいた。食べ物は減ってきたら補充しよう。
文明の利器に見えるようなものでも、機能を魔法陣などで実現し外見を似せただけならOKらしい。調理道具は武器屋にあったからついでに買っておいた。着替えは服がよく破けるからだ。きっと服や装備の防御がステータスでカバーできないのは暇神様の趣味だろう。
お湯は必須。浴槽を用意する時間は無いし、一度作ったやつをインベントリに入れて運んでいるから今のところは大丈夫だ。壊れたら作り直しだが…
「トリアテ様、例のものになります。お納めください。」
「ふむふむ、なるほどのう。これほどスイーツを並べられるとどれから手を出せばよいかわからなくなってしまうではないか!
くっくっく、決めたのじゃ!最初はこれじゃ!基本にして至高のいちごショート!赤くてほのかに酸っぱいいちごの香りがわしを待っているのじゃ…。」
「いちごショートですね、どうぞ。」
「じゃぁ、アタシはモンブランにしよっかなーッ」
「私はプリンで忙しい。一つくらいなら食べてもいい、また買いに来る。」
「我はこのダークマターパフェマウンテンに挑むとしよう。ダークマター、なんという闇の力の溢れしことか。」
「それいくんだ…。」
魔王様は一つだけ異彩を放っていたパフェを選んでしまったようだ。器がどんぶりサイズな時点で既におかしい。チョコをふんだんに使ったパフェに見えるが、マウンテンの名に恥じぬ山盛り具合だ。
当然のように山にはチョコの棒や星やら何かの形をしたチョコが刺さっている。どう見ても一人用ではない。余ったら少しもらおう。
「とりあえず、一品目は選んだみたいだから、ここからここら辺のもトリアテ様に贈りますね。」
デザート、いや、スイーツとの戦いは始まったばかりだった。




