彼女のぬいぐるみ
たまにはソラとデートがしたくて、ビルから降りて街を歩いていた。
せっかくだから、食事でもとなったのだが、ソラは高校生が絶対には入れなさそうな、おしゃれなレストランに突入しそうになって、慌てて止めて、いまはファミレスにいる。
24時間営業だったところも多かったが、最近では日を跨ぐくらいで、閉店となるところも増えてきた。
わたしは夜遅くなる前に帰らないといけないので、特に関係はないのだけれど。
「食べ物は今の方が断然良いよな」
「昔は食べ物があるってだけで、幸せだったもんね。
嗜好品として、お菓子とか売っていないわけじゃなかったけど、数は多くなかったし」
「それなのに、お菓子かき集めて、パーティしたな」
「あれは、準備大変だったよ。バレないようにするのも大変だったけど」
わたしが発案して、わたしが一人で計画して、結局サユとユイには手伝ってもらった、ラケルタ討伐パーティ。最後の大天使を前に、英気を養ってもらいたかったというのと、普段何もできなかったわたしが何かし高ったから、行ったもの。
このパーティの準備に当たって、夜中にお店を使って怒られたのだけれど、それもいい思い出だろう。
「でも、なんかすごいタイミングで、やっちゃたよね」
「とはいえ、あのタイミングだったからこそできたってところあるけどな」
「以降はそれどころじゃなかったもんね」
本当に、ラケルタ討伐してパーティをした以降は怒涛だった。というか、そのあと怒涛の流れの中で、わたしは死んでしまったので、どうなったのかを知っているのはソラしかいないのだけれど。
いまこうして、ソラが世界を作ったのだから、結果は分かっている。
「ソラはユイがぬいぐるみ持っていたの知ってる?」
「あれな。キャラには合ってなかったけど、持っていないと不安だって言ってたな。
毎日違うぬいぐるみを持っていたから、綺麗なぬいぐるみを拾ったら、あげるようにしてたよ」
「えー、ずるい」
「いや、レンにはもっと、いろいろ渡したよな。
ちょっと寄り道してでも、探したこともあるし」
わたしが気を悪くしたと思ったのか、ソラが慌てるのが、ちょっとかわいい。
本当はこれっぽっちも怒っていないし、皆に気を配れるソラだから、わたしは好きになったのだ。
ユイにプレゼントをしたからと言って、マイナスになるわけではない。
「それでユイなんだけどね。いまでも、ぬいぐるみ集めているみたいなんだよね」
「何か不安な事でもあるのか?」
「テスト期間とか、緊張するときに抱くと、落ち着くって言ってたよ。
そういうのを見ると、ユイはユイなんだなって」
とりとめのない話だけれど、友人にかつての面影を見ると、少し嬉しくなる。
守りたかった人たちは、確かにいま生きているんだなって感じられるから。
「それなら、ずっと持っていたらいいのにな。昔みたいに」
「さすがに、女子高生がぬいぐるみをずっと抱えているっていうのは、気が引けるんじゃない?
痛い子だと思われそうだし」
「逆に人気出るんじゃないか? 正確とのギャップはすごいし。むしろ、持っていてくれないと、こっちは落ち着かない」
最後にソラが「ぬいぐるみ抱いていた方が、テストの点数上がるんじゃないか?」と言っていたけれど、ユイに伝えたら、なんと返ってくるだろうか。




