彼女のお弁当
学校の授業で見ると、1日は午前に4コマ、午後に2~3コマあるので、午前の方が長く感じるのだけれど、休日で考えると、午前は朝起きてから昼食を食べるまで、午後はそれから寝るまでだから圧倒的に午後の方が長いと言える。
それがどうしたと言われたら、別にどうにもしないのだけれど、もっとうまい時間の使い方はないのかなとか、考えてはみたくなる。
そんな今日の昼休み、ユイは委員会か何かでどこかに行ってしまったけれど、サユはいつものようにやって来た。
「レンっていつもお弁当だよね」
「サユはたまにパンを買ってるね」
「お母さんが、面倒くさいって時に、お金だけ渡されるんだよね」
この学校には学食なんて気の利いたものはないから、弁当を持ってこなかった人は、購買で弁当かパンを買うことになる。
弁当は人気で、すぐになくなるため、昼休み直前の4コマ目の終了時間次第で買えるかどうか関わってくるらしいのだけれど、パンはのんびり行っても何か残っているという話を聞いたことがある。
サユの俊敏性なら、弁当も買えると思うのだけれど、たまにだからパンが食べたいと言っていたことがあったっけ。
学校のお昼事情はおいておいて、この流れわたしの弁当について話さないといけないのだろうか。
迷ったが、隠す必要もないし話すことにした。
「わたしは自分で作ってきてるから。片親だしね」
「あ、ごめん……」
「今更だし気にしなくていいよ。っていうか、こっちの世界の母親ってピンとこないんだよね。
亡くなったのも、わたしが生まれてすぐってことになっているし」
「旧世界だと、レンのお母さんって誰になるの?」
「んー、天使ってことになるんじゃないかな。お母さんっていうよりも、実験体って印象が強いけど」
こう考えてみると、本当に母親というものに疎い気がする。
おかげで、母親に執着せずに済んでいるのだろうけれど。
サユがジッと、口に加えたパンを見て、何かを訊きたそうな、躊躇っているような様子を見せる。
「たぶん、こっちの世界の母親って、もとより存在していないんだと思うんだよね。
サユやユイの両親は、変わらないかもしれないけど、なぜかわたしの母親って写真も何も無いんだよね。
ずっとお父さんと2人だけだから、今更訊く気にもなれないし」
「レンのお父さんって、確か大学の教授なんだよね?」
「今も昔も研究者だね。今は昔ほど有名ってわけでもないけど」
天使研究の第一人者なんて、今言ったら笑いものにされるだろうし、そもそも本人が覚えていない。
いつの間にか食べてしまっていたのか、パンの袋をくしゃくしゃに丸めて、ごみ箱に投げた。
綺麗に放物線を描いて、袋がゴミ箱に入ったので、拍手をする。
「不謹慎かもしれないけど、やっぱり旧世界の事って面白いね。旧世界と今の繋がりって言うのかな」
「そうやって、興味を持ってくれるだけでうれしいよ」
「これがテストに出たら、満点取れると思うんだけどなー」
そういって、サユは大きく背伸びをした。




