神と天使
サユに遅れて自作のお弁当を食べ終わり、本格的におしゃべりの態勢に入る。
50分と言える長すぎる時間も、おしゃべりが始まれば一瞬で終わるから不思議なものだ。昔なんて、休憩している余裕なかったから。
というか、ソラが危険なところにいるのに、比較的安全なところにいたわたしが、悠々と休憩なんて取れなかった。体が弱かったから、何度か倒れてしまったけれど、その時には探索を終えて後発部隊の手伝いをしていたらしい。
極限状態だったはずなのに、わたしが倒れたことに、誰も文句は言わなかった。というか、わたしが倒れたことを知っていたのが、極一部だけだったらしい。
「ねえ、レン。旧世界の話、聞いていいかな?」
「ユイがいないけど良いのかな?」
「あたしがあとからちゃんと自慢……じゃなかった、説明しておくよ」
サユが得意げな顔をする。なるほど、ユイに対して何か優位に立ちたいのか。
普段の力関係は、ユイの方が上だから、たまにはという事だろう。ユイはサユほど興味を持っていなさそうだし話してしまっても良いか。
「全部話すとなると、時間が足りないんだけど、何を話したらいいかな?」
「じゃあ、とりあえず神と天使かな。敵側の組織図って感じなんだよね。一番上に神がいて、その下に天使が居てって感じで」
「わたしは神は見ていないかわからないんだけど、サユの言う通りだね」
言葉を返しながら、ノートとペンケースを取り出し、一番上に「神」と書く。
神から下に線を4つ伸ばして、欄外に大天使と書き込む。
「一番上に神がいて、その下に4体の大天使がいるって感じかな。4体の大天使は、生まれた時間は違うけど、神が作り出したらしいよ。
襲ってきた順番に大天使を説明すると、最初に来たのがクアルトゥム『アウィス』」
「クアルトゥムが名前? それともアウィス?」
「アウィスが個体名だね。クアルトゥムは、四番目って意味だよ。
テルティウムが三番目、セクトゥムが二番目、プリームムが一番目。別に番号も名前も、どうでもいいとは思うんだけど、便宜上ね」
「最初に来たのに、四番目ってことは、四番目に生まれたってこと?」
「それであってるよ」
やっぱり、好きなことをしているサユは、妙に勘が鋭い。
これくらいだと、たぶん気が付ける人は気が付けるのだろうけど、普段のサユなら無理だろう。
「アウィスは今で言うと、大きな鳥みたいな感じかな。
大天使は、さらに天使を作り出していた……と思うんだけど、アウィスは鳥や獣型の天使を使っていたね。
テルティウムが『セクトゥム』で、前にちょっと話したよね」
「虫みたいって言って奴だよね」
「セクトゥム自体は、甲虫をさらに凶悪にしたような見た目をしていたね。
硬い甲羅は並みの攻撃を寄せ付けなくて、だいぶ苦戦させられたんだよ」
「鳥より虫の方が強いんだね」
「同じ大きさだったら、虫の方が強いんじゃないかな」
虫と鳥ではなくて、天使だってところが大きいと思うんだけど。
それにしても、今の天使のイメージとは大きくかけ離れていると思う。
「セクトゥムの『ラケルタ』トカゲ……というか、ドラゴンだったね」
「ドラゴンって、ゲームとか漫画とかで度々見かけるあの?」
「創作物全般で見かけるとは思うけど、そのドラゴンであっていると思うよ。
使ってくる天使は、下級になるほど爬虫類って感じだったけど、上級になるとドラゴンっぽくなってたよ。ここまでくると、上級天使レベルでも、ソラとイムラ以外は危険だったね。上級天使と大天使の差はそれこそ、天と地との差はあるから、大天使を倒してきた二人が苦戦することはなったけど」
「それで、プリームムの大天使は?」
当然尋ねられるとは思ったけれど、プリームムに関しては、話し出すと時間が多分足りなくなる。
というか、今の段階で、すでに予冷がなりかねない。
「それはまた今度ね。時間がないから」
「じゃあ、その前に最後に1つ。人類滅亡の予言とか調べていて思ったんだけど、なんで神は世界を滅ぼそうとしたの?」
「前はそういったけど、本当は世界を滅ぼそうとしたんじゃなくて、神の交代の時期だったんだよ」
「神の交代?」
「神の寿命が近づいてきて、4体の大天使の中から次の神が選ばれるんだけど、その争いに巻き込まれたって言うのが正しいかな。神が入れ替わると、世界がリセットされるから、わたし達の運命が絶望だったってことには変わりないんだけどね」
「でも、何とかなって、今があるってことだよね」
「わたしもそうみたいだね、としか言えないけどね。最後までいいられなかったから」
ここで予冷が鳴ったので、サユが名残惜しそうに、自分の席に戻っていった。




