2 警察が来たぞ!
「ちょっとお話をお聞きしたいのですが」
家に警察官が訪ねてきた
私服なので刑事だろう
でも断った
「いえ、お断りします」
返事を聞いた刑事はびっくりした顔をしてた
まさか断る人間がいるなんて、と顔に書いてあった
そうしたら
「・・・警察にちょっとだけ協力するのは市民の義務ではなのですか?」
となにやら人の自尊心に訴えるようなことを言い出した
断わったら人として最低だという雰囲気を出すなんて最低だ
警官というのは法律に外れないという枠組みで言葉巧みに自分たちの思い通りにする生き物なのだ
本当に最低である(大事なことなので二回言った)
「話を聞きたいならお札とやらを持ってきてください」
お札という警察官の隠語とやらを使って言い返してみた
実にいい気分である
自分の知っている知識を使って相手を言い負かすのは最高の娯楽と言っていいだろう
話を聞きたいのなら裁判所でその正当性を証明した書類を作ってもらって持ってくるのが法律にそった行動である
だから私は悪くない
ドヤ顔してやった
刑事は苦虫を嚙み潰したような顔をしていた
そりゃそうだろう
こちらの悪意がビンビンに伝わっているだ
これで気が付かなければ鈍感野郎である
「動画で被害者がいじめの加害者だと言っていたことについて伺いたいだけなのですが・・・」
刑事が速攻魔法を使ってきた
とにかく用件を無理やり押し通すようだ
まあそりゃそうだ
炎に包まれた被害者は、ある日突然いじめの加害者になったのだ
そして、世間からの集中砲火を浴びた
いままで警察は被害者扱いしていた
だから警察の面目丸つぶれになった
当然マスコミからも
「警察の対応は・・・」
などとワイドショーで取り上げた
叩ける人間がいれば叩く
それがマスコミ
報道の正当性などというのは絵空事
数字がとれればそれが正義なのであるから当然のことであった
でもそこで終わらないのが警察、いや人間という種の特性といってもよいのかもしれない
原因の調査を始めた
要は『罪の擦り付け先探し』である
もちろん某動画サイトに投稿されたいじめの再現動画が原因であるので当然のことながら動画投稿者に話を聞きにきた
つまり私のところに聞き込みが来たというわけだ
それが冒頭である
中学生が複数でクラスメイトをいじめているという動画はもう悲惨な内容だった
「やめて!」
と被害者の中学生が叫んでもやめなかった
それどころか嗤っていた
人間の本質を問う、実に心温まる動画であった
最近のAIは優秀で、動画作成や編集の知識がなくても、説明文を書くだけで動画が作成できる
必要なのは指示をする人間の悪意の質だけ
質が高ければ高いほど人の心に訴える良い動画が作成できる
それを投稿した
皆が喜んだ
素晴らしい動画と称賛された
なにせ可哀そうだと言っていた被害者が、卑劣な加害者に一転するほどなのだ
被害者、もとい、加害者は、家や会社や実家が特定され、ネット上で晒され、家には生卵がぶつけられるという素晴らしい結果が得られた
作った本人としては大満足である
なにせ皆がここまで喜んでくれたのだ
クリエイター冥利に尽きると言ってよい
まあそんなことに水を差したがるのが警察である
さっそく突撃してきた
なぜ中学生時代の古いいじめを知っていたのか
だとか
第三のキラについて知っていることがないか
と聞きに来た
ここで説明すると被害者に火をつけた放火犯は
第三のキラ
と呼ばれている
某マンガの登場人物になぞられた命名である
ネット上で誰からともなく言い出したニックネームであるが、誰もが納得した
そして使った
たしか大人数が出る続編があるだとか、かなり時間が経過した自滅した後継者がいたとかのツッコミはいらない
そんなことを言い出したら番号を決めるだけで大変なことになるのだ
それが暗黙の了解
なにせ
「おお、神よ!」
とか言っていた者までカウントするのかという不毛な議論が繰り広げられるのだ
だれもそんなことはしたくないのである
この場合正史の主人公とヒロインだけにしておくのが正解である
それが皆の認識だった
というわけで
警察からしたら放火犯
マスコミや世間からは第三のキラ
と呼ばれるようになった
・・・もちろん私の動画投稿後である
世間を動かすほどの働きができて大満足である
承認欲求をみたされたので大満足である、と言い換えてもよいかもしれない
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以上、警察が来てからわずか数分のことでした
まだまだ続きます
多分




