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ハルさんちのねこ。  作者: 百瀬百田
Ⅲ 時は来た。おたく案内と行こうか。
13/16

2 もうどっちでもいいや!



 さてさて。

 今度はみあと一緒に廊下に出て、さっき歩いた階段横の廊下を戻る。少しだけ歩くと、廊下の先にあるスライド式の扉の前に辿りつく。その扉を開けようと取っ手に手をかけた時、右側を見ているみあに気が付いた。


「こっちが保志場さんの部屋ですよね」

「あたり。自室に籠るのは寝るときくらいかな」

「リビングにいることが多いんですか?」

「下にいることが多いね。2階には用があるときくらいしかいないな…この扉の先も含めて」

「この扉の?」

「入ってごらん」


 扉をスライドさせると、まず最初に飛び込んでくるのは正面にある新たな扉だ。入口から視線を右に向けると、ワイドミラーを中心に配した三面鏡タイプの洗面化粧台が目に入る。ちなみに鏡の裏側には収納棚があり、下部にはソフトクローズ仕様の引き出しが付いていた。

 それから視線を左に向けて目に入る棚は、今はリネン庫として使っている。


 そう、ここは言わずとも知れたパウダールームだ。


「奥がお風呂ですか」

「そうだよ」


 浴室暖房乾燥機付きの風呂場は、冬でも温かで滑りにくい設計だ。おまけに上水を常温のまま噴霧する水ミスト機能も付いている。

 低温・高湿度のミストサウナは息苦しくなくリラックスして楽しめる優れモノだ。更にマンションの設備説明によると、肌の保温・発汗・血行促進などの効果も期待できるらしい。


 だが1番のポイントは、オートバスシステムだ。これによって風呂を溜めながらうっかりゲームに没頭してしまっても、溢れずに済むのだ。実に有用な機能だと拍手を送りたい。


「お風呂場も広いです」

「ここも勿論自由に使ってね」

「はい。ありがとうございます」


 女の子にとって、風呂場は家の中でも特に大事な場所だろう。…たぶん。女の子と同じ浴槽を使うことにハアハアしたりするほど残念ながら俺は若くはないが(いやハアハアする方がどう考えたって残念だが)花の乙女であるみあはどうだろう。

 「保志場さんの後には入りたくありません!」とか言われてしまうんだろうか。あ、今思春期の娘を持つ父親の気持ちが少しだけ分かった気がする…。


「ぼーっとしてどうされたんですか?」

「えっ?あ、いや何でもない。さ、次へ行こう」


 みあの声で脳内の妄想から現実へ戻された瞬間、つい声が裏返ってしまった。くっ。

 浴室を後にし、今度は階段隣りのトイレへ移動する。1階のトイレと同じ設計で、2階のトイレにも天板に天然石を採用した手洗いカウンターが設けてあった。余談ではあるが、トイレには水を流すとまんべんなくぐるっと根こそぎ洗い流してくれるトルネード洗浄が採用されている。

 

 その後トイレ前のもう一つの空き部屋を案内して、俺達は1階へ降りた。


 2階へ上がった時と比べ、みあは幾分楽しそうな様子だった。玄関先で話した時はその礼儀正しさのおかげで年の割にしっかりした印象を受けたが、こうして接していると徐々に年齢相応の子どもっぽい面も垣間見えてきた。


 本人にこれを言ったらまた怒られそうだ。


「階段の横の…このドアの先には何があるんですか?」

「さぁて。何でしょう」

「んー…トイレですか?」

「ハズレ。正解は」


 扉をスライドさせると、中からはまさかの洗濯機の登場である。洗濯機横の扉の向こうは、階段下収納になっていた。オタクの収納スペースほど大切な場所はない。あ、お宅ね。いやオタクにとっても収納スペースは大事だけれども!あれ?


「と言うわけで正解は家事室でした」

「家事室って初めて聞きました!」

「ここに洗濯機があるのは実は使いにくいけどね」

「んーと、干すのが上のベランダだからですか…?」

「そう言うこと」


 普段あまり洗濯物の量が多くないからいいものの、これで大量の洗濯物を持って2階に上がるとなると、想像しただけで口角が引き攣ってしまう。非力なわけではないが、基本的に肉体労働を億劫に思ってしまうオタクだからな、俺。


 家事室から出てリビング・ダイニングに続く廊下を歩いていく。家事室側から見て左側にダイニング、右側にリビングが位置していた。ダイニングと繋がってカウンターキッチンもある。

 キッチンの場所は廊下を挟んで家事室の真向かいにあたるのだが、生憎キッチンに入るには必ずダイニングを経由しなくてはならなかった。そのダイニングからは14階のバルコニーに出ることが可能となっている。


「キッチンも広いです。というか、お家全部広いです…」

「両親の趣味とだけ言っておこう。みあちゃんは料理する?」

「母が忙しい時は作ったりすることもありますけど…」

「腕前は?」

「普通だと思います…家事は好きですけど体力がないので…」


 確かに、小さな細い体で重たい洗濯物を抱えたりフライパンを振ったりしているみあは、何と言うべきかちょっと違和感があるような気がした。というよりも、子どもがお手伝いをしているような感覚と言うべきか…?


 ひっそりと呟くみあの耳を見ると、想像通り朱色に染まっている。本当に分かり易い反応だ。声をかけようとすると、それより先にみあの口が動いた。


「でも!家事させて下さい!一生懸命、頑張ります…!」

「ありがとう。それじゃあ一緒にやろう。無理はしなくていいから、ね?」

「はい…!」


 キッチン及びダイニングを通り過ぎた俺達は、少し前までみあが横になっていたソファーがあるリビングに戻ってきた。そのリビングを出た廊下の先が玄関だが、玄関の手前、リビング側から見た左側の扉を開けると1階のトイレがある。

 来客用も兼ねているので、2階のトイレに比べると手洗いカウンターが2つあるなどかなり広めに作られていた。


 リビングと玄関わきのトイレは最初に簡単に説明していたので、これでオタク案内は全て終了だ。…ああもう、オタクでもお宅でもいいや!







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